「BuzzFeedが健康本問題に切り込む」「こち亀コラージュ騒動」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #289(2017年9月11日~17日)

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 先週は「BuzzFeedが健康本問題に切り込む」「こち亀コラージュ騒動」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年9月11日~17日分です。

アマゾン、「海猿」作者と争う姿勢 読み放題で訴訟 朝日新聞デジタル(2017年9月11日)

 アマゾンの読み放題サービス「Kindle Unlimited」から強制削除されてしまった件に関する損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論。勘違いしている人が散見されますが、この訴訟と『ブラックジャックによろちんこ』の件は別です。しかし、こういう戦いは業界大手が率先して挑むべきではないかと思うのですが。

児童書が上位、出版界に異変 残念な動物に大人もクスッ 朝日新聞デジタル(2017年9月12日)

 児童書市場は2014年以降、前年比増。親は子供に惜しみなくお金を使うといったことが書いてありますが、人口ピラミッドで2段目のピークである団塊ジュニア世代がいま40代前半。残念ながらこの傾向は、あと数年で萎んでいくのではないでしょうか。

フライヤー×未来屋書店 店頭で本の要約記事が読めるコーナースタート 文化通信(2017年9月12日)

 メディアドゥグループ子会社のフライヤーが、イオングループの未来屋書店と提携。48店舗でフライヤーが提供する要約記事が読めるビジネス書コーナーを開始したそうです。なるほどそう来たか、という感じ。どういう展示をしているんだろう? コミック試し読み用小冊子みたいなのを想像。

[追記:9月1日に持株会社体制へ移行したので、子会社というならメディアドゥホールディングス、もしくはメディアドゥグループという表記が正確でした。お詫びして訂正します。]

命に関わる損をさせても「表現の自由」なのか 健康本を巡る出版関係者の思い BuzzFeed(2017年9月12日)

 「Welq」問題を追及していた「BuzzFeed」朽木誠一郎氏が、こんどは健康本をターゲットに。「BuzzFeed Japan Medical」という健康・医療情報専門コーナーも立ち上がっています。「そんなの9割ウソだから」というライターの証言が重い。でもこういう本の三八広告が、新聞にはバンバン入ってるんですよね。げんなりします。なお、アメリカだとこういう本は集団訴訟で懲罰的賠償金を課されるため、出版が抑止されているようです。

電子書籍は今やコミック市場の30%超 講談社とpixivが新アプリ発表の場で語ったこと KAI-YOU.net(2017年9月12日)

 pixiv 10周年記念イベントレポート。前半は現在のデジタルコミック市場と「pixivコミック」についての概況。後半で発表された、講談社と pixiv の提携による新たなコミック配信アプリについては、詳細は不明ですが「課金する/電子書籍を買う」と「モノとしてほしい」のあいだを繋ぐ新たな商流を作りたい、ということのようです。

「iOS 11」の製品版、9月19日(米国時間)から配信 ITmedia Mobile(2017年9月13日)

 新商品「iPhone 8/8 Plus」と「iPhone X」より、広範な影響がある「iOS」のメジャーアップデート。今回は32 bit アプリの動作に対応しなくなるため、アップデートされていない古いアプリが動作しなくなるという問題が発生します。むむむ。

日本版Kickstarter正式ローンチ――「北斗の拳」全巻がまるごと楽しめる電子書籍も登場 TechCrunch Japan(2017年9月13日)

 クラウドファンディングの「Kickstarter」日本版が正式にサービス開始。取り上げられている「全巻一冊 北斗の拳」は、ゴール300万円に対し本稿執筆時点で既に1600万円の資金を集めています。「ΣBook」と「honto pocket」を彷彿とさせますが、果たして……?

