2012年7月7日に東京ビッグサイトで行われた東京国際ブックフェアシンポジウム「電子書籍時代に出版社は必要か?」のテキスト起こしです。eBook USERに掲載されている内容とだいたい同じです。写真は自分が撮ったものだけを使用しています。90分の予定を若干超過した内容をそのまま書き起こしているので、4万字超あります。翌日書いたレポートはこちら。
なお、こちらの内容は「講演の著作物」なので、ご登壇者の方々には掲載許可をいただいた上、文言チェックもして頂いてます。赤松健さん、植村八潮さん、岡田斗司夫さん、三田誠広さん、そして仲介して頂いた福井健策さん、ITmedia eBookUSERの西尾泰三さん、本当にありがとうございます。ボクの著作物ではないので、クリエイティブ・コモンズの対象外です。転載禁止とさせて頂きますのでご了承下さい。
電子書籍と権利問題について、これまでの歴史
福井: おはようございます。
(おはようございます)
福井: 皆さん、業界的には朝早くから、大変ご苦労様でございます。
(場内笑い)
福井: 本日はですね、これは急遽加えましたシンポジウムで、国際ブックフェアのチラシには載っていないんですけども、「電子書籍時代に出版社は必要か?―『創造のサイクル』と『出版者の権利』をめぐって」という、タイトル自体が何か論点になりそうな、そういうシンポジウムこれを行いたいと思います。
私、司会を務めさせて頂きます弁護士の福井でございます。よろしくお願いいたします。
(拍手)
福井: さっそく登壇者、パネラーの方々をご紹介させて頂きます。向かってみなさんの左側から、漫画家で株式会社Jコミ代表取締役社長、赤松健さん。
赤松: よろしくお願いします。
(拍手)
福井: 専修大学教授、株式会社出版デジタル機構会長、植村八潮さん。
植村: よろしくお願いします。
(拍手)
福井: そして、著述家でFREEex代表、岡田斗司夫さん。
岡田: よろしくお願いします。
(拍手)
福井: 日本文藝家協会副理事長、三田誠広さん。
三田: よろしくお願いします。
(拍手)
福井: それではね、時間が90分しかございません。先程も打ち合わせでね「どう考えても1人90分いるだろう!」と……
(場内笑い)
福井: 言われていますので、時間押し必至でございますので、早速内容の方に入らせて頂きます。まず私から冒頭の状況説明ということで、パネルの方をご覧になって下さい。
最初に電子書籍と権利問題について、これまでの歴史を簡単に見てもらいたいと思うんです。
今日は出版社の権利の話も出てくるのですが、そうすると必ず登場するのが、この「著作権審議会第8小委員会報告書」。時期が“太古”と書いてある。もう20年以上前ですね。電子の世界ではもう太古の世界と言ってもいいんじゃないかと思いますが、このときに「出版社に権利を認めてもいいんじゃないか?」という議論がされたことが、しばしば引き合いに出されます。
その後、2000年、この辺までは有史以前といったところですかね。「電子文庫パブリ」サービスインなどありますね。ここには出ていませんが、2008年10月に、GoogleBooksの和解案公表という大きな1つの波もありました。その間、kindleショックのような話もあるんですが、2009年だと国会図書館で資料のデジタル化に予算127億円を計上という、日本では従来なかった動きも出てきていますね。
何といっても“電子書籍元年”と言えるのはここから2010年にかけてでしょう。電子書籍出版社協会、いわゆる電書協が発足したり、Apple iPadの国内販売開始、あるいは電流協(電子出版制作・流通協議会)の発足、SONY Reader、シャープGALAPAGOSと、さまざまな動きが登場してきます。
その後、楽天がkobo社の買収を発表したり、今年に入りますと、文科省で「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」の報告書というものが出てきました。この中で、出版社の権利については、導入すべきかどうかこれは両論併記だ、というようなことが記載され、さらに4月、植村さんが会長を務められている、出版デジタル機構設立、というようなことがありましたね。
そして2012年6月、つい先日ですけども著作権法の改正。これ、別のところではあまりにも有名になった著作権法改正ですが、実を言うと電子書籍にとっても大きな改正がありました。国会図書館はデジタル化した資料のうち絶版資料、市場で入手が困難な資料については、全国の図書館に配信することができるよ、そこで閲覧・プリントアウトまで部分的にさせることができるよというような改正も含まれているんです。
そして、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」という、元・文部科学大臣である中川正春さんの通称「中川勉強会」、この中間報告書が公表されました。後ほどご紹介しますが、この中では出版社の隣接権というものを導入することが必要ではないかということが記載されています。
ハードウェアに目をやれば、AmazonのKindleが近日発売を発表し、Koboはいよいよ今月国内サービス開始とされております。
一言で言うならば、日本でも官民、あるいは国内外、あるいはハード・ソフト、さまざまな分野で、電子書籍化あるいは電子出版化に向けた動きが急だと言えようかと思います。
こうした中で、「出版社中抜き論」というものが出てきました。先ほどお話ししたように、2008年にGoogleBooksの和解が公表されました。これはかいつまんで言うと、「世の中のあらゆる書籍をデジタル化して、これをネットを通じて人々がアクセスできるようにしよう」というもので、そのときに、権利者がNoと言ったらそれはリストから落としますよと、でも権利者がNoと言わない限りは、それは配信しますよと。こういう和解案、裁判所お墨付きのビジネス案がアメリカ発で出てきたわけです。
そのことの是非で国内が非常に揺れたのも記憶に新しいわけですが、もう1つ、出版社あるいは日本の出版界がハタと困ったことがあります。というのは、権利者がNoと言ったらとあるが、じゃあ出版社は電子出版についてどんな権利を持っているの? ということが改めて疑問として浮上したわけです。
