売っていないものは買えません。電子出版市場の盛り上がりには、ラインアップの増加が不可欠です。では、いま実際にどれくらいの本が電子化されているのでしょうか? Amazon で出版社別に調べてみました。
調査概要
結果をご覧いただく前に、以下のようなことを前提としたデータだということをあらかじめご了承ください。前回同様、かなり荒っぽい調査です。
まず、「出版点数」は Amazon の「本(和書)」で全件検索した結果です。Amazon に登録されているかどうかがポイントになります(つまり古書も混ざっています)。また、「電子化率」という言葉を使っていますが、出版社によっては「Kindleストア」向けの配信を減らしたり遅らせたりしている場合もあります。
例えば「朝日新聞社」のようにイーシングル(短い電子書籍)を多く出している場合は「電子化率」という言葉があてはまりません。実際、ふつうならあり得ない「100%超」という出版社が何件もあります。どう考えてもおかしいのはわかっているのですが、イーシングルだけを除外するのが困難なのでそのままにしてあります。集英社のカラー版のようなバリエーション違いも、重複したままです。
トータルでの「電子化率」は11.0%(前回は8.3%だったので2.7ポイント増)という結果になっていますが、出版社なのに出版社一覧には載っていないケースがあるため、本当はもう少し大きな数字になるはずです。Amazon の仕組みが悪いのか、データベースが悪いのか、出版社側が対応すべきことなのかは不明です。
「本」の点数上位で言えば、「ゼンリン」「協同出版」などはKindleストア未配信のようですが、「学研」は「学研プラス」の名前で電子版を配信しているにもかかわらず、Kindleストアの出版社一覧には出てきません。「ゴマブックス」も同様です。
残念ながらキーワード検索では正確な点数がわからないため深掘り調査は行わず、ゼロではなく空欄にすることで対処させていただいてます。その上で、「電子化率」10%未満のレコードは薄い赤で塗っておきました。
また、名寄せ(重複削除)はあえて行っていません。社名変更やブランド名変更などを把握し切れておらず、キリがないためです。そのためたとえば「マイナビ」と「マイナビ出版」が別レコードで存在しています。
調査結果
というデータだというのをあらかじめ了承いただいた上で、結果をご覧ください。
※ スマートフォンの方は、画面を横にしてください
※ 1500件以上あるため縦に長いです
※ 今回は社名でソートしてあります
※ 並び替えしたい人は xlsx ファイルをダウンロード(読み放題率付き)
[元データ:Amazonの「本:詳細サーチ:出版社」、「Kindleストア:出版社」、「Kindleストア:読み放題対象タイトル:出版社」から2018年1月4日に抽出]
「出版点数」が5桁以上と多いわりに「電子化率」は10%未満と低い出版社は、岩波書店、文芸社、筑摩書房、河出書房新社、ポプラ社、有斐閣、平凡社、成美堂出版、中央経済社、NHK出版、オーム社、昭文社、誠文堂新光社、音楽之友社、旺文社、東京大学出版会です。
表の前にも書いた通り、トータルで「電子化率」11.0%という結果はあくまで暫定で本当はもう少し多いはずですが、電子出版市場が紙の10分の1程度であることを踏まえると、まあこんなもんかなという気もします。
「売っていないものは買えない」というのは、私がずっと前から言っていることです。電子コミック市場が大きく伸びているのは、新刊のみならず既刊も電子化されていることが要因の一つだと私は考えています。
ただ、文字モノはリフロー型電書にしようと思うと、版面に固定化された文字をテキストデータに戻す工程が必要になる(つまり相当なコストを要する)ため、古い本の電子化がなかなか進まないという事情があることも理解しておく必要はあるでしょう。
ジャンル別の点数が一覧で把握できなくなったので調査しづらい……(*Ծ﹏Ծ)