「アマゾンが日本でも最恵国待遇(MFN)条項を撤廃」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #274(2017年5月29日~6月4日)

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 先週は「アマゾンが日本でも最恵国待遇(MFN)条項を撤廃」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年5月29日~6月4日分です。

アマゾン、納入業者と最安値契約廃止 独禁法調査受け 日本経済新聞(2017年5月30日)

 昨年8月に公正取引委員会が立入検査した件の続報です。独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いをかけられていたのですが、競合するサイトと同等の価格や品揃え出品者に保証させる「最恵国待遇(MFN)条項」をアマゾンが自発的に撤廃すると申し出て、公正取引委員会が審査を終了するというもの。なお、5月には欧州委員会とアマゾンがまったく同じ件で和解しており、日本も続いた、ということになります。

 ところで日経には「電子書籍など取り扱い商材の納入業者との契約を見直し」とあるのですが、公正取引委員会が発表した資料によると、今回の審査は「Amazonマーケットプレイスに出品する商品の販売価格及び販売条件」に対するもの。公正取引委員会の発表を読んでも、「Amazon マーケットプレイス参加規約Internet Archive・更新日:2016年5月1日)」を読んでも、これが「Kindleストア」での販売に適用されるとは読みとれません。

 どういうことなんだろう? と、頭から湯気が出そうになるくらい考えてみてやっと気づきました。これ、アマゾンに販売価格決定権のない、エージェンシーモデルの契約にだけ適用されていた条件ですね。つまりアマゾンの商品詳細ページに「販売:○×社 出版社により設定された価格です。」などと記載されている場合だけ。関係するのは、講談社、小学館、集英社、文藝春秋、白泉社、光文社、スクエニ、岩波書店など。「販売元: Amazon Services International, Inc.」と記載されているホールセールモデル契約なら、販売価格を決めるのはアマゾンですから、出版社が「競合するサイトと同等の価格を保証」なんてやりたくてもできないわけで。いやー気づくのに時間かかった。とほほ。

[2017年6月13日追記:公正取引委員会に問い合わせてみたところ「電子書籍は今回の調査の対象外です」という明確な回答が。ぎゃふん。ただ、今回のこの日経の報道をよく読むと、アマゾンの方針を伝えているに過ぎないので、公取委の調査対象外にも関わらず電書の契約条件も見直したという可能性は否定できないことに。複雑だ。うえぇ]

苦悩の日販、出版不況に配送危機が追い打ち 日本経済新聞(2017年5月30日)

 日販の決算発表について。「ネットでの定額読み放題サービスの台頭などの影響を受け、雑誌の売上高が減少」というのは、決算会見で出た言葉でしょうか。積載率が4~5割というのは厳しい。返品率も4割超ですから、荷物を半分しか積んでない上、その半分近くは売れ残りの回収というわけです。

『週刊文春 』や『 週刊新潮』の読者は、どんな本を読んでいるのか? HONZ(2017年5月31日)

 「週刊文春」「週刊新潮」などの印刷証明付き発行部数と、男女比や年齢層について。購入者は60代前後が中心で若者がほとんど買っていない、というグラフにはなかなかインパクトがあります。ただし、これは「書店での購入を元にしたデータ」です。コンビニでの販売や、電子版(読み放題のdマガジン、文春オンライン、週刊文春デジタル、LINEニュース版など)は加味されていません。あくまで「日販WIN+を導入している書店での購入者データ」として捉えるべきです。

 なお、朝日新聞の林智彦さんがCNETの連載「電子書籍ビジネスの真相」で、アメリカでは読者へ届けるチャンネルすべてを加味した「メディア360°」で分析しているという話を1年ほど前に紹介しています。日本ではデジタル版の発行部数が、日本ABC協会会員社向けサービスでしか公開されていないため、デジタル版の勢力が具体的にどの程度なのか一般にはあまり知られていないのが現状でしょう。もっとも、出版社がデジタル版の数字をアピールすると、書店や取次から噛みつかれるかも?

2017年上半期ベストセラー発表!佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』が第1位に ほんのひきだし(2017年6月1日)

 こちらもあくまで「日販WIN+を導入している書店での購入者データ」。とはいえ、村上春樹氏の14年ぶりの新作『騎士団長殺し』が2位に留まっていること、西野亮廣氏の『えんとつ町のプペル』が14位に入っていることなど、いろいろ興味深いです。

出版状況クロニクル109(2017年5月1日~5月31日) 出版・読書メモランダム(2017年6月1日)

 毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。日本ABC協会の2016年下半期「ABC雑誌販売部数表」(『文化通信』5/24掲載)が興味深い。読み放題UUが前年比40.5%増なのに対し、デジタル版販売部数(読み放題とは別)は同9.6%減。あくまで公表されている94誌のみの、しかも公称データですが、『日経ビジネス』が3万部超で、その次が『Mac Fan』で5000部と、万単位で売れている雑誌が1つしかないというのは寂しいものがあります。やはり「紙のレプリカを単品で販売」するモデルはなかなか厳しいものがあるようです。むむむ。

Google、Chromeブラウザに劣悪広告ブロック機能を追加へ ITmedia NEWS(2017年6月2日)

 広告ブロックがとうとうブラウザの公式機能として搭載されることに。2018年初旬から。売上の9割以上を広告から稼ぎ出しているGoogleが、自らこういう動きに出たことを評価したい。


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