ちょっとこれは曖昧なところがある。というのは、日本の著作権法には「出版権」という言葉がありますが、この出版権はほぼ紙にしか及ばない。少なくとも配信型の電子出版には及ばない権利と理解されているわけです。電子出版について出版社には何の権利もないように見える。
つまり、作家が、実名挙げて申し訳ないですけど例えばAmazonと話をつけてしまえば、例えばまだ新刊本であれ、同じ書籍について作家とAmazon間で電子出版できちゃうのかと。出版社要らなくなるの? という議論ですね。これがいわゆる「出版社中抜き論」です。
この「出版社中抜き論」、いろいろな意味で理解されるんですけども、これが当初の意味の「中抜き論」です。出版社を抜いちゃう。飛ばしちゃえ、と。で、そりゃ困るだろうと。「それをされたら出版社は収入源が奪われるわけだから、疲弊してしまうじゃないか」という意見と、「いや疲弊してもいいじゃないか、出版社要らないんじゃない?」という意見と、両方出てきたわけです。そこで問われたのが、「出版社って不要になっちゃうの?」ということです。
こうした中で、なぜ出版社の疲弊が心配されるかというと、コンテンツ産業はこの10年以上、ほぼ一貫して縮小を続けているんですね(中略:下表参照)。
産業界 | 市場推移 | |||
出版・雑誌 | 1998年 | 2兆5415億円 | 2010年 | 1兆8748億円 |
新聞 | 2000年 | 2兆1851億円 | 2009年 | 1兆6605億円 |
音楽レコード | 1998年 | 6075億円 | 2010年 | 1976億円 |
有料音楽配信 | 2005年 | 342.8億円 | 2010年 | 860億円 |
TV放送・関連サービス | 2004年 | 3兆5171億円 | 2009年 | 3兆3473億円 |
(内、民放地上波) | 2004年 | 2兆2092億円 | 2009年 | 1兆8311億円 |
映像ソフト | 2004年 | 3754億円 | 2009年 | 2740億円 |
ライブイベント | 2001年 | 9220億円 | 2008年 | 9693億円 |
縮小を続けるコンテンツ産業(デジタルコンテンツ白書、ぴあエンタテインメント白書による)
出版・雑誌も落ちている。2兆5000億円から20%以上、もう20数パーセントのシュリンクです。1兆9000億円切りました。落ち幅が大きいのは雑誌です。
でこれ、デジタル・ネット化の中で起こったことだという指摘がやはり強い。いわゆる海賊版に(市場を)食われたということだけじゃなく、フリーの情報がネット・デジタル化の中で非常に増えているからですよね。無料で見られる情報が非常に増えている、ということの影響があるかなと。
出版社の隣接権要望
福井: こうした中で、出版社はこのまま中抜されてしまったら困る、あるいは、まん延している海賊版に対して出版社が対応できないのは困る、ということから、隣接権の要望が出てきました。先ほどの中川勉強会の最新版の中間報告書案を中心に、それ以前のリリースなんかも参考にしてまとめてみると、こういう権利を求めているわけです。
まず対象は「出版物」で、書籍・雑誌および電子書籍・電子雑誌も含むと。で、何に対して権利が及ぶのかというと、「出版物原版」という言葉が登場して、これに対して権利が及ぶと。出版物原版は要するに、「印刷用の版とかフォーマット済みのデータファイル」と説明されています。あとは印刷するだけになったいわゆる「下版」やフォーマット済みのKindleフォーマットやEPUB、そういうデータファイルの段階。これが、権利の対象だよと。そして、誰に対して権利を与えるのかというと、出版“者”だよ、と。出版者のシャの字、これ誤植じゃありません。この“者”という字が使われています。
……あの、このシンポのネット中継をやることを、実は、わりと最近聞いたものですから、どのくらい最近かというと、開始の5分くらい前なんですけどね、
(会場笑い)
福井: すいません、だから(スライドの)字が小さいです。私の言葉に皆さん注意を研ぎ澄ませてください。で、出版者の“者”の字、“者”という字が書かれているけども、これは誤植じゃないんですね。それは、今のいわゆる出版“社”とは必ずしも限りませんよということです。想定はしているんだろうけど、必ずしもそうだとは限りません。それは、「出版物原版の制作に発意と責任を有する者」という固い言葉が出てくる。
これが何かというと、一般には先ほどの“印刷用の版”とか“フォーマット済みのデータファイル”、要するに「版面」ですよね。はんめん・はんづら。これを作るために、イニシアチブを取って、経済リスクを負担した者と理解されています。それに対して隣接権というモノを与えるよと。
隣接権って何なんだっていうと、与えられる権利として「複製権」「送信可能化権」「譲渡権」「貸与権」があり、このうち電子出版に関わるのは複製権と送信可能化権です。
複製権とは要するに「無断で版面コピーするな」という権利です。版面をコピーするなというのは、版面のコピーのそのまたコピーも含みますから、例えば発行された雑誌をスキャンするとこれで版面コピーです。こういうことを無断でするなという権利ですね。
それからもう1つは、送信可能化権。これは要するに「ネットにアップするな」という権利です。データ配信などはすべてこの権利が関わってくるわけで、電子出版はだいたいこの2つの権利のどちらか、あるいは両方に関わります。つまり、版面――既存のはんづら・はんめん――を利用して電子出版するときには、出版社はNoと言える権利をくださいよと、こういう要望だということになります。
著作権と著作隣接権
福井: それって著作権なの? というと、著作権ではありません。著作権とは、クリエイターに与えられる権利で、出版社が持つケースもまれにありますが、しばしば作家が持ちます。で、作家の持つ著作権と、出版社が要望しているこの隣接権がどう関連するかというと、「お互いがNoと言える権利を持つ」わけです。版面が利用される場合には、お互いがNoと言える権利を持っているから、例えば、作家がどこかの事業者と相談して版面を使った電子出版をやろうとしても、出版社が「版面使うのならやめてください」と言える、こういう権利ですね。
