毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「Kindle Unlimitedサービス開始」「雑誌の時限再販キャンペーン開始」などが話題になっていました。
同人誌:電子書籍化の利点と問題点 – MANTANWEB(まんたんウェブ) ※2016年7月31日
あまりに無邪気すぎてゾッとしたので、1週前の記事ですがピックアップ。そもそも二次創作同人誌の場合、権利関係で問題が起きる可能性が高くなる点が最大の問題点です。例えばクリプトン・フューチャー・メディアは初音ミク公式ブログで、以下のような声明を出しています。
個人のクリエイターの方による、デジタルデータのダウンロード販売につきましては、理論的には大規模の頒布を極めて低廉なコストで行えることから、弊社としては上記の目的に合致しないため、原則としてご許諾をいたしておりません
もちろん権利者によってこのあたりの見解は異なりますが、限界費用がゼロに近いデジタルデータの頒布は、紙の頒布とわけが違うということは頭に入れておくべきでしょう。
出版状況クロニクル99(2016年7月1日~7月31日) – 出版・読書メモランダム ※2016年8月1日
毎月楽しみな小田光雄さんの出版状況クロニクル。雑誌の時限再販キャンペーンについて「この3つの分野の雑誌は、ブックオフで売られている雑誌のシェアと重なっているからだ」とあり、ちょっとびっくり。私にはブックオフで古雑誌を売ってるというイメージがありませんでした。ブックオフオンラインに「雑誌」ジャンルは存在しないし、ブックオフのFAQにも「週刊誌、コミック誌、経済誌等、流行・時代の移り変わりに左右されやすいものはお売りいただくことが出来ません」とあります。ただ、確かにファッション誌は3カ月以内なら買取OKなんですね。実態はどうなっているんだろう?
売れ残り割引、雑誌救うか 600店で実験開始:日本経済新聞 ※2016年8月2日
雑誌の時限再販の大規模テスト。値引き対象の雑誌が売れたら、出版社が書店に100円バックする形。うまくいくといいのですが。
【新文化】 – 紀伊國屋書店、直仕入の物流をトーハン子会社に委託 ※2016年8月2日
こちらは直接仕入の本格化。「商物分離」で、物流だけトーハン子会社が担う形になるようです。月曜社の小林浩さんが、これまでの経緯について詳細にまとめています。
紀伊国屋書店、新宿本店を改装 在庫10%増、イベント増強 新宿南店は和書撤退 – ITmedia ニュース ※2016年8月2日
紀伊國屋書店の新宿南店が和書販売から撤退するのに伴い、新宿本店を改装して在庫を増やすそうです。新宿南店の和書販売は8月7日が最終日。お疲れさまでした。
美術・文芸分野にも意欲 JASRAC新理事長の浅石氏「音楽著作権の巨象」より高い公共性が課題:朝日新聞デジタル ※2016年8月3日
JASRACが集中権利処理で果たしてきた役割は大きいのですが、どうしても権利者寄りのスタンスになってしまいがちなところがどうなんだろう? という感じ。逆に、誤解に基づく批判も多く見受けられるのが残念。
電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」、月額980円で国内提供開始 -INTERNET Watch ※2016年8月3日
ついに来ましたKindleの読み放題。私はとりあえず、出版社別の対応率、雑誌ラインアップdマガジンとの比較、コミックの出版社別対応率、コミックカテゴリーのエラー、出版社とKDPの待遇差について記事を書いておきました。私はこれで「書店がますます窮地になる」と思ったのですが、図書館関係者にも危機感を覚えている方が見受けられたのが印象的でした。
Kindle Unlimitedは出版側にとって神か悪魔か – ITmedia Mobile ※2016年8月6日
大きめのメディアで、こういうスタンスの記事は珍しい。どうせなら、KDPセレクトに登録するには独占配信する必要があるという点にも踏み込んで欲しかった。そこが最大のネックなんですよ!
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