KADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店が設立した日本電子図書館サービスのビジネスモデル ── JEPAセミナーレポート

JDLS JEPAセミナー

日本電子出版協会(JEPA) 電子図書館委員会は3月18日、日本電子図書館サービス(JDLS)代表取締役社長の山口貴氏を講師に迎え、同社の新電子図書館システム「LibrariE(ライブラリエ)」の概要やビジネスモデルの説明などを行いました。以下はそのレポートです。

なお、2013年10月31日の図書館総合展で行われた、日本電子図書館サービス関係者が登壇したフォーラム「本格化する図書館への電子書籍配信サービス」のレポートはこちらです。

日本電子図書館サービス(JDLS)設立の目的と理念

日本電子図書館サービス(JDLS)代表取締役社長の山口貴氏

日本電子図書館サービス(JDLS)代表取締役社長の山口貴氏

時代に即したビジネスモデルを迅速に提示し、図書館に求められる「”知”の集積」という基本機能と、著作者および出版社が必要とする「”知”の再生産」に必要な還元の仕組みを、ともに成立させるべく図書館・著作者・出版社の新たな関係を提案すること、とのことです。

電子図書館システム「LibrariE(ライブラリエ)」とは?

野田取締役から、詳しい説明やデモが行われました。下図にあるように、「選書オーダリングシステム」と「電子図書館」の組み合わせになっています。

LibrariE

  • これまでと比較にならないラインナップを実現
  • 365日24時間利用できる館外貸し出しサービス
  • 電子化された郷土資料や自治体資料の受け入れ
  • 福祉サービスの強化(障害者差別解消法への対応)
  • システム負担の少なく安全なクラウドサービス

実証実験のコンテンツ数は1851点でしたが、2015年4月のサービスイン時には1万タイトルを提供する予定とのことです。

27年度のラインナップ(予定)

講談社:

講談社選書メチエ、講談社現代新書、ブルーバックス、青い鳥文庫など

KADOKAWA:

角川学芸出版、角川oneテーマ21、角川SSC親書、角川選書、EPUB選書、アスキー書籍、アスキー親書、中経出版、つばさ文庫など

参加検討中出版社:

小学館(全集企画など)、学研、研究社、インプレスなど

出版デジタル機構:

緊デジ作品

「LibrariE」のビジネスモデルは?

下記の3パターンです。「アクセス権」を提供する形になります。図書館は「選書オーダリングシステム」で契約を管理します。

ワンコピー/ワンユーザ型

1ユーザーのみに貸し出し可能。2年間または52回貸し出しの制限付きモデル。出版社には底本の1.5倍から2.0倍を推奨。

都度課金型

新刊時には利用が多いものの、2〜3年経過すると数年に1回しか貸し出しがない書籍に対応するライセンス更新モデル。ワンコピー/ワンユーザ型の26分の1を、貸し出し回数都度課金する。

ワンコピー/マルチユーザ型

1冊の電子書籍を同時に多数の利用者へ貸し出すモデル。小学校や中学校など、教育現場で利用することを想定したモデル。

購入モデル

実際には下図のように、最初はワンコピー/ワンユーザ型で、3年目から都度課金型に切り替えていく形になります。

LibrariEの購入モデル

8年間の図。

LibrariEの購入モデル

図書館には購入予算があります。都度課金は26分の1なので安く、貸し出しがあったときしか課金しないので、貸し出しの無い本はコストがかからないことになります。所蔵リストは右肩上がりだけど、費用はワンコピー/ワンユーザ型の数割程度で済む、という試算になっているそうです。

平成27年度は、まずは期間限定の有償お試しサービスでスタートするそうです。

山中湖情報創造館と稲城市立図書館での実証実験中間報告

いろいろ興味深いデータが開示されました。

掲載NG

曜日別利用状況

掲載NG

時間帯別利用状況

掲載NG

24時間サービスなので、図書館が開いていない時間以外でもたくさん借りられていることがわかります。

貸出期間の状況

2週間で自動返却される(延長ボタンがある)ので、14日のところが突出しています。当初は7日間だったので、7日のところがちょっと出ています。

掲載NG

15分や20分で返しちゃう人も結構多かったそうですが、これを52回にカウントしてしまうのは辛いので、4月の新システムからでは「試し読み」ができるようになります。

貸出・予約状況

ある本の、貸出と予約状況です。ワンコピー/ワンユーザ型なので、誰かが借りている間(図では左右の矢印)は、他の人は予約(図では●)ができる形になっています。

掲載NG

もちろんいろんな借りられ方があるとは思いますが、この程度であれば恐らく52回で充分だろう、という試算です。実証実験のコンテンツ1851点のうち、1回も借りられなかった本も半分くらいあるとか。

利用デバイス

貸出(左)は比較的パソコンが多いですが、閲覧ではモバイルの方が多くなります。

掲載NG

年代別貸出回数

許諾をとった上で、データ収集しているそうです。40代、50代が非常に多い!

掲載NG

男女比

掲載NG

「LibrariE」の画面

ユーザー用画面

LibrariE

ログインすると、「試し読み」ボタンが活性化します。

LibrariE

[借りる]ボタンをクリックすると、すぐ借りられます。

LibrariE

ブラウザビューワには自動ページ送りとか

LibrariE

音声読み上げ機能もあります。

もちろんリフロー書籍なら、文字の大きさ変更も可能です。マーカーやメモ機能もあるっぽい?

選書オーダリングシステム

詳細は割愛します。図書館側が使う画面です。普通のECサイトと似てますね。

選書オーダリングシステム

異なるのは、契約更新管理がある、という点です。

今後の予定と出版社へのお願い

4月から本格的に営業開始するが、出版社各位には是非、図書館向けの電子書籍をご提供いただきたい、とのことです。

質疑応答

BinBブラウザを使ってるようだが、対応デバイスは?

あえてブラウザビューワにしている。ITに詳しい人だけが利用するわけではないので、アプリをインストールする形はハードルが高い。

ユーザーが借りられない場合に、購入へ導線を張る計画は?

来年度後半に、購入に繋がるボタンを作っていく予定。

出版社への売上フィードバックは?

毎月、報告書を出す。希望があればデジタルデータで提供する。

購入導線は、どこに?

複数の電子書店や、複数の紙本通販ストアへリンクしようと思っている。

フォーマットは?

EPUB 3。

音声読み上げは?

TTS(合成音声)。読み上げ速度を可変できるようにしている。人が読み上げたオーディオブックも取り扱っていきたい。読み上げできない本もある(著作権者の許諾が必要)。

TTSの読み間違え問題は?

技術的にはかなり進んでいるが、一定程度読み間違えが出てしまうとは思う。障害者の声としては、その程度でも構わないと言われている。

雑誌やムックは固定EPUB?

そうです。

初年度の導入目標は?

コンテンツ数は、初年度1万点、2年目2万点、5年後に8万点くらい。導入図書館は5年で400館くらいを目標。

価格が底本の1.8倍というのは予算上厳しい

基本は出版社が決める。JDLSが推奨している1.5倍〜2.0倍というのは、「貸与権」を参考にしている。

(※紙のように劣化しない点を考慮すべきだとは思います)

(※参考:一般社団法人 出版物貸与権管理センター

図書館が販売代理店になってバルクで提供されるようなことは可能?

現状の代理店と話し合いながら詰めていく。

出版社によっては最初から都度課金とか、いろいろなやり方を望むと思うが?

ライセンスやモデルは時代やニーズとともに変わっていくと思うので、出版社や図書館と相談しながらいろいろ変えていきたい。

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