僕らが「まだクソ高い!」と感じる電子書籍、その価格設定の裏側とは【コラム】 | TABROID(タブロイド)
こんなコラムがあったので、実際のところどうなのかを調べてみました。対象は以下の3ストアです。
とりあえず、講談社、集英社、小学館、角川系列は書籍とマンガを両方、それ以外の中堅出版社はどちらか一方だけを、売れ筋から適当にピックアップして調べてあります。調査は2013年8月6日の午前8時~11時くらいです。
※モバイルだとGoogleドライブの埋め込みがうまく機能しないようです。
この3店舗の表示価格で平均すると、だいたい2割引きくらいにはなっているようです。上記のコラムが主張している「価格が従来とそれほど変わってないじゃん!」というのは、確かに一部の書籍には当てはまりますが、わりと安くなっているものも多いということがわかると思います。
さて、この「表示価格」にはいくつか重要な点があります。
1. Kindleストアと楽天koboは消費税相当額安くなっている場合がある
これはBookLive!と、Kindleストアおよび楽天koboの価格を比べるとわかると思いますが、例えば河出文庫の「池上彰の選挙と政治がゼロからわかる本」は、紙の本とBookLive!では525円で販売されていますが、Kindleストアと楽天koboでは500円で販売されています。実はAmazonは、以下のようにヘルプに明記されています。
Amazon.co.jpが販売するKindle(電子書籍)、MP3、ダウンロード版PCソフト商品およびAmazon.co.jpが提供するアプリには、消費税は課税されません。出版社が販売するKindle (電子書籍)には、消費税が課税されます。
これは、Amazon.co.jpで販売されている上記のコンテンツは、シアトルのAmazon.com Int’l Sales, Inc.が販売していることになっているからです。koboも、本社はカナダです。
これは、以前調べてエントリーにしたことがあるのですが、現状では消費税法施行令第6条第1項第6号で「著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地」と定められているので、海外の事業者が日本向けにデータ配信サービスを行った場合、日本の消費税はかからないことになっています。
いまは消費税5%だからまだ差が小さいですが、今後消費税率がアップされると、結構大きな差になってくることでしょう。
[追記:2015年10月1日より、越境電子取引にも消費税がかかるようになり、Kindleストア・楽天Koboともに消費税分が価格に転嫁されるようになりました]
2. Kindleストアでは一部に「出版社により設定された価格です」という表示がある
さて、上でも引用したAmazonのヘルプには、こんな一文があります。
出版社が販売するKindle (電子書籍)には、消費税が課税されます。
調査対象では、講談社、集英社、小学館、光文社、白泉社、文藝春秋に「出版社により設定された価格です」という表示がありますが、これが「出版社が販売するKindle (電子書籍)」です。
これは、Appleが米司法省から反トラスト法(独占禁止法)違反で吊るしあげられているときに話題になった、いわゆるエージェンシーモデルというやつです。出版社側が販売価格の主導権を握っているわけですね。
ちなみにときどき誤解されていますが、米でもエージェンシーモデルはべつに違法ではなく、Appleは「出版社と共謀して価格を釣り上げた」という罪に問われているのです。
これに対し、ホールセールモデルは小売店側が販売価格の主導権を握っている形です。Kindleストアの場合、「販売:Amazon Services International, Inc.」と表示されている場合は、ホールセールモデルです。
今回の調査では、どちらかといえばエージェンシーモデルの方が割引率が低め(つまり販売価格が高め)という傾向になっています。
冒頭に挙げた記事ではKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)の契約形態に基づいてついて「だから安くならないんだ!」という説明をしていますが、エージェンシーモデルとホールセールモデルに代表されるように、出版社が取り交わしている契約はKDPとは全く別モノなので、例えば「配信コストがかかる」といった話は無いと聞いています。
3. セールをやっている場合がある
紙の本には再販価格維持制度があるので、新刊書店で値引き販売されることはありません。しかし、電子書籍は再販価格維持制度の対象商品ではないので、値引き販売が可能なのです。上記の「バカとテストと召喚獣」は、調査時点では通常価格の半額になっています。
つまり、スーパーで生鮮食品がタイムセールをやっているように、期間限定で値下げをしている場合があるのです。第1巻だけ無料で配信されているような場合もあります。冒頭に「調査は2013年8月6日の午前8時~11時くらい」と書いたのはこれが理由です。調査時点によって、表示値段が変わる可能性があるのです。
多くの場合、トップページの目立つ位置にセールのバナーが貼られていたり、メールやSNSの公式アカウントでお知らせが配信されています。Kindleストアでは1日1点、日替わりセールなんてのもやっています。koboでは、期間限定のクーポンコードが発行されていたりします。
4. ポイント還元をしている場合がある
調査時点では、BookLive!の「山形新幹線「つばさ」殺人事件」や「進撃の巨人(1) (講談社)」には、「50pt バック」という表示がありました。家電量販店などでよくある、ポイント還元率を高くする優遇措置です。
上記の「進撃の巨人(1)」でいえば、表示価格は420円で他のストアと同じですが、ポイントを考慮すると実勢価格370円になるので、実際は紙の本の82.2%で販売されているということになります。
ポイントによる還元は他のストアでもやっているので、要チェックです。期間限定の場合もあれば、常時1%還元という場合もあります。
5. ポイント購入やギフト券購入でボーナスや割引がある
今回の調査対象ではBookLive!がポイント購入に対応(※ほかにはGALAPAGOS STOREもやっている)しており、最大で20%ポイントボーナスが付きます。つまり、1万円で1万2000円分の買い物ができるということです。すなわち、これだけで常時16.67%割引されているのと同じということになります。これはかなりお得です。
ほかにも例えば、Amazonギフト券が金券ショップで少し安く売られていたり、iTunesカード(iBookstoreで使える)が安く売られている場合もありますね。また、楽天koboは、楽天スーパーポイントでの購入ができるというのが結構大きいと思います。
[追記:上記で事例として挙げているBookLive!は、2014年12月1日からTポイントと提携し、ポイント購入は終了しました。ただ、他にも事例はいろいろあって、例えばau「ブックパス」やNTTソルマーレ「コミックシーモア」などがポイント購入&ボーナスが付くようになっています]
6. アフィリエイト・プログラムの「自己買いOK」を利用できる
今回の調査対象では、BookLive!が自己買い可(リンクシェア)になっています。売上報酬10%なので、常時1割引きで買えるということになります。自己買いは、ほかにはhonto、eBookJapan、紀伊國屋書店ウェブストア、iBookstoreなどが対応しています。
なお、Amazon Kindleストアや楽天koboやBOOK☆WALKERは、自己買い不可なので注意しましょう。[追記:紀伊國屋書店ウェブストアも、電子書籍は対象外でした……ごめんなさい]
まとめ
- 表示価格の時点で既に平均2割安い。
- ポイント購入やアフィリエイト自己買い・ギフト券の割引販売などを使えば常に2~3割り引きで買える。
- セールの時に買えば、さらに安く買える。無料で配信される場合もある。
少なくとも、冒頭に挙げた記事が主張している「価格が従来とそれほど変わってないじゃん!」というのは、悪質なデマだと断言していいでしょう。ちょっと変じゃないかな?とボクは思います。[追記:どうも「悪質なデマ」という言い回しに不愉快さを覚えた方がいらっしゃるようなので、削除して訂正いたします]