毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「緊デジ批判への反論」「BOOK☆WALKERの売上が前年度の3倍に」などが話題になっていました。
電子書籍が迫る変革 :日本経済新聞 ※2014年4月30日
「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」ネタ。日経新聞が踊らされているのか、読者を踊らせようとしているのか。既に、ツッコミ記事を書いてあります。
出版状況クロニクル72(2014年4月1日~4月30日) – 出版・読書メモランダム ※2014年4月30日
毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。書店の減少と図書館の増加は、相関関係はあっても因果関係が不明な気が。
あと “本クロニクルだけが一貫してJPOと「緊デジ」を批判してきた” というのはちょい疑問。外から「批判するだけ」なら簡単な話なので。直接関わりなんとか状況変えようと努力をしてきた人々を、単純に責める気にボクはなれないです。そもそも矛先を向ける先が違うのでは。
ちなみに「マガジン航」には2012年3月4日の時点で「東北を遥か離れて:電子化事業への5つの疑問 」という記事が載ってます。小田光雄さんが最初に批判を始めたクロニクル46と、ほぼ同時期だったり。
緊デジ、私的な総括 | ポット出版 ※2014年5月1日 (魚拓)
緊デジ(経済産業省コンテンツ緊急電子化事業)事業に制作の責任者として関わった、ポット出版の沢辺均氏による私的な総括。河北新報による一連の批判記事(下記)を受けての「私的な」反論です。
- 復興予算で成人本電子化 被災地の情報発信促進事業 | 河北新報オンラインニュース ※3月31日(魚拓)
- 復興支援事業・書籍電子化 東北関連3.5% | 河北新報オンラインニュース ※4月5日 (魚拓)
- コンテンツ事業 JPOの第三者検証委は今も未設置 | 河北新報オンラインニュース ※4月11日(魚拓)
- コンテンツ事業、電子化一部完了せず 補助金適正化法抵触か | 河北新報オンラインニュース ※4月16日(魚拓)
- 制作会社、10カ月で6万冊「無理」 震災復興コンテンツ事業 | 河北新報オンラインニュース ※4月16日(魚拓)
- コンテンツ事業 被災地への発注把握せず 経産省とJPO | 河北新報オンラインニュース ※4月19日(魚拓)
- コンテンツ事業 仙台の企業公募不採用 理由知らされず | 河北新報オンラインニュース ※4月24日(魚拓)
経産省・JPOと、出版デジタル機構から情報がちゃんと開示されないから、いろいろ軋轢が生まれているように思うのですが。沢辺さんの私的総括にも、こんな反論が。
匿名ダイアリーで「(一部に)フィクションも織り交ぜてある」とあるので、鵜呑みにはできないのですが。
国会図書館、保護期間満了のデジタル資料について転載申し込みを不要に -INTERNET Watch ※2014年5月2日
著作権保護期間が満了している資料の転載に、従来は申請が必要だった(それが不要になった)という話。著作権法的には国立国会図書館には何も権利がないはずなので、ようやく健全な方向へ動いたということになります。
そういえば以前、宮内庁が公開した古文書のスキャンデータの全面に「禁無断転載」って書いてあって、がっかりしたという話があったなあ……。
国立国会図書館が転載OKにしたことをきっかけに、こういう風潮が全国的に変わっていくといいですね。
ドイツ政府、電子書籍のVAT税率を紙書籍と同じ7%へ引き下げる意向 – ITmedia eBook USER ※2014年5月2日
フランス・ルクセンブルグと同様に、ドイツも電子書籍を「文化財」とみなして税制上優遇しようと動いているそうです。こういう方向のほうが健全ですよね。日本でこういう話を進めようと思うと「漫画を除外しろ」といった意見が飛んできそう……。
電子書籍の評価ポイント、経験者は「コンテンツ入手性」、未経験者は「機能性」―定期調査「電子書籍」(11) – インターネットコム ※2014年5月2日
インターネットコムが定期的に行っている「電子書籍」に関するリサーチですが、ようやく「使っている専用リーダーの種類」の質問ではなく、他の観点からの調査に変わりました。「電子書籍専用リーダーの利用者」がたったの29人なのに、そこからさらにどこの端末を使っているかを尋ねても、ねえ。
しかし、読んだことがない人は機能性に惹かれ、読んだことがある人は品揃えに不満を持つ、というのは分かりやすい。結局、体験しないと分からないということなのかな、と。
hon.jp DayWatch – 世界初、PWYW電子書籍販売サイト「言い値書店」がBitcoinでのキャッシュバックをスタート ※2014年5月2日
Bitcoinでキャッシュバックって面白い。ボクの本も対象になってます。
ほぼ同時に「KENPON」もリニューアルしてます。
News Corp、女性向け恋愛小説出版社Harlequinを買収 – ITmedia eBook USER ※2014年5月3日
ハーレクインの築いてきた基盤を使い、ハーパーコリンズの作品を英語圏以外に、という構想のようです。
【第14回】ダ・ヴィンチニュースの中の人と話す 電子書籍界隈の現状と今後について | ダ・ヴィンチニュース ※2014年5月3日
ダ・ヴィンチニュースの後藤久志さんとまつもとあつしさんの対談。引用されているアンケート調査の概要が、非常に大雑把な形でしか公表されていないのが残念……申し訳ないですが、無作為抽出なのかどうか、年齢・性別・居住地の均等割り付けをやっているのかどうか辺りを明示してもらえないと、信用していいかどうか判断できない。
ところで、後藤久志さんがいつのまにか「前」編集長に。
KADOKAWA通期は減収、営業利益も減 書籍売上げは「カゲロウデイズ」好調 ※2014年5月4日
大きな成長を見せたのはネット・デジタル関連部門である。売上高は216億400万円と29.7%と高い伸びとなった。電子書籍配信の「BookWalker」の売上げが前年の3倍になるなど、電子書籍事業の成長が牽引した。
BOOK☆WALKERの2012年度の売上は24億円で、うち直販売上比率は約30%だったので、2013年度は21.6億円くらい? 他社と比較をすると、eBookJapanの2014年1月期売上が41.55億円、パピレスの2014年3月期予測売上が70.8億円(PDF)という感じ。
ちなみに、正式名称は「BOOK☆WALKER」です。アルファベットは全て大文字。☆が入るのは角川歴彦会長のこだわり。
楽天koboの電子書籍再ダウンロード期限の罠(はてな匿名ダイアリー) ※2014年1月25日
記事そのものは1月に公開されていたようですが、4月30日あたりから急に話題になっています。うちのブログの古い記事にも、急にアクセスが来るようになってます。
その後、だんだん再ダウンロード期限は撤廃されており、楽天Koboも5月3日くらいにサイトから制限の文言を消し、実際に期限もなくなったようです。
うわー、koboの小学館コミック、5年間の再ダウンロード期限の記載が消えてる!(左は13年11月のキャプチャ、右は現在) pic.twitter.com/DExDy6GJgl
— yamakai (@yamakai74) 2014, 5月 3
楽天koboの一部の本の再ダウンロード期間の設定が廃止になったそうです。以下の件についてカスタマーサービスに問い合わせてみました。「5年後には再ダウンロードができなくなる、ということはございませんのでご安心ください。」とのことです。
http://t.co/nTbUcjEUCw
— Tsuyoshi Miyakawa (@tsuyomiyakawa) 2014, 5月 3
せっかく改善したのですから、何らかの形で公式に告知した方がいいと思うんですけど。いかがでしょう? < 楽天の中の人