驚異的な早さでユーザー数を増やしているPinterestですが、写真やイラストのオリジナル作者にとっては非常に厄介なサービスです。なぜなら、Pinterestで共有されているコンテンツの80%は新規投稿ではなく、誰かの投稿を再掲したものだからです。
実際に使ってみると、このサービスの危険性がよく判ります。PinterestのPin Etiquetteのページには、”Credit Your Sources(ソースを明示しよう)”という注意書きがあります。Pin Itのブックマークレットを使えば、自動的に参照元のURLが貼られます。しかし、Pinしようとしている画像が既にどこかから転載されたもので、それと気付かずPinしてしまえば、画像の真の持ち主と切り離された状態での流通が始まってしまうのです。
イラストを描いた本人は、自分の知らない所で「誰の描いたものか判らないイラスト」という形で流通することを望むでしょうか?写真を撮った本人は、自分の知らない所で「誰が撮ったか判らない写真」という形で流通することを望むでしょうか?もちろん答えはノーです。イラストや写真を評価してもらうのと同時に、自分自身も評価されたいのは当然のことです。
ボクの言っていることの意味が判らない人は、Pinterestのボードに載っている画像から、それを描いた本人や撮った本人の元までちゃんと辿りつけるかどうかを試してみてください。想像以上に、作者の元へ辿りつくのが困難な場合が多いのが判ると思います。
作者の元へ辿りつくことができない画像は、どこかの段階で無断転載されたものです。そしてそれをRe-Pinする(自分のボードに貼り付ける)のは著作権を侵害する行為です。Pinterestを利用している人で、そういう意識を持っている人がどれだけいるでしょうか?
無断転載はPinterest固有の問題ではありません。ですが、Pinterest内を流通している画像の多くが、どこから無断転載されたものなのか判らない状態になっているので、ボクは怖くて他の人々のように気軽にRe-Pinすることができません。ボクと同じようなことに気づき、Pinterestをやめた人もいます。
Pinterestは利用規約を変更し、著作権や商標侵害といった問題の報告を簡単にできる仕組みを提供するようになるそうです。ただ、現時点でそれはまだリリースされていませんし、他の多くのサービス同様、著作権者からの申告でなければ受け付けないという形になっているのではないかとボクは想像しています。
ひとつ言えることがあります。こういうサービスが世の中にできてしまい、それが多くの人に受け入れられてしまっている以上、オリジナル作品の作者は自分で自分の身を守るしかありません。デジタル化の流れを止めることはできません。究極の自衛手段は、ネットワークに画像をアップロードしないことです。それでも例えば、書籍からスキャンされて流布するのは防げません。
画像と作者を切り離されないようにするためには、例えば画像をアップロードをする前に、画像そのものへ自分の名前や自サイトのURLを刻んでおく必要があるでしょう。そして、ネットワークへ上げる時は、オリジナルより解像度を低めにしておくことをお勧めします。そうすれば、手元にある高解像度版の価値が高くなるからです。
また、心あるユーザーは、画像と作者が切り離されてしまっているのを見つけたら、それを再度つなぎ合わせる努力をして欲しいと思います。例えばGoogle画像検索や、二次元画像詳細検索などを使うことで、もしかしたら作者が公開している所へ辿りつくことができるかもしれません。
悲しいことに、例えばpixivのような画像投稿サイトからは、膨大な件数の画像が海外のサイトなどへ無断転載されています。そしてそこからPinされ作者不詳のままPinterest内で共有されている画像もたくさんあります。
Pinterestを活用するのであれば、画像本来の持ち主へリンクをつなぎ、少しでも健全な状態に戻す努力をしてみませんか?