第4回目は、「電子書店パピレス」です。
創業1995年で、電子書籍一筋17年の老舗です。「電子貸本Renta!」の運営も行なっています。
ちなみに創業者は元々富士通の方で、社外ベンチャー制度を利用して会社を設立したそうです。2010年6月にJASDAQへ上場(証券コード:3641)しています。IR情報で確認しましたが、今はもう大株主に富士通は入っていないんですね。ニフティが4.95%持っているのが創業時の名残りでしょうか。
ところで「電子書店パピレス」を最初に開いた時から気になっているんですが、サイトの一番上に「日本最大の電子書籍販売サイト」って書いちゃってますけど、「最大」の根拠を示さないと不当表示防止法にひっかかるような気が……いいんでしょうか?これ。
レビューはこちらの記事の
・ラインナップが充実していること
・読みたい本を簡単に探せること
・簡単に買えること
・いつでもどこでも簡単に読めること
・いつまでも保管できること
という5つの要素に基づいて行わせて頂きます。
※このレビューは投稿時点でのサービス内容に基づいています。
ラインナップは充実しているか?
平成23年3月期決算説明会資料(PDF)(※リンク切れ)によると、掲載タイトル数は219,864冊、提携出版社数は約538社とのことです(2011年3月現在)。ただこれは「電子書籍化」の処理(アグリゲーション)を行なっている冊数で、実際に販売(ディストリビューション)している冊数は169,507冊のようです。それでも他のストアと比べると桁が1つ多いのですが、ITmediaの記事によると70%くらいが洋書とのことです。日本語の書籍としてはだいたい5万冊というところでしょうか。
[※2013年3月11日追記]
上記の決算説明会資料がリンク切れになっているので、IRニュースの一覧から改めて確認しました。最新の平成25年3月期第2四半期資料によると、「掲載タイトル数は153,354冊(2012年9月末現在)」とのことです。2011年9月に洋書の取り扱いを中止して減った模様(追記ここまで)
どういうジャンルが載っているのかをチェックしようとして、「紀伊國屋書店BookWeb」とジャンル分類方法が同じことに気が付きました。会社沿革を確認すると、こんなことが書いてあります。
2004.12 大手書籍販売店「紀伊國屋書店」へ「eBookBank」を導入。同書店のサイトで電子書籍を販売開始
どうやら「紀伊國屋書店BookWeb」の電子書籍は、「電子書店パピレス」から提供されているようですね。ただ、若干数に違いがあるので、そっくりそのまま同じというわけではないようです。
また、スマートフォン・タブレット端末(以下スマートフォン)向けの対応は昨年11月に始まったばかりで、開始時はビジネス書・実用書を中心とした約3,000冊というラインナップだったようです。EPUB形式の電子書籍だけを、スマートフォン向けに提供しているようですね。少し検索してみましたが、こちらはまだジャンルにもかなり偏りがあるようです。
大ジャンル | 中ジャンル | パソコン | スマホ |
小説・ノンフィクション | 文芸 | 1459 | 78 |
SF・ファンタジー小説 | 1,313 | 18 | |
ミステリ小説 | 822 | 49 | |
歴史・時代小説 | 726 | 112 | |
恋愛小説 | 1,532 | 886 | |
映像化作品 | 617 | 7 | |
ホラー | 427 | 118 | |
ライトノベル | 1,925 | 71 | |
ボーイズラブ小説 | 3,724 | 2045 | |
ノンフィクション | 1,447 | 125 | |
ハーレクイン | 2,892 | 2119 | |
漫画 | 少年漫画 | 992 | 0 |
青年まんが | 1,650 | 0 | |
少女漫画 | 559 | 0 | |
ティーンズラブコミック | 501 | 0 | |
レディースコミック | 434 | 0 | |
ボーイズラブ漫画 | 765 | 0 | |
ハーレクイン | 1,909 | 0 | |
一般向け漫画 | 2,110 | 3 | |
趣味・生活・雑誌 | エンターテイメント | 635 | 153 |
恋愛実用 | 716 | 302 | |
趣味 | 1,556 | 42 | |
生き方・教養 | 795 | 254 | |
雑学 | 1,050 | 453 | |
生活 | 858 | 174 | |
雑誌 | 2,970 | 10 | |
ビジネス・教育 | ビジネス・政治・経済 | 1,364 | 171 |
語学・資格 | 1,165 | 87 | |
教育 | 191 | 22 | |
人文・科学 | 352 | 26 | |
写真集 | グラビア | 6,130 | 0 |
アート | 136 | 19 | |
グラビア動画 | 1,210 | 0 | |
音声・動画 | オーディオブック | 808 | 0 |
動画 | 726 | 0 | |
マルチメディア | 201 | 0 | |
ゲーム | 60 | 0 | |
壁紙 | 296 | 0 | |
スクリーンセーバー | 43 | 0 | |
アダルト | 官能小説(R指定) | 1,279 | 0 |
動画(R指定) | 771 | 0 | |
写真集・画集(R指定) | 7,702 | 0 | |
漫画(R指定) | 3,210 | 0 | |
マルチメディア(R指定) | 415 | 0 | |
ノンフィクション・実用(R指定) | 232 | 0 |
(※2012年4月9日時点)
いわゆる男性向け・女性向けの恋愛・エロ方面が強いなーという印象です。スマートフォン版は漫画がほぼゼロ、一般的な小説もかなり少ないというのが残念なところ。スマートフォン版の漫画を試し読みしてみたんですが、容量が大きいのか、ダウンロードにかなり時間がかかりますね。この辺りがネックなんでしょうか?