ちなみに、版面を使わないなら出版社の権利は及びませんから、著作物をどう使うかは作家の自由だといえます。これも論点にはなるんですが、ま、そうだよと。期間は出版の翌年から25年間。合わせて、悪用されないような運用のガイドラインを作ろうとか、作家との間で意見の相違が出たときに紛争処理機関を作ろうとか、権利そのものをどこかで集中管理した方がいいんじゃないか、という提案もありますが、これは、後でもしそういう論点になったら触れることにします。
ここで批判が巻き起こります。1つには、出版者って“者”っていう字を書いているとはいえ、ほとんどの出版社に一律でそんな権利与えちゃってもいいの? 出版社っていってもいろいろなんだけど? と。凄くたくさん貢献している出版社もいれば、そうじゃない出版社もいるんじゃないの? という批判も出てきた。あるいは、それは契約で対応すればいいんじゃない? 作家と出版社が契約で、電子について取り決めればそれでいいんじゃないの。で、そもそもそういうことをすると、権利が分散してしまって、作品が死蔵されるんじゃないの? という懸念が表明されたこともあります。
これらは時系列を追ってずっと動いてきた論争を部分部分で取り上げて紹介していますから、ひょっとしたら論争の中で、既に半ば解決済みの問題もあるかもしれません。しかし、論争の状況としてはこんなことがあったわけです。
出版社が権利付与を求める目的としてはまず「海賊版対策」。確かにこの権利があれば、出版社は版面を利用した海賊版に対して、自ら原告として訴えを起こすことができる。確かにそうです。これがないと、日本では自ら原告として裁判を起こすのは難しい。あるいは、さっきの「中抜き」に対する危機意識も根底にはあるかもしれない。というような現状です。
えーすいません、私もっと早くこのパート終わらせなきゃいけなかったんですが、ちょっと時間をとってしまいました。ご勘弁ください。これが現状の、ごくかいつまんだ理解になろうかと思います。
出版社は電子書籍の時代に必要か――パネリストはこう考える
福井: さて、ここで、パネリストの皆さんに、オープニングのコメントを頂きたいと思うんですね。まさに本日のテーマ、タイトルである「出版社は電子書籍の時代にあって、必要でしょうか?」について、お座りの順番で宜しいですかね? では、赤松さんからお1人5分ということで、これに関連して「今日はこれを伝えておきたい」といったことがあれば、一緒にお話頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
赤松: 赤松です。よろしくお願いいたします。漫画の場合は、ちょっと特殊な気がするんですよね。「バクマン」あの、終わりましたけど、漫画家が絵コンテ描いて、それを、編集者が直すじゃないですか、これつまんないとか、ここんとこ切ってとか、この女の子もう少しでかくしてとか、もしくは、これ裸にしちゃおうとか。漫画家がパッと書いた思いついたものを、読者のために、読みやすいように、いろいろ変形させるんですよね。これが“直し”。
出版社はこういう直しの能力を持った編集者をいっぱい持ってる。いまはね。そういう直しという能力がある以上は、基本、漫画家あるいは作家としては、編集者・出版社はなくては困るものなんです。
で、もう1つね、新人さんなんですけど、新人さんをもう心構えの段階からこう育てていく、みたいなのもやっぱり編集者の力なんですよね。浦沢直樹先生が長崎(尚志)さんというブレーン持ってますけど、元・編集者ですよね。
フリーでも、まあ、問題は無いんですけど、もしちょっと対立しちゃったりすると他の人に変えることもできるし、出版社の中にそういう優秀な直し能力を持つ編集者がいるんだったら、漫画家としては出版社はなくてはならないものなのかな、と考えています。
Amazonがもし出版社になりたいと思ってるんだったら、編集者、直し能力を持った編集者が必須ですよね。それを集めてるっていううわさ、実際にありますよ。
私は作家としては、「直し能力」「新人育成能力」の2点だけとっても、出版社は必要じゃないか、という意見ではあります。
福井: ……。
赤松: 早いですか?
(会場笑い)
赤松: だって、20分くらいとっちゃったから福井先生が。
(会場笑い)
赤松: 5分で済ますって言ってたでしょ?
(会場笑い)
福井: 私ですね。私ですよね。すいません。えーーーもう、ご協力に大変感謝しつつですね、それでは、植村さんお願いいたします。
植村: はい、植村です。ご存知の方も多いと思いますけど、実は3月まで出版社に務めてましてね、だからここでもバリバリの出版擁護論を喋るって、出版社の皆さん期待しないでくださいね。
まずね、出版社って何なんだろうっていうことを確認しておくと、さっき福井さんが人としての“者”って意味での出版者って、これ凄く大事なポイントだと思っています。僕流の言い方にすると、既存の出版“社”を意識しないってことで今日議論していると思うんです。
だからやっぱり、今ある出版社、ね、経営厳しいからうちを何とかしろよってことに関して僕は全然興味がない。そうではなくて、「出版“者”という役割は必要」だっていう絶対的な立場に立ちます。純粋に、誰の手も借りずに、作品を作って、それが売れる仕組みができるわけがないと思っているので。
作家とかクリエイターを手助けする編集に加えて、もう1つ「セールスプロモーション」ってのが絶対必要だと思ってるの。この組み合わせがなければ、人々にいい作品が届かない。あるいは、いい作品を生み出すメカニズムはない。そして、それについて、汗をかいた人たちは、その汗をかいたことで食えなきゃいけないって思ってるんですよ。
「いや、中抜き論ってあったじゃないか」ってことを言われたら、特にインターネットが登場したときの、要するに「インターネット市民論」みたいなね、ネットさえあれば、誰でもが発言して人々に届けられるってあったけど、そんなの起こってないでしょ?
