Google+のストリームを眺めていたら、こんなニュースが。
「核融合研、イオン8000万度Cの高温プラズマ生成に成功」
正確に言えば、このニュースを取り上げたアルファルファモザイクの2ちゃんねるまとめ記事を貼ったポストが流れてきたんだけど、タイトルが酷い。
【速報】 人工太陽完成!史上初!ついに日本が 「一瞬ではなく、発電を維持できる」 核融合発電を完成
(※リンクは貼らないので興味がある人はアドレスバーにコピペしてください)
日刊工業新聞の元記事を見れば判るように、核融合発電は完成していない。要するに、2ちゃんねるまとめサイトにありがちなタイトル釣り記事なんですが、こういう科学系の記事って内容が難しいから釣られちゃう人がわりと多いんですよね。2ちゃんねるの反応でも「核反応で放射線が出るのは不完全燃焼」とか「一瞬で一億度の温度で発電するシステム」とか、全然理解できていないのに訳知り顔でコメントしている人が何人もいて苦笑い。
それでもGoogle+の場合、コメントでツッコミを入れられ誤解が解けるプロセスが誰の目にも見えるので、Twitter よりはまだ安心して見ていられる。
しかし、核融合研が目指している「核融合発電に必要な1億度」が実現できても、燃料と中性子がネックで実用化が難しいんですよね。
この辺りの話をGoogle+でポストしたら意外と反響があったので、加筆修正してエントリーにしました。
核融合研のこのページを見ると判りやすいのですが、人類が近い将来実現できそうな核融合というのは三種類あります。
(※ページが消えてしまったのでリンクを削除しておきます)
今いちばん実現できそうなのはD-T反応(重水素+三重水素)で、1立方cm辺り100兆個のプラズマを1億度以上という条件。反応でできるのがヘリウム4と中性子。燃料の三重水素が自然界には殆ど存在しないのと、反応でできる中性子がネック。
重水素は海水から取り出せるので、D-D反応(重水素+重水素)の場合燃料の心配は無い。ただし、自己点火条件がD-T反応の10倍厳しい。反応でできるのはヘリウム3と三重水素と中性子・陽子。やっぱり中性子が出ちゃうのがネック。
中性子線は透過性が高く、生物にも放射線障害を起こしやすい。また、照射された物質を放射化してしまう。ようするに放射性物質をどんどん作ってしまう。これはまずい。
そしてこれらの核融合から電力を取り出すには、お湯を沸かしてタービンを回さなきゃいけないってのが非常にダサい。
究極の核融合発電はD-3He反応。重水素とヘリウム3の反応で、ヘリウム4と陽子ができる。 陽子を電磁力で制御し減速させると、直接電力が取り出せる。中性子も出ないから、放射化問題も起きず非常にクリーン。
D-3He反応のネックは、自己点火条件がD-D反応の更に5倍くらい厳しいことと、ヘリウム3が地球上には殆ど存在しないこと。ただし、天然のヘリウム3は太陽風に含まれているので、なんと月面の砂に大量に蓄積されていることが判っています。まあ、どうやって採掘してどうやって運ぶんだ、という問題もありますけどね。
ちなみに、Google+のコメントで教えてもらったのがこちらのコミックス。
posted with amazlet at 11.11.04
太田垣 康男
小学館
地球の化石燃料に代わり、月のヘリウム3を採掘して……という話みたい。レビューを見ると航空工学・宇宙工学的にはツッコミどころ満載みたいですが、コミックスは理屈よりハートで読むものだと思うのです。