【書評】まつもとあつしさんの「ソーシャルゲームのすごい仕組み」

本書を知ったきっかけが判らなくなってしまったのですが、初版発行4月10日より前の4月8日にAmazonで注文して、なぜかその日のうちに配達されています。

ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書 212)

ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書 212)

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まつもとあつし

アスキー・メディアワークス

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最近、GREEやDeNAなどの運営するソーシャルゲーム周辺の「規制」に関して、話題になることが多くなっているように感じます。

ボク自身は、ソーシャルゲームはmixiの「サンシャイン牧場」やZyngaの「CityVille」などのブラウザ上で遊ぶものしかやったことがないので、携帯電話で爆発的なブームになっていたことは知っていましたが、実際のところどうなんだろう?というのはよく判らないままでした。

スマートフォンの普及で今後は難しくなっていくのかなー?とか、こういった当局の動きまで出てくるともしかしたら一気に業界が萎んでしまうのかもなーといった、よく判らないままなんとなく印象で捉えていた所がありました。ただ、これだけ話題になってくると、ちゃんとした解説を読んでおくべきかなー?とも思っていた時にちょうど本書が目にとまったのと、その著者がまつもとあつしさんというのが購入理由です。

まつもとあつしさんがAscii.jpやITmediaなどに寄稿している記事を、電子書籍関連のものを中心に何本か読ませて頂いているのですが、業界全体のことを細部までよく理解していて、物事を俯瞰した形で捉え、判りやすく伝えることができる方だという印象を持っていました。その印象は、本書を読み終わっても変わりませんでした。というかゲーム関連にも詳しいんですね。凄いなあ。

本書でどういった内容が語られているか、目次を引用します。

第1章 ソーシャルゲームを俯瞰する

・急伸するソーシャルゲーム

・若者中心から全世代に

・ソーシャルゲームにはどんなものがあるのか?

・ソーシャルゲームを手がける会社

・ソーシャルゲームはどう作られるのか

・ソーシャルゲームが儲かる仕組み

・ソーシャルゲームに死角はないのか

第2章 ソーシャルゲームにいたる道

・ゲームの歴史を振り返る

・ゲーム大国の落日

・iPhoneとジョブズ

・SonyはなぜiPhoneを生めなかったのか?

・「スマホシフト」がもたらしたもの

・融解する境界線

・二番手2社の「下克上」

・訴訟、その先にあるものは?

第3章 変幻自在のソーシャルゲーム

・Webサービスの課金の難しさ

・物語の起源は「ドラクエ」にあり

・「物語性」の分離

・「対戦・育成」へ

・蒸留されたゲームの楽しさ

・課金に合理性はあるか?

・勘からデータへ――変幻自在なゲームバランス

・ガチャ――確率という罠

・ソーシャルグラフのマネタイズ

・悩みのなかにいるmixi

・ソーシャルゲームは社会にとって有益?

第4章 ソーシャルゲームの光と影

・問題視されはじめたRMT

・ソーシャルゲームはパチンコか?

・ガチャと規制

・ソーシャルゲームをめぐる問題

・鍵を握る海外展開

・規制と健全化の取り組み

・ソーシャルゲームと対照的なTCG

第5章 ゲームの未来

・南相馬市で行われたゲームイベント

・焼け跡に何が残るのか?

・二極化するゲームが交わるとき

ご覧頂いたとおり、ソーシャルゲームの”今”に始まり、ゲームやハードなどの歴史、様々な問題点、未来像までを詳細に分析している本です。各章の冒頭では、友人に誘われソーシャルゲームにはまってしまい何万もつぎ込んでしまった架空の人物の物語が付いています。非常にリアルです。

また、ボクはトレーディングカードゲーム(TCG)の世界は全く知らなかったので、地方のゲームショップにとって救いの船になっているとか、ブシロードの木谷社長が「ブシロードはSNSの会社だ」と述べていることなどは、非常に興味深かったです。TCGに対するまつもとあつしさんの思いが伝わってくる印象的な文章があったので引用させて頂きます。

ただ、正直にいえば、ソーシャルゲームがアイテム課金やガチャといったバーチャル空間でのマネタイズの部分で「どこに向かうのかわからない」不安を感じさせるのに対して、著者にとってTCGはリアルな場ならではの安心して見ていられる場であったことも事実だ。リアルとバーチャルのアプローチは異なれど、ソーシャルゲームがまず目指すべきはこういった安心感できる場作りではないだろうか?

ブシロードはTVCMをちょくちょく見かけるので、「儲かってるんだなー」くらいの印象しか無かったんですが、今後もう少しアンテナを向けておこうと思います。

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