いや、起こってるって思ってる人は、牧歌的なイメージの中にとどまっているだけで、今、起こってるのはお世話になってるAmazonとか、検索でお世話になってるGoogleとか、音楽で僕もお世話になるけど、Appleとか。確かにそういうのがあって、これ全然ですね、プラットフォーマーによってしかコンテンツは流通していないんですよ。
ネットの上に流通しているのって、確かにチャネルとしてはあるかもしれないけど、その上にプラットフォーマーの存在があるから、膨大なコンテンツが流通しているんだという立場に立てば、「中抜きなんか起こってなくて、むしろ独占が起こっている」と捉えた方がいいと僕は思ってます。
だから、素晴らしいサービスが実現できるわけですよ やっぱりAmazon、本当に多くの本を、早く探せて届けてくれるっていういいサービスをしてる。でも、僕はチャネルの独占は凄く暗い未来が待っていると思う人間だから。
僕は、誰もが発言して誰もがコンテンツが売れて、誰もが自由に参入できる環境の方がとっても好きなのね。小さな出版社とかが、群雄割拠というかいろんな人が「俺もやるよ」っていうような、日本的な出版システムの方が好きなんです。
そして、出版社っていうのは、それはもうさっき赤松さんが言ったとおり。締め切りも何もなくて誰もお尻も叩いてくれなくてね、書けるっていう確信ある人って、いやほとんどいないだろうな。
あと実用書に関して言えば、実用書って本当に出版社によって作られると思ってます。そういう意味でも出版社は必要で、もう1つポイントとして(出版社の)セールスプロモーションも必要だろうなと思ってます。というところでいいでしょうか。
福井: あれ、植村さんももう……よろしいんですか。
植村: もう充分です。はい。今日は時間厳守ですから。福井さん除いて。
赤松: そうそう。誰かがとっちゃったから。
(会場笑い)
福井: あれ、私これちょっと、大変な司会引き受けちゃったとか、最初思ったんですけれども。ひょっとして、私の方が大変な人?
(会場笑い)
福井: はい、ありがとうございます。今のだけでも非常に多くの論点を出して頂いて、この先が楽しみになってきましたけれども、岡田さん、よろしくお願いします。
岡田: はい。僕は赤松先生、植村先生、のどうあるべきか、というよりは僕の今の気持ちです。多分ここにあるフリップは、こういうことを書くためにあるんだと思います。
(会場笑い)
岡田: 「守ってあげたい」出版社に関しては、基本的に僕は撤退戦だと思ってます。これから先すごく厳しくなると思うんですけども、今の気持ちとしてはですね、出版社と書店、そういうようなものが、すっごい厳しくなると思いますので、守ってあげたいと僕は思うし、あとですね、出版に関わる人ではなくて、読者とか。
あと日本で本が好きな人たちは、どちらかというと、「どうやれば安くなるのか」とか「どういうふうにすれば自分たちが有利なのか」ではなくて、長期的な視点で、今の本を読むという文化を守ってあげるには、どうすればいいのか、という方向で考えた方が、多分100年200年のレベルで、僕らに有利になると思うんですね。
なので、今の僕の意見は、「守ってあげたい」です。ただこれは、このシンポジウム開始時の意見ですから、ここから先、話してると、守ってあげたくなくなるかもしれませんので、そこはちょっとお含みください。以上です。
福井: ありがとうございました。えーーーっとね、何か皆さんどんどん短くなってますけれども。そう、フリップはどうぞ自由にお使いください。途中で1回、全員にお書きくださいとお願いするところがあるかもしれませんので、1面だけ空けておいて頂ければ、あとはもう自由にお使い頂ければと思います。それでは、三田さん、よろしくお願いします。
三田: はい。福井先生の最初の説明に出てきました、文化庁の審議会であるとか、中川勉強会という怪しいものがありますけれども、それにも私は参加しておりまして、出版社に隣接権を与えようということをずっと言い続けてきました。
それは何のために言っているのかというと、文芸家協会副理事長として言ってるわけです。三田個人がどう思ってるのかを普段あまり深く考えたことはないんですけれども、皆さんの意見を聞きながらずっと考えてきたんですが、やっぱり出版社は要るだろうと思います。
なぜ要るのかというのをものすごく個人的なことから言います。先月出た私の本であります。「新釈悪霊」という本でありますけれども、作品社というところから出たもので、これはドストエフスキーの「悪霊」を書き直したものというか、原典の前編に当たる部分を書いて、それから、原典そのものを書きなおして、結末をちょっと書き換えたものであります。
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「悪霊」はドストエフスキーの作品の中で一番難解なもので、多くの人が途中で読むのをやめてしまうんですが、これ読むと全部きれいに分かるという凄いものであります。
(会場笑い)
三田: ただ、前編を書いて、後編も書き直したんで、原典の2倍くらいの長さになってしまってるんですね。小説の形なんだけど、私は評論、まあ、あの、謎解きだと思ってます。でも、これ、分厚いんですね。で、4800円です。まあ、5000円近くするわけですね。今大きな本屋さんに行きますと、平積みで置いてもらってます。3冊しか配本されてないと思うんですけれども、3冊でも隣の本より高くなってるんですね。
(会場笑い)
三田: それで、これ5000円の本です。この5000円という定価は、私の印税と出版社の取り分と全部入れて、定価をつけておりますので、まあ、5000円の価値があるものであります。これ2冊で1万円ですね。で、初版何冊刷ったか知らないんですが、2000冊刷ったとしても1000万円かかるわけであります。
