きんどうのzonさんと楽天を訪問してKoboの今後の戦略について聞いてきた

ダンボーに襲われるKobo

Kindleストア専門情報サイト「きんどう」のzonさんからお誘いをいただき、3月26日に品川の楽天タワーへお伺いしてKoboのマーケティングを担当している糸山尚宏氏と織田未来氏を取材させていただきました。

「きんどう」さんではエイプリールフール企画として “日頃のセールに感謝を込めて、春の電書ストアのりかえキャンペーン!楽天Koboについて中の人に聞いてきた「Koboどうでしょう!」” という記事が公開されています(※2014.4.11追記:現在は非公開です。跡地 → http://kindou.info/27545.html )ので、ウチはちょっと違った切り口で紹介をさせてもらいます。

楽天Koboについては、このブログでもたくさんの記事を書いてきました。

サービス開始前

オープン直後

その後(2012年だけ)

……とまあ、何度も記事になるネタをご提供いただきました。

最近だとこんな記事も。

ボクはべつに楽天に恨みがあるわけではなく、Amazonとよきライバルとして競っていただくためには、もっと楽天に頑張ってもらわなければ、と考えています。ただ単に叩いて溜飲を下げるだけのメディアも多いですが、ボク自身はそういうところとは一線を画してきたつもりです。

ただ、当事者である楽天の方からすれば、正直たまらないだろうな、とも思ってました。だから、zonさんから「一緒に行かない?」と誘われて「行きます」と応えたものの、ボクだけ断られる可能性もあるかな? と想像していました。

しかし、楽天の方々はボクのそういう予想を見事に裏切り、暖かく迎え入れてくれました。

楽天タワー1F受付前のKoboブース

ちなみに、楽天タワー1階の受付前にはこんなブースが用意されていて、楽天グループ全体としてKoboを強烈にプッシュしているのだなーという雰囲気がありました。楽天イーグルスの本拠地スタジアムも「コボスタ宮城」という名称に変わりましたよね。力を入れている感じがします。

そういえば、4月2日の楽天イーグルスvsオリックス・バッファローズの試合は、楽天協賛の「楽天Koboデー」みたいですよ。

「すぐサポート体制の見直しを図りました」

楽天Koboの糸山尚宏氏(右)、織田未来氏(左)

向かって右が糸山尚宏氏、左が織田未来氏です。

名刺交換して席についてすぐ、糸山氏から先日書いた記事 “Amazon通販で神対応を体験!楽天とサポートの対応で大きな差があることを実感しました” について、至らない点があって申し訳ありませんでしたとお詫びされました。

楽天社内で大騒ぎになったという噂は聞いていたのですが、サポートの応対方法など指導体制なども見直しを図っていただいたそうです。「薄くて読めない」と言ってるのに、「仕様の範囲内です」と返されたらほとんどの人は怒ると思うので、賢明な措置だと思います。

人間がやっていることですから、問題は必ず起こります。ポイントは、問題が起きた時に、どれだけ素早く対処できるかどうかなのではないでしょうか。実際、過去の記事で挙げた問題の多くが、現在では解消されています。日本でオープンした時から考えれば、目覚ましい進化を遂げていると言っていいでしょう。

リアル書店提携は既に124店舗

ボクが楽天Koboの取り組みで一番評価しているのは、ネット企業であるにも関わらず、電子書籍普及のためにリアルでさまざまな取り組みをしている点です。

中でも、リアル書店との提携をどんどん進めているところは注目すべき点です。

カナダのKoboは、後発ながらリアル書店とうまく提携し、寡占状態を築いています。AmazonはKoboの後追いでKindleの販売代理店制度「Amazon Source」を出しましたが、これまで徹底的に小売店を敵に回してきたため、「これはAmazonのトロイの木馬だ」と猛烈な批判を受けているそうです。

日本でも、いまさらAmazonが「書店と提携します」というプログラムを出したところで、反発されるだけでしょう。つまり、リアル書店との提携は、Amazonが真似できないことなのです。そして、リアル書店での本の販売額は、2012年で全出版物販売額の72.8%を占めています。本はまだ、圧倒的にリアル書店で売れているのです

しかし、楽天Koboが1周年の時に「リアル書店との提携を強化します」と言い出した時には、大型書店の多くは既に自社で電子書店をやっていたり(紀伊國屋書店Kinoppy、TSUTAYA.com eBOOKs、未来屋書店mibonなど)、提携していたり(hontoと丸善・ジュンク堂・文教堂、BookLive!と三省堂など)と、正直、どこと組むんだよ?と疑問を感じたものです。

ところがどっこい、いきなり蔦屋書店との提携が発表された時は、度肝を抜かれました。まあ、いきなり全店舗というわけではなく、熊本三年坂店でのトライアルではありますが。しかしもしこれがうまく進んで、蔦屋書店だけではなくTSUTAYA全店での展開も始まるとなれば、とてつもないインパクトがあります。田舎へ行くと書店がなく、本はTSUTAYAで買うしかないような地域も結構あるのですよね。TSUTAYA.com eBOOKsはどうするんだ!? という問題はありますが、楽天Koboが会員ごと引き受けちゃえばいいわけですよね(この辺りは妄想です)。

蔦屋書店以外にも、WonderGOOや大田丸など、どんどん提携先を増やしています。取材時には、既に124店舗との提携が完了しているとおっしゃっていました。すげぇ。

提携先リスト

今年はKobo Writing Lifeを日本でも展開予定

楽天KoboにはKindleダイレクト・パブリッシング(KDP)と同様に、個人作家が直接取引できる「Kobo Writing Life」というサービスがあります。これは、日本ではまだ正式展開されていません(ただし、リンク先カナダ本国のサイトへ登録すれば、いちおう可能ではある)。

これまで出版社への配慮から、日本での開始時期などは明確にしてこなかったのですが、実は今回の取材で「2014年中に展開予定」と明言されました。大事なことなのでもう1回書きます。Kobo Writing Life は、今年中に日本で展開予定だそうです。

さてこれがどんなインパクトを与えるか。Kobo Writing LifeにはWYSWIG型エディタがあるので、KDPより手軽に利用可能です。KDPの、EPUB作ってMOBIに変換して……というのは、意外とハードル高いんですよね。また、KDPは独占配信という条件付きで印税率70%(さもなくば35%)ですが、Kobo Writing Life は販売価格2.99$以上であれば70%(未満は45%)という条件になっています。

日本で同じ条件になるとは限りませんが、そこそこ売れるストアで高い印税率なら、Kindleストアだけで独占配信するメリットが薄れることになります。現状「KDPだけでいい」と言っているセルフパブリッシャーたちが、楽天Koboでも販売するようになるでしょう。当然、Kindle側も、何か新しい施策を打ってくるでしょう。ストア間にサービス競争があれば、著者と読者がメリットを享受できます。独占市場はいつ手のひらを返されるか分からないから、非常に怖いのです。

Kobo Writing Lifeが日本で正式展開開始することで、セルフパブリッシング界隈がこれまで以上に賑わうことになるでしょう。7月の電子出版EXPOか、2周年辺りで何か発表あるかな?(これはあくまで予想です)。楽しみです。

取材は1時間だったのですが、非常に濃密な時間を過ごすことができました。また行きたいな。

名前まで変わってる(笑)

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