売っていないものは買えません。電子出版市場の盛り上がりには、ラインアップ増が不可欠です。では、いま実際にどれくらいの本が電子化されているのでしょうか? Amazon で出版社別に調べてみました。
2012年1月以降発行に絞った調査記事はこちら。コミックだけの調査記事はこちら。
表に入る前に、以下のようなことを前提としたデータだということをあらかじめご了承ください。
まず、「電子化率」という言葉を使っていますが、Kindleストア向けの配信を抑制し他ストアには配信している可能性があります。また、例えば「朝日新聞社」のようにイーシングル(短い電子書籍)を多く出している場合は「電子化率」という言葉があてはまりません。
また、トータルでの電子化率は8.3%という結果になっていますが、出版社なのに出版社一覧には載っていないケースがあるため本当はもう少し大きな数字になるはずです。Amazon の仕組みが悪いのか、データベースが悪いのか、出版社側が対応すべきことなのかは不明です。
「本」の点数上位で言えば、「ゼンリン」「協同出版」などはKindleストア未配信のようですが、「学研」は「学研プラス」の名前で電子版を配信しているにもかかわらず、Kindleストアの出版社一覧には出てきません。「ゴマブックス」「マイナビ」なども同様です。
残念ながらキーワード検索では正確な点数がわからないため深掘り調査は行わず、ゼロではなく空欄にすることで対処させていただいてます。その上で、電子化率10%未満のレコードは薄い赤で塗っておきました。
出版点数が多いわりにKindle本が少ない出版社は、岩波書店、文芸社、徳間書店、筑摩書房、河出書房新社、ポプラ社、有斐閣、平凡社、主婦の友社、成美堂出版、日本経済新聞出版社、オーム社、旺文社、昭文社、誠文堂新光社、NHK出版などです。
また、ついでに読み放題の点数も調べてあります。読み放題率の分母はKindle本です。
※スマートフォンの方は、画面を横にしてください
※1500件以上あるため縦に長いです
※.xlsxファイルはこちら
[元データ:Amazonの「本:詳細サーチ:出版社」、「Kindleストア:出版社」、「Kindleストア:読み放題対象タイトル:出版社」から2016年10月16日に抽出]
表の前にも書いた通り、トータルで電子化率8.3%という結果はあくまで暫定で本当はもう少し多いはずですが、電子出版市場が紙の10分の1程度であることを踏まえると、まあこんなもんかなという気もします。
「売っていないものは買えない」というのは、私がずっと前から言っていることです。電子コミック市場が大きく伸びているのは、新刊のみならず既刊も電子化されていることが要因の一つだと私は考えています。
ただ、文字モノはリフロー型電書にしようと思うと、版面に固定化された文字をテキストデータに戻す工程が必要になる(つまり相当なコストを要する)ため、古い本の電子化がなかなか進まないという事情があることも理解しておく必要はあるでしょう。