でこれ、全然売れなかったら誰が責任を取るのかというと、私は責任取りません。印税も貰うわけですね。この1000万円を誰が出してるかというと、出版社が出しております。本屋さんに平積みになっておりますけれども、誰も買わなかったら返本すればいいんですね。本屋さんはただ本を置いているだけでありますから、責任を取りません。
結局ですね、本を出版するということは、出版社がお金を出して、紙の本に印刷して出してくれるということであります。もし、出版社がなくて、私がワープロで書いたものをネット上にPDFファイルか何かで出すというのは寂しいことであります。
私、原稿を出す段階よりも前、企画の段階で、「ドストエフスキーの主要な作品を解明する評論なんだけれども小説の形になっている」というプランを言いましたら、担当編集者が「そりゃあ面白い。ぜひ出しましょう」と言ってくれるわけですね。この、言ってくれることがモチベーションになります。
口で言うだけではないんです。本を出すということはですね、1000万くらいですね、投資をしなければいけないわけであります。だから、その担当編集者及び出版社がですね、私の作品これ凄いよと認めてくれてお金を出してくれて本屋さんに平積みで置くだけの部数を刷ってくれていることが私の励みになってますし、原稿を見せた段階でね、担当編集者が、「これは私が今まで読んだ本の中で一番面白い」とか嘘でも励ますようなことを言ってくれるわけですね。
そういうふうに、経済的にもギャンブルなのを承知の上で投資をしてくれ、なおかつこれは凄い本だと言って励ましてくれる出版社がなければ、本を書くというような面倒くさいことを持続的にやるのは難しいかな、というふうに思ってます。
世の中に出ている多くの本がですね、そういう出版社の編集者に励まされながら作家が書き、同時に、売れる本でしたら、初版何万部で刷ることによって、出版社が投資することで本が世に出てくるわけであります。テレビやラジオで本を宣伝することはほとんどありません。本屋さんに行ったら、平積みになっているのが何よりの宣伝ですし、これまでも、本というものはそういうことで売れてきたわけであります。
それから、出版社は初版を多めに刷ります。平積みに置かないと売れないからです。だから、書き下ろしで書いても作家は初版部数のお金を頂けるということであります。電子書籍はですね、ネット上に置いても、1つも売れないかもしれないわけですね。初版部数の印税を貰えるというのが一種の契約金に当たりますが、電子書籍の場合は、1冊売れたらいくらあげますよーということだとですね、売れなかったら作家にまったくお金が入ってこないことになります。
そういう意味でも、出版社というものは、身銭を切って作家の書く作品に賭けてくれているわけで、出版社が紙の本を作ってくれるということがなければ、作家が持続的に仕事をすることができなくなるだろうなと思います。
その意味で、紙の本が売れて元をとった後で電子書籍にするのはよいと思いますけれども、紙の本そのものがなくなってしまうことは、日本の文芸文化がそこで終わってしまうことではないかなと考えてます。以上です。
必要なのは「編集の機能」か「出版社という組織体の機能」か
福井: ありがとうございました。何かこーね。いい話満載っていう感じでね。今日はほんとに皆さん冒頭からいい感じで始まってるんですけども、ちょっと困っちゃったのがですね、対立軸無いんじゃないかっていう。
(会場笑い)
福井: え?これだと出版社要らないっていう人が、いないことになりますか? 赤松さんも漫画に限ると言ったけどあった方がいいって、植村さんもそう。で、頼みの綱の岡田さんは、守ってあげたいだし。
岡田: いや、僕は、守ってあげたいのは、守ってあげないと絶滅するくらい無理だと思ってるからです。
福井: あ、無理論ね。
岡田: はい。
福井: よかったー。
赤松: それはでも、みんなそうですよね。今、あの……
(会場笑い)
福井: 二人いましたね。やっぱりこの二人かな?と思ったら二人。はい。
赤松: さっき「バクマン」がどうとか直しがどうって言いましたけど、「バクマン」とかさっき三田先生もおっしゃってたその形ってのは、作家としてわりと古い価値観なんですよ。今若い人たちは、pixivで、無料で描いて、褒めてもらえるだけで十分、もしくは、同人で、編集者の直し無しで、自由に書ける作品をね。しかも、自分プロデュースだから凄い儲かると。こういうので、客が5000人並んでるのを見て、ああ、励みになるなというのが今の若い作家です。
岡田: 赤松先生の、「編集者が必要」というのは判るんですよ。つまり、出版社が必要と言いながら、実は編集者が必要っておっしゃってるだけですよね。
赤松: そう!(笑)
岡田: そこのごまかしが1点と、あともう1つ編集者いなくても、コミケってあるじゃないですか。
赤松: ある。
岡田: ということは、コミケであんなに本出てるんだから、実は編集者いなくてもかなり出るし、編集者がいなかったら書かないようなクズは、もう作家やるなっていうのもアリですよね。
赤松: 確かにコミケは、日にちが決まってるじゃないですか。お盆と年末。だから、そこが締め切りだから、あーやらなくちゃ!ってなるから締め切りあるんですよ。
岡田: じゃあAmazonが、毎月1日じゃないと発売しませんって言ったらもうそれになっちゃいますよね?
赤松: そうそうそうそう。
福井: はいはい、ここに司会いまーす、はい。
岡田: いやいや(笑)もう1つ、いしかわじゅんという漫画家がいて、あいつ常々俺無茶言うなって思ってるんですよ。彼は、編集者要らないっていうんですよ。「俺ね、1回も編集者の言うことなんか聞いたこと無いよ」と。「大学出た若造が、俺の漫画直せるんだ」と言うわけですよ。凄いこと言うわけですよ。で、編集者が打ち合わせしようっていうと、打ち合わせなんかしても無駄だし、やっても聞かないと。こういう漫画家もいると。
赤松: はい。
岡田: 以上3点、どないなもんでしょうか?
