漫画家の森川ジョージさんによる呼びかけで始まったTwitterのハッシュタグ #くまモン頑張れ絵 の盛り上がりによって知ったのですが、熊本県くまモンの個人利用は事前許諾されていたのですね。経緯についてまとめておきます。
私がこのことを知ったのは、こちらの記事。
ツイッター「#くまモン頑張れ絵」続々…熊本県「著作権の許可範囲内。ありがたい」 – 弁護士ドットコム
くまモンのイラスト利用については、くまモンのオフィシャルHPに記載がある。これによると、「個人のSNSやHP、ブログなどの記事としてくまモンのイラスト(又は写真)を掲載する場合」には許可がいらないそうだ。
私は『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』で、権利者が事前に利用許諾しているケースについて書いています。「第4章 無断で利用できる著作物を教えて!」です。
例えば「初音ミク」「東方Project」「艦隊これくしょん」「KEY」「TYPE-MOON」「ニトロプラス」「AQUAPLUS」などの事例があるのは知っていたのですが、恥ずかしながら「くまモン」の事前利用許諾については知らなかったのです。
どこに記載があるのだろう? と思って「くまモンオフィシャルサイト」を調べてみたところ、「くまモン利用申請」の「利用申請に関するよくある質問」に載っていました。普通に辿っていくと、ちょっとわかりづらい。
Q. 個人が利用する場合でも、利用申請が必要となるか。
A. 以下に例示するような場合は必要ありません。
(1)個人のツイッターやフェイスブック、LINE等のSNSのトップ画面に、くまモンのイラスト(又は写真)を利用する場合
(2)個人のSNSやHP、ブログなどの記事としてくまモンのイラスト(又は写真)を掲載する場合
(3)ランニング仲間数人が揃いの(既成の)くまモンTシャツを着て練習や試合に出ること
(4)営利目的ではないが、自分で作ったくまモンのマスコットを、制作経費だけもらって身内にプレゼントする場合
(5)個人で楽しむ事を目的に自分で作ったくまモンのマスコット等を、自分のブログなどに掲載する場合
このうち(3)(4)は、著作権法30条の私的使用の範疇でしょう。しかし、(1)(2)(5)はネットで公開する時点で公衆送信権が関わってくるため、明らかに著作権者の許諾が必要なケース。これが、個人の利用に限っては利用申請が必要ない、という形になっているのです。ただし、この事前利用許諾に続けて、このようなことが書いてあります。
個人利用の場合でも、著作権の表記は行ってください。
日本語表記 ©2010熊本県くまモン
外国語表記 ©2010 kumamoto pref. kumamon
ところがTwitterのハッシュタグ #くまモン頑張れ絵 を見ると、上記の著作権表記がないイラストも多いです。これについて前述の弁護士ドットコムでは、熊本県ブランド推進課に問い合わせ以下のような回答をもらっています。
原則として『(C)2010熊本県くまモン』という著作権の表記を求めていますが、今回に関しては表記がないからと言って、とやかくいうことはありません。
弁護士ドットコム、グッジョブ!
ちなみに今回の発端は、ちばてつやさんがブログにアップしたくまモンに刺激された森川ジョージさんが、このような呼びかけをしたことです。
何をしていいなわからない時にコレだ!と思った。漫画家の人、そうでない人、くまモン描いて励まそうよ。
ちばてつや「クマモンが・・・」
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2016年4月16日
くまモン描こう!と呼び掛けてしまったが著作権とかどうなっているんだ?でももうやってしまった。後で怒られよう。とにかく被災地の皆様、救助の皆様、頑張って下さい。
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2016年4月16日
ちょw
私も描いてみた。
末筆ではありますが、改めて。熊本・大分地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。