12月20日に流れたこのニュース
東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1112/20/news100.html
Twitterのタイムラインでも、Google+のストリームでも、大変話題になっていました。ボクは2ちゃんねるを直接見る習慣は無いのですが、まとめサイトでも話題になっている所をみると、どこでも大きな話題になっているようですね。
作家、東野圭吾、購入厨を犯罪者呼ばわり
http://novesoku.blog52.fc2.com/blog-entry-1497.html
ボクは作家でも出版社の人間でも無い一介の「読者」という立場なのですが、提訴した方々の言いたいことは理解できる(ログ)という見解です。ただ、当然のことながら、世間一般では賛否両論どころか、提訴した方々への猛烈な批判の方が目立つような気がします。
東野圭吾さんらの提訴に関する津田さん、おかざき真里さん、大原ケイさん、赤木智弘さんの呟きまとめ。
特にボクは、津田大介さんのこのツイートには強い違和感を覚えました。
Kindle Fireが爆発的に売れ始めてる米国とまともな電子書籍マーケットも立ち上がらず、あまつさえ先進読書家のための自炊代行サービスを訴訟で潰す日本。デジタル海賊版対策ってのは摘発とともに違法ファイルと同じものを適切な価格でデジタルに出すのが王道なのにそれもやらない。役所か!
— 津田大介さん (@tsuda) 12月 20, 2011
王道?!デジタル海賊版対策に、王道なんてあったんですね。うーん……と首を傾げてしまいました。まるで「俺は唯一絶対の正解を知っている」とか「俺の言う通りにすれば絶対にうまくいく」といった傲慢さを感じるのはボクだけでしょうか?アメリカ方式が答えなんでしょうか?何か「違う」という気がしてなりませんでした。
スキャン代行業者提訴で作家7名はかく語りき
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1112/21/news044.html
こちらの記事の下の方にある「私たちはどう考えるべきなのか」という所が、今回の問題を考える上で非常に旨くまとまっていると思います。
今回の提訴のメインは「スキャン代行の主体が業者であるかどうか」。現行の著作権法で考えれば、「使用する者が複製することができる」と定めた私的利用の範囲を逸脱しているのは明らかだが、判例はなく、グレーゾーンでしかない。まずはそこをはっきりとさせようとしている。
ボクはこのエントリーに「『自炊』を業者に代行してもらったら『他炊』だよね?」という題名を付けましたが、あくまでこれはボクの見解であって、現時点ではグレーゾーンなんですよね。それを裁判で白黒はっきりさせましょう、というのが今回の提訴の主目的だと。
しかし、今回の提訴が世間一般で強く反発されているのは、この辺りが理由でしょう。
スキャン代行業者の複製権侵害という問題を語る中で、裁断本の違法流通、そしてスキャンデータの違法流通もスキャン代行業者にその責任があるとするのは論理の飛躍もある。スキャン代行と違法流通はどちらも著作権侵害の話だが、本来分けて考えるべき話だ。
つまり、恐らく今回提訴をした方々というのは「自炊」という行為そのものを禁じるつもりはなかったと思うんですね。「私的複製」は購入した消費者にとって法的に認められた行為ですから。自炊の「代行」という業態(他炊)が、どこまでの範囲が許容されるかというラインを引くことができれば充分だったはず。
なのに、会見場に裁断された本を置き「ビリビリに裂かれた本が可哀想」という方向の主張をしてしまったため、「自炊」という行為そのものを禁じようとしているように捉えられてしまった。消費者の利便性を考えず、自分たちの懐のことしか考えていないというように捉えられてしまった、ということだと思います。
佐藤秀峰さんのこのエントリーが、それを象徴していると思います。
自炊代行について。
僕も目の前で著作本をビリビリに破かれたら悲しい気持ちになるだろうし、自炊を悪としたい気持ちも分からなくはありません。ですが、本は購入した方の所有物ですから、破こうと捨てようと作家は口出しできる立場にはありません。
恐らく、提訴した作家側が勝訴するでしょう。でも、この会見は読者を敵に回してしまった。失ったものは大きいと思います。
(※参考)
著作権法 第30条 (私的使用のための複製)