福井: 赤松さん、お答え頂きたいことの中にちょっと加えたいのがね、まさにさっきの「守ってあげたい」も含めて、「編集の機能」なのか「出版社という組織体の機能」なのかが、論点でやはり出たと思うんですよね。
じゃあ、編集も要らないという意見の方もいるのか、編集も今後は淘汰されていくだろうという意見の方もいるのか、あるいは、編集はいるけども組織体としての出版社ってのは今の形ではもう淘汰されたり要らなくなったりするんじゃないか、あるいは三田さんは明らかに、投資ということをおっしゃったんで、これは大きな要素だと思うんですけど、組織体としての出版社をかなり重視されてらっしゃると思うんですね。それについてはどう……
三田: 私が言ってるのはね、要するに”太鼓持ち”みたいな人がいてね、「あなたは凄い」といってくれないとモチベーションが上がらないということであります。
(会場笑い)
赤松: これはその通りです。
福井: これは編集者の機能ですね。どっちらかというとね。
赤松: でも漫画の場合はそんなこと言いませんよ。これつまんねーよつまんねーよってって、面白いってことは、客が判断するわけだから、あんまりモチベーションがどうこうってのは……
植村: それは作家のキャラクターの違いなんじゃないですか?
赤松: そうですかね?
岡田: それは赤松さんが言ってもらえないタイプの作家だからかもしんない。
赤松: あ、そうかもしんない(笑)
福井: そうすると、どうですか赤松さん、さっきの岡田さんの質問も含めて、編集者っていうのはやっぱあった方がいいんですか?
赤松: えっとですね……編集
福井: まず漫画に絞るんでいいですけど
赤松: 編集者……私が冒頭に言ったパターンでは直しのためには絶対必要だって言いましたけど、その後、さっき私は、直さないで自由に書くっていうのがね、楽しいっていうのをね、若い人たちが凄い感じてるんですよね。そこんところはね、今まで編集者の直しを受けた漫画がいっぱい出てきてるので、それを読んだ少年少女たちは、それに沿った形で漫画を書くもんだから、あんまり直すところがなくなりつつあると。
福井: ほうほうほうほう。
赤松: いや……全てが面白いわけじゃないんだけど、ほんとにね
福井: あ、面白くないんだそれ。
赤松: 面白くない、と、面白いのもあるんですけど、昔よりかはね、上がってるんです。絵もそうです。絵柄に関しても、凄いこうみんな研究して練習するもんだから、昔よりは上手いです。そこんところがあって……
岡田: じゃああれですよね、編集のルールというか、売れる漫画のルールというのが何か知ってる漫画家と、大学を出て一応出版社に入って編集部に所属されたんだけどよく判んない編集者だったら、明らかに前者の方がいいわけですよね。
赤松: まあそうです。
植村: ただその時に、そういった、楽しみのために書いてる人たちは食えるんですか?
赤松: 仕事は別に持ってます。
植村: でしょ?
赤松: そうです。
植村: 僕はやっぱり、ちゃんとその……
赤松: いや、それがね、「プロになんなきゃいけない」っていう概念がもう古いんです。
植村: うーん……。
(会場笑い)
植村: じゃあ逆にね、その別にもっている仕事ではプロじゃないですか。
赤松: そう。
植村: 僕は、自分の汗をかいたことに対して対価を得るのをプロって呼ぶんだと思うの。
岡田: いや、植村さん、これあの、汗かいた人が報われるべきだってのは僕も思うんですけども、電子出版の時代になっちゃうと、作家や漫画家は書くために汗かきますけども、それを版面整えたりすることに関しての汗かき量って激減しますよね?
植村: うん、激減するでしょうね。
岡田: じゃあ、出版社の人たちの収入も激減して当然ですよね。その汗かいた分だけ報われればいいのであれば。
植村: うん、いやだから、ビジネスのメカニズムが変わるのは当たり前で、よく言われるけど、ブリタニカが全盛のときに、営業マンが世界中で2万人だっけ? で、Wikipediaはボランティアを除けば、今30人か40人でやってるよね。メカニズムが変わるのは当たり前だと思うんです。
そのときに役割分担によって、新たなビジネスが生まれたり新たな役割ができるから、もしかすると働く人はGoogleとか別のところに移ってるだけだから。それは全然いいと思ってるの。ただ、やっぱそこにおける役割で、汗かいた対価が得るっていうメカニズムが働いてかないと、社会って成立しないじゃん。
たとえばフリーソフトってあるでしょ。俺は凄いプログラム作ったからフリーでばら撒くっていうけど、それは、見方を変えればプログラムっていうビジネスモデルを壊してますよね? で、その人たちは何で食ってるんだって。
いや俺は実家のさ、例えば何かラーメン屋継いでっから俺はそれでいいんだって言うとしたら、じゃあ隣で僕がタダでラーメン屋やっていいのかって。僕がプログラム売って儲けて、それでラーメン屋の隣でタダで開くよって。それ社会システムが崩れていっちゃうと思うの。僕、一番いいのはやっぱり、汗かいたことでお金を得るっていうのは、今後とも続くだろうなって立場だから。
(植村注:もちろんフリーソフトウェアの運動は尊敬していますし、ボランティアは人として必須だと思っています。念のため。)
福井: もう、議論がいきなりボトムのところまで下がったというね。
植村: あ、すいません(笑)
福井: いやいや、それでいいんですよ。恐らく、これを解決しないで、本当は出版社の要否の話をしてもしょうがないんだろうなと思う。悩ましいのは、この議論だけ90分やっちゃうと、出版社の要否に話がいかないで終わっちゃう気がするんですよね。まさに岡田さんとの対談でさせて頂いた、コンテンツでのマネタイズは可能なのか、あるいは、望ましいのかという話に関わるんでね。
いかがですか? それを踏まえながら、さっき編集の要否に行って、それ自体賛否があったけど、そうすると、組織体としての、投資を行う主体としての出版社は、要らない論のほうがむしろ強いんですか?
