第8回目は、特別編で「Jコミ」です。
「Jコミ」は「ラブひな」や「魔法先生ネギま!」で有名な、漫画家の赤松健さんが代表取締役社長の会社です。出版社との契約が切れた絶版コミックやライトノベルを、著者(著作権者)の許諾を得た上で無料公開し、広告からの純利益は著者へ還元するというモデルになっています。株式会社の形態を取ってますが、利益を上げることを目的にしていないんですね。NPO法人にした方がいいのでは……。
他には無いあまりに異色なサービスなので、ひとまず総合ストアのレビューをひと通り終わらせてから取り上げようと思っていました。ところがつい昨日、画期的な新機能が追加されました。
後で詳しく紹介しますが、ついに「Web投げ銭」的なシステムが搭載されたんです!これはもう取り上げないわけにはいかないでしょ!(少々興奮気味)
レビューはこちらの記事の
・ラインナップが充実していること
・読みたい本を簡単に探せること
・簡単に買えること
・いつでもどこでも簡単に読めること
・いつまでも保管できること
という5つの要素に基づいて行わせて頂きます。これは他のレビューと体裁を同じにするためですが、システムが全く異なるので参考になるかどうか……。
※このレビューは投稿時点でのサービス内容に基づいています。
ラインナップは充実しているか?
トップページの右カラムに、数字が公開されています。総タイトル数200、総巻数654です。絶版本が対象ということもあり、古いタイトルばかりですし、数もまだまだ少ないです。これは、そういう場所なので致し方ないとしか言いようがありません。
対象 | タイトル数 |
少年漫画 | 79 |
少女漫画 | 41 |
青年漫画 | 46 |
女性漫画 | 13 |
ライトノベル | 6 |
(※2012年4月13日現在)
ラインナップはだいたい、1970年代~2000年代に出版されたコミックです。
絶版になっている作品をお持ちの著作者様は、ぜひこのFAQをお読みになった上、作品を登録して下さい。近頃いろいろ騒ぎになっているのでご存知の方も多いと思いますが、出版社に著作権はありません。
出版社は、作者と契約して「2~5年間くらい独占して出版する権利」をもらっているだけで、他には何の権利も持っておりません。ここは大事なので、勘違いしないようにして下さい。たまに作家さんが、「著作権が出版社にあるから、自分の作品であっても、自分の自由にはならない」とかおっしゃるのですが、マンガ家は、そこまで弱い存在ではないのです。
日本の出版社には、著作権も版面権も著作隣接権も発生しません。だから、作者の意志に逆らって電子化することはできないし、勝手に紙の出版もできません。
たとえ「独占出版契約書」があっても、最初の契約期間を過ぎて、作者さんが「もう更新しない」旨を伝えたら、出版社は抵抗することができません。
ちなみにこんな計画も動いていたりします。
要するに、ネタ元の一次著作権者がOKを出した二次創作作品を、「Jコミ」で公開してしまおう!というものです。ハードなエロパロやBLを無修正で収録するため、後述する「プレミアム会員」だけが閲覧できるサービスにする予定のようです。
違法アップロード問題と、無許可の二次創作同人誌問題を、同時にクリアしてしまおうという……凄いことを考えるものです。脱帽。
読みたい本を簡単に探せるか?
他の多くのサイトと同様、左カラムがジャンル、真ん中に特集や新着、右カラムがランキングになっています。また、「eBookJapan」と同様に、真ん中のカラムは可変レイアウトになっています。
キーワード検索はありませんが、ユニークな機能として「セリフ検索」があります。これは会員登録した読者が行ったセリフ入力から検索できるという機能です。セリフをテキスト化するというのは非常に面倒な作業(写植はともかく、描き文字はOCRでは読めないため)ですが、これをユーザーに投げてしまう(報酬としてポイントが還元される)というのは、非常に面白いし機能的だと思います。赤松健さんは本当に頭が良い。
簡単に買えるか?
基本的に閲覧だけなら、会員登録すら必要ありません。会員登録(無料)を行うと、以下のようなメリットがあります。
・TOPページ右上に、「マイページ」ボタンが現れる。
・Jコミポイントが貯められるようになる。
・セリフ入力作業ができるようになる。(Jコミポイントが貯まります)
・「作品の詳細」を書き込むことができるようになる。
・「このページが好き!」イベントに参加できる。
・絶版書のアップローダを使用できる。
なお、会員登録に必須項目は、「メールアドレス」「パスワード」「ニックネーム」「生年月日」「性別」だけです。
また、プレミアム会員(月額105円)になると、高画質版の閲覧や、成人向けマンガの閲覧ができるようになります。成人向けマンガは現時点で、総タイトル数45、総巻数57が登録されています。なお、プレミアム会員になるにはMasterかVisaのクレジットカードが必要です。
冒頭にチラッと言及した「Web投げ銭」的なシステムにも、もちろんお金が必要です。このシステムは「あなたが広告主」という名称で、個人でも企業でも作品に広告を載せることができ、クレジットカード会社の手数料以外は作品の著者へ還元されるという仕組みになっています。通常、作品に貼られているバナーは、GoogleやAmazonなどのアフィリエイトですが、この仕組なら直接出稿できちゃうというわけです。ニコニコ動画の広告と違って、著者へ還元されるというのが良いですね。まさに「投げ銭」的な感覚で利用することができます。なおこちらの支払いには、クレジットカード(VISA/Master/JCB/AMEX)と、PayPalも利用できます。
いつでもどこでも簡単に読めるか?
パソコンから見る場合は、そのままブラウザで閲覧できます。iOS向けには「J Reader」というリーダーが無償で提供されています。Android用「J Reader」は、4月末に公開予定とのことです。
いつまでも保管できるか?
無償で見られるサービスなので、株式会社Jコミが存続する限りは読むことができるということになります。「純利益を著者に還元」という仕組みなので、必要経費は十分に贖えているということだとは思いますが、今後規模が大きくなってサーバーの増強等が必要となった時に、事業が存続していけるかどうかが少し心配です。
結論
「絶版本」を対象とすることで、出版社や取次・書店などのしがらみから解き放たれているというのはお見事。もっと登録作品が増えてくるといいんですけど、出版社との関係を心配している著者がまだまだ多いということなんでしょうかね?ボクはこの事業を応援したいので、プレミアム会員になりました。