文豪たちの文体を真似て「カップ焼きそばの作り方」、著作権の問題はないの? 弁護士ドットコム(2017年9月14日)

 桑野雄一郎弁護士による解説。「文体」そのものは具体的「表現」ではないので、無許諾でも著作権侵害にはならない、という基礎的な話。後半で「画風」(絵柄)についても触れられていますが、どうせなら同じ本の表紙イラストを飾っている「もし手塚治虫が太宰治を描いたら…を田中圭一が描いたら」を例示すればいいのに、と思いました。

「こち亀」を無断改変、ツイッターに投稿 水戸芸術館 朝日新聞デジタル(2017年9月14日)

 Twitterで自然発生的に行われていた「#全部同じじゃないですかクソコラグランプリ」に水戸芸術館公式アカウントが参加してしまい、著作権侵害を指摘され削除したという事件。当初は “同館から経緯の説明や謝罪を受けた出版元の集英社(東京)は「著作権の侵害に当たる行為だが、今回は法的な対応や損害賠償の請求は考えていない」と、同館に説明したという” という記述があった(InternetArchive)のですが、本稿執筆時点では集英社の回答が “著作者の権利を守るために、その都度、適切な対応は行っておりますが、個別の案件についてはお答えいたしかねます” という記述に変わっています。集英社の広報から指摘が入ったのだと思いますが、まさか新聞社が[追記]などの表記もなく、黙って書き換えるなんて! ちょっとびっくりです

 さて、法律論だけで言えばこれは間違いなく複製権と公衆送信権と同一性保持権の侵害ですが、集英社の回答を見るに親告罪であることを利用した事実上の黙認と言っていいでしょう。秋本治さんが同一性保持権を行使しないなら、あとは侵害行為により金銭的損害を被っているかどうか。1巻まとめてデッドコピーみたいな海賊行為ならともかく、1ページ程度の零細的利用であれば認知が高まる効果のほうが高いという判断なのでしょう。

 また、個人がやっていることはとくに咎められないのに、企業や団体の公式アカウントという立場になると周囲が許さない、という風潮も興味深い。同じ行為でも「誰が」やったかによって周囲の判断が変わるわけです。この事象を記事にして広告収益を稼いでいる「ねとらぼ」は問題ないのか? という気もするのですが。ライセンス表記はないので、集英社に許可とってるとも思えず。

[追記:http://www.asahi.com/articles/ASK9G3RP8K9GUJHB004.htmlには訂正が出ていませんが、http://www.asahi.com/articles/DA3S13133530.htmlには訂正が出ていました。また、別記事でhttp://www.asahi.com/articles/ASK9J0DTQK9HUEHF00P.htmlにも訂正が出ています。訂正が出ていない記事があるのは紛らわしいですが、黙って書き換えたというわけでもないので、この記述は取り下げます。]

トーハン/書店店頭にWEBマンガアプリ棚を新設 流通ニュース(2017年9月15日)

 「comico」「GANMA!」「LINEマンガ」「pixivコミック」と連動した常設棚を設置。「LINEマンガ」とは以前から無料連載との連動フェアや「LINE Beacon」による来店促進などが行われてきましたが、他のアプリにも拡大したんですね。

失われていくデジタル作品をどうアーカイブすべきか? 「メディアが消える時代」のマンガ・アニメ・ゲームを守るには ねとらぼ(2017年9月16日)

 デジタルコンテンツのアーカイブが喫緊の課題であることは間違いありません。ただ、フィーチャーフォン向けの「ケータイコミック」はまだ絶滅などしていません。「コミックシーモア」「めちゃコミック」「honto」などで普通に売られています。閲覧端末がスマートフォンへシフトしただけなんですよね。

【イベント告知】第1回 デジタル読書ってこんなに楽しい! ライトニングトーク大会

 私が理事長をやっているNPO法人日本独立作家同盟の主催イベントです。デジタル読書ってたのしー! みんなにこの楽しさを伝えたい。そんな思いを5分間にぎゅっと圧縮してお届け。ライトニングトークの登壇参加者、聴講参加者、大募集! 9月30日(土)14時から。


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