岡田: あと三田先生がおっしゃったような、紙という媒体を残すべきであると、で、電子出版というものがあっても紙の本を先に売ってから、それが終わってから電子出版だったらありだけどっていうふうに三田先生おっしゃいましたよね。つまり、「紙が主で電子は従である」と。
出版文化というのはあくまで紙を主体にして考えたい、だからこそ出版社というもの、っていう論だったと思うんですよ。電子出版の時代ってのはその認識でまだOKなのかどうかっていうのが僕よく分からないんですけれども。
植村: 後ろから言っちゃいますけど、僕は当面それでOKだと思います。
岡田: はい、はい。
植村: だから、出版デジタル機構の当面の仕事は、100万冊ってのは、既に紙の本として出たものの電子化。そしてほとんど今、マスコミとか皆さん方が、この電子出版……あ、昨日までやってたっけ?電子出版EXPOで言っている電子書籍って、全部紙の本で出たものの電子化。で、なんで日本で電子出版ダメなんだってよくのたまうITジャーナリストってこの会場にはいないと思うけど、で、その人たちはね、まだ……
福井: どうしてそういう不規則発言を(笑)
植村: ごめんなさい(笑)
福井: 不規則発言する時にはこう何か……
岡田: たぶんいまニコ生で、おもしろーいコメントかなり流れてると思いますよ(笑)
福井: あああの白い感じのね(笑)
植村: あの、盛り上げなきゃいけないかな、と(笑)
(会場笑い)
植村: 例えば有名な作家の作品を電子書籍にしなきゃいけないんだという言い方をしている前提としては、紙の本があるっていう議論ですよね。だから、当面は続く。ただし、そこから先は、僕はボーンデジタル派だからさ。だって、新しい表現を手にしたのに、1回紙にするっていうメカニズムを通る必要はないよね。
ただし、今、編集っていうシステム、セールスプロモーションっていうシステムも、あるいは作家とのやり取りも、1回紙の本を作るとこで、しっかり凄くいいものができてると思うんです。それは当面続くだろうな、って。これが急に衰えることは、僕は困る。やっぱこれはしっかり維持したい。当面守ってあげたい。
福井: つまり、急激な変化に対する異論であって、それが次第にボーンデジタル化していくとか、電子が大きな流れになっていくことに対する異論じゃないってことですね。
植村: 逆に言うとそれはウェルカムで、そのことでもっと面白いビジネスが生まれるだろうなって期待はしている。
福井: うん、うん。岡田さんのさっきのご質問ってのは、電子が主体になっていけば、投資ってあんま要らないんじゃないのって点に繋がるんでしょ?
岡田: そうです。汗を流した人間が報われるべきだってのは僕もそうだと思うんですけども、出版社がこれから先、汗をかく要素がどんどん電子化されればされるほど無くなってしまう。ということは、出版社に対しての報われ方ってのは、これまでの100分の1、1000分の1で当然であると。
赤松: それ、給料?人数?
岡田: 給料と人数、両方です。
赤松: うわあ(笑)
岡田: はい。なので僕の「守ってあげたい」というのは、これから出版社は、100人を超える出版社なんていうくだらない馬鹿げたものは無くなっていくだろうと。
福井: それ、何年くらいで起こるんですか?
岡田: 5年。
福井: ……短かったぁ。5年だ……。
岡田: だって、今のKoboの7000円も、高すぎますよ。あれはたぶん、本が1000冊くらい入って1000円くらいになるべきだと思うし、ディアゴスティーニみたいに本屋さんで、もう中に、1000冊分本入ってますよ1000円ですよ言ってる、タダみたいな状態で売られるものが3年以内だと僕は思ってるんですね。
植村: でもそれはね、やっぱ、紙の本で1回対価を回収した本の二次利用だから、いいんだっていうことですよ。
岡田: そんなのできるのはで100年前とかの本じゃないですか。それを紙の本だから対価の二次利用っていうふうに、紙の本に恩返ししなきゃいけないっていうふうなものを言うのはちょっとフェアではないと思う。
植村: というか、1回紙の本で、逆に言うとモトとってるから、後は100円でも10円でもいいんです、っていうふうに思ってるだけです。
福井: 植村さんおっしゃってるのはたぶん、そういうもう1回生まれちゃった本の二次利用はいくらでも価格破壊簡単だろうけど、人が読んで楽しい本をゼロから作るのに、そんなに安い投資でできますか?っていうさっきの議論に……
岡田: いや、それで流通が1度起きてしまったら、じゃあ、僕が18歳の高校生だったとします。で、自分が小説家になりたいと思います。で、今日の議論みたいなものを聞いて、紙の本で出したいかっていったら、微妙だと思うんですよ。
初っぱなからデジタルでやった方が、いろんな権利盗られなくてすむし、編集者にあれこれ言われなくてすむし、売れるか売れないかは自己責任なんだなということは、俺が1晩か2晩もしくは10日間とか1ヶ月徹夜して書きさえすれば、あと全部俺の好きにできる方がいいじゃんっていうふうに、たぶんこっから先の中学生高校生、かなり思うと思うんですね。
赤松: そうですよね。
福井: やっぱその「中抜き論」ですね。まさにね。出版社なしで、新しく、植村さんがおっしゃった書籍の二次利用じゃなくて、ボーンデジタルなものでもゼロから作っていく動きが増えていくだろうと。
岡田: 僕らみたいに家に本棚があって、本が並んでいて、それを見て快感だったり、買えなかった思い出があったり、バイトして一生懸命買った人たちってのは、ファーストクラスの上客だと思うんですよ。いわゆる出版界の。で、ファーストクラスでアメリカまで行くのに50万も払う人は、その快適さを知っているからですよね。でもそれを知らない人はどんどんどんどんローコスト航空でいいというのと同じように。
福井: 三田さん、いかがですかね。いま、言ってみればすごく低コストで、ボーンデジタルな作品生めちゃうんじゃないかっていう指摘が出ましたけども、それについて。5年という期間とも非常に関わると思うんですよね。5年なのか50年なのかで大違いだから。いかがですかね?
三田: いまね、あらゆるジャンルで素人の作品が流通するということがあります。音楽だって、自分でギター弾いて歌ってるのをビデオに撮ってネットに上げればいいわけですね。でそれはヒットすることもあるわけです。
多くの人がネット上で素人の作品を見て、そこから面白いものが出てくる可能性はあると思います。でもね、例えばケータイ小説というモノの中のいくつかですね、それを読んだ人たちが、これを紙の本にしてくれと。主に女子中学生であります。で、そういう要望があまりに強いので出版したらベストセラーになると、いうこともあるわけですね。
紙の本というのは実は、ステータスなんです。飛行機のファーストクラスに乗るというのがステータスであるとするとですね、お金が無いからビジネスに乗ってる人がですね、もう飛行機は全部ビジネスでいいやと言ってるのと同じでですね、紙の本を出せない人が、これからはネットだけでいいんじゃないかと、いう議論だろうと思います。
私は必ずしも全ての本が紙でなければいけないと言うつもりはありませんが、ネット上で先に出たものでも、それが本当に優れたものであれば、紙の本で持っていたいというのはですね、中学生でもそう思っているだろうと思います。
もう1つ言えば、五木寛之さんの「親鸞」という本の前巻をネットでタダで配布して、下巻を売ろうというコンセプトなのかな、ということをやってみたら、上巻も売れたという話があります。下巻だけ紙の本を買って自分の本棚に置いておく馬鹿はいないんですね。やっぱりね、上下並んでないとね紙の本は価値が無いんですね。
私はネット上に出すものってのは、一種のプロモーションビデオみたいなね、本のプロモーションのためにネット上に短期間載せておいて、読んで良かったら紙の本を買って下さいというような形もこれからも起こってくるだろうなと思います。
今、実は文芸誌がですね長編小説を連載しておいて、完成したら紙の本を買うと、いうのと同じようにですね、雑誌がやっているようなことがこれから電子書籍という形で発展していくかなと。でも最後はね、やっぱり紙の本に、これにすると。で、読者もね、やっぱりこれを買うと。これを買ってですね、本棚に置いてあるということがですね、読まなくていいんですよ、買うだけでいいんです。
(会場笑い)
三田: この凄い本を、俺は買ったんだという、なんか凄い人になったようなね、気分になる。
海賊版、価格破壊、フリー化をどう評価し、収益モデルはどう変わるか
福井: いや、今の話は実は岡田さんとの対談の話にも繋がる非常に面白い論点で、で、紙の役割は終わらないという議論、もっと続けていたいんですけども、ちょっとここで目先を変えてみたいと思うんですね。ただし、今のに繋がります。
デジタルでの流通が増えていって、そこで掛かるコストは低下していくっていう議論が出てきた。そうなれば回収すべきコストも少ないはず、そうすると出版社の役割も変わってくるんじゃないですか、という議論が出てきました。
その中にあって、海賊版が、今よく問題視されます。海賊版流通、増えてるか減ってるか、かなり議論はあるんだけども、まだまだ音楽だけでも十億ファイル単位で流通していることは指摘されている。また、他方では価格破壊がだいぶ起こってきてますよね。物の値段、確かに、どんどん下がってきているという傾向がある。こういうことに対して、どう評価しますか?
なぜかというと、それが、書籍なりあるいは電子であれ、本の収益モデルに影響するでしょ?で、収益モデルが変われば、当然必要・不要論って変わってくると思うんです。それをお伺いしたい。
で、話題提供でご覧いただくとね、音楽CDではデジタルの登場で価格破壊が相当起こったと言われてるんですよね。ご覧いただいてるのはレディー・ガガの最新アルバムがいま、国内外で幾らくらいで売られてるかっていう数字なんですけども、今ご覧いただいているのは日本のアマゾンです。
一番下に出てるのが国内盤の「Born This Way」ですね。この価格が、定価2500円だけども2170円と。2000円強で売られてるんです(※注:シンポジウム当時)。
で、海外のAmazonでどのくらいで売られてるかというと、まずそもそもオーディオCD自体が11ドル88セントで、今の為替だと1000円を切ります。900円台ですよね。だからこれでもう半額以下なんだけど、検索すると必ずデジタルが同時にヒットして表示されるんですよ。すぐ下をご覧頂くと、MP3版のダウンロード、要するに電子配信が出てきて、7ドル99セントなんですよね。もう600円台です。
国内外で言うと、4分の1くらい、3.5分の1くらいかな? 価格が低いことになります。電子書籍だと、ペーパーバックや文庫の存在とか、まあいろいろあるので簡単には言えないですが、電子書籍でもこういう価格破壊はデジタル化の中でどんどん起こっていくかもしれませんね。
究極の価格破壊と言えるのは、海賊版が無料で流通してる状況なんですけども、この海賊版や、あるいは価格破壊、フリー化をどう評価し、収益モデルはどう変わっていくでしょうか?どなたか。はい、植村さん。
植村: まず海賊版について言えば、それは絶対に認めない。僕は模倣は凄く認めるし、そもそも私たちの文化発展って模倣の連続だから、素晴らしい作品を一生懸命真似るってのはもう絶対認めるから、個人がやっても凄くいいと思うんですけど、海賊版を認めないのはフリーライドしてそれで食ってるから。
他人の作品をタダで利用して、それで食うってことを絶対に許さないっていうことです。だから海賊版と、例えば模倣とか、あと価格破壊の話はまた別で、価格破壊ってのは売り手が決めた値段が下がってくんだったらそれは合意だもん。
福井: そう、別の問題ですよね。
植村: 別の問題だと思いますよ。でも海賊版は許さない。ただ歴史的にずっと海賊版ってのが、まるでずーっと続いててまるで無くならないってことも認めるから、今後ともあるだろうなってとは思います。
福井: はい。いかがでしょう、どちらの論点でも構いません。
岡田: 海賊版ってヒトコトで言うとですね、混乱しちゃうんですけど、2種類あると思います。1つは