読みたい本を簡単に探せるか?
サイトのレイアウトは、今までレビューしてきたところとほぼ同じで、左にジャンル、真ん中に特集やお知らせ、右にランキングという形です。
サイトの動作は非常に軽くて早いです。また、「紀伊國屋書店BookWeb」のレビューで指摘させて頂いたライトノベルのジャンルが文庫名で、しかも4つしか載っていない件は、「電子書店パピレス」では問題ありませんでした。
このように、大ジャンル・中ジャンル・小ジャンルがキレイにマスター化されており、プルダウンから簡単に絞り込めるようになっています。非常に快適。
もちろん試し読みにも対応しています。試し読みは、会員登録不要です。XMDFや.bookなど一部の形式は専用ビューワーをインストールしておく必要がありますが、通常はブラウザ上だけで閲覧できる(スマートフォンも)という簡便さは嬉しいところです。
書籍の詳細ページはこんな感じです。
本の概要や目次、著者情報や、関連書籍はもちろんのこと、レビューや評価、ソーシャルネットワークサービスによる共有にも対応しています。+1に対応して下さい。
残念ポイントは、紙の本の価格が判らないことと、まとめ買いに対応していない辺りでしょうか。
[4/10追記]
キーワード検索にはサジェスト機能が付いていません。残念ポイントに追加。
簡単に買えるか?
例によって事前に会員登録が必要です。「電子貸本Renta!」と同時登録できるのは救い。サイトの右上から「無料登録」をクリックし、メールアドレス・パスワード・ニックネームを入力して会員規約に同意すると、メールに登録キーが送られます。メールのURLをクリックするか、登録キーをコピペすれば登録完了です。
支払い方法はクレジットカード(VISA・Master・JCB・アメックス・ダイナース)、docomoコンテンツ決済、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払い、Yahoo!ウォレット、WebMoney(.BOOKとXMDF形式を除く)、ニフティ決済、BIGLOBE決済、OCNぺイオン決済、So-net決済、楽天銀行決済から選べます(なぜかパソコン版のヘルプにはdocomoが載っていませんが、スマートフォン版には載っています)。これだけ多くの決済に対応しているのは、素晴らしいですね。
少しユニークなのは、クレジットカード情報は1度入力すると、一定期間は再入力しなくて済むようになっています。
2回目以降に買うときカード番号を入れないで買えるのはなぜですか?
決済会社の提供する『再取引きサービス』を使用しています。『再取引きサービス』とは、決済時にクレジットカード会社より発行される『取引番号』を使用することで、一定期限内に限り、同一店舗からのみ、カード情報を使用せずに決済が行える決済システムです。
一定期間というのがどのくらいかは判りませんが、面白い仕組みですね。
いつでもどこでも簡単に読めるか?
MEDUSA(EPUB)形式はクラウド型コンテンツ配信モデルになっているので、通信が入る場所ならどこでも見られるようになっています。ただし前述の通り、スマートフォンはEPUB形式しか対応していません。どこまで読んだか?という情報を保存・同期するようにもなっていないようです。
ファイルをダウンロードするタイプの場合、ファイルの種類によって利用可能な範囲が異なります。bookend形式(主にコミックや写真集で使用されている)は利用端末は2台に制限されており、スマートフォンにも対応していません。XMDF形式はWindowsパソコンのみ、.book形式はWindowsパソコンとMacOSX(10.5以上)に対応で、ヘルプに記載が無いのですが、ダウンロードした端末でのみ読める形になっていると思われます。
ファイルフォーマットがいろいろあるので、利用できる範囲がどこまでかというのを把握するのがややこしいですね。ちなみに複数のファイル形式が用意されている書籍で「購入する」ボタンを押すと、このような選択画面が表示されます。
自分が持っている端末がどれ、というのさえ把握しておけば、さほど迷わずには済みそうです。
いつまでも保管できるか?
ヘルプの「ダウンロードに関するご質問」のところはこんな記述になっています。
ダウンロードしたファイルがなくなっちゃったり、パソコンが壊れちゃったり、パソコンを買い換えたりした時、書籍をもう一度ダウンロードできるの?
弊社では、デジタルコンテンツを取り扱っておりますので、商品の性質上一度ダウンロードいただきました商品に関しましては、お客様の管理に委ねられます。弊社では、ダウンロード後の商品の保証は原則としていたしかねますので、あらかじめご了承ください。重要なファイルは、バックアップをお取りくださいますようお願い申し上げます。また、パソコンを買い換えられる場合も、購入履歴から無料でダウンロードしなおすことができますが、サポートは1年間となっております。ファイルの移動などはお客様のご負担でお願い申し上げます。
「サポートは1年間」という記述がわかりづらいなーと思って電話で問い合わせてみたんですが、ファイル形式問わず、再ダウンロードにはとくに期限は設定されていないそうです。「サポート」というのは、誤植などがあった時にデータの差し替えといった対応が1年間という意味とのことです。
つまり、購入した電子書籍は会員情報の「購入履歴」からいつでも何度でも無料でダウンロードしなおすことができるということです。これは「紀伊國屋書店BookWeb」と同様、ユーザーにとっては非常に利便性が高い形ですね。
結論
パソコンで利用するには非常にいいサービスなのですが、スマートフォン対応が始まったばかりでラインナップが弱いのが惜しい。スマートフォン版は、今年中に1万冊を目標にしているそうです。