米Amazonが、以前購入した本の電子版を無料もしくは安価に提供する「Kindle MatchBook」というサービスを開始します。一足先に、CDを購入したらMP3も無料入手できる「AutoRip」というサービスをやっていましたが、それが本にも展開されたということになります。
日本への展開はいまのところ未定です。が、もし日本でもこのサービスが始まったとしたら、どのようなことが起こるでしょうか? 想像してみました。
ライバル電子書店は戦々恐々
TechCrunch Japanの記事によると、このサービスの対象となるのは「Amazonが書籍販売を開始した1995年から、これまでに購入した本」ですが、すべての本が対象ではなく、プログラムに参加するかどうかは出版社の判断次第とのことです。
Amazonで紙の本は購入しても、電子版は利用してこなかったユーザーは、日本の場合まだかなり多いと思われます。そういったユーザーが、これをきっかけとしてKindleストアを利用することになる可能性があります。
電子の本は、「どの書店で買ったか?」によってその後の体験が大きく異なります。電子書店は、購入後の読書環境や、保管に至るまでの総合的な「サービス」を提供しているからです。
Kindleストアを利用し始めたら、ずっとKindleストアを利用し続ける可能性が高くなります。Kindleストアに囲い込まれてしまうわけです。
紙の本も「どこで買っても同じ」ではなくなる
紙の本は、購入さえしてしまえば「どの書店で買ったか?」が大きな違いになることはありませんでした。もちろん書店によって購入特典などが付く場合もありますが、原則としてリアル書店だろうと通販だろうと、どこで買っても同じ本でした。
ところが今後は、Amazonで買えば電子版も無料もしくは安価に手に入れられるという、強力な付加価値が付くことになります。「どこで買っても同じ」ではなくなり、積極的にAmazonで買う動機付けができます。
でも出版社にとっては、プラスアルファの売上が見込めるかも
買った本を手放したり紛失していたとしても、購入履歴さえ残っていれば電子版が無料もしくは安価に手に入るとしたら、「もう1回読んでみようかな」という気になるかもしれません。
また、これまでは紙の本さえ手に入れば(逆に、電子の本さえ手に入れば)満足していたユーザーが、それほど高くないならセットで買ってしまおうという心理になる可能性があります。
仮に紙の本が1000円で、紙+電子のセットが1200円だとしたら、1200円払う人は結構いるのではないでしょうか。つまり、プラスアルファの売上が見込めるわけです。
これってAmazon以外でも可能なのでは?
恐らく、電子版に積極的な出版社にとっては、プラスアルファの売上が見込めるいい話だと思います。ただ、リアル書店も電子書店も、このままだと顧客をごっそり持っていかれる悪夢が待っているでしょう。
しかし、いずれAmazonがやってくるなら、ライバル社は先手を打つべきなのではないかと思うのです。紙の本の通販と電子書店を両方やっているところ、リアル書店と提携している電子書店は、同じことができるはずです。
- honto(旧ビーケーワン、丸善、ジュンク堂、文教堂)
- BookLive!(三省堂)
- 紀伊國屋書店ウェブストア
- 楽天kobo(楽天ブックス)
- セブンネットショッピング
- ローソンエルパカBOOKS
この辺りは紙と電子を併売してますから、出版社の同意さえ得られれば先手を打てると思うんですけどね。というか、先手を打たないと、あとはヤラれるのを待つだけになるってしまうような。
[追記]
もう1つ忘れてた。これが実現すると、いわゆる「自炊」や「自炊代行業」が不要になるという強烈な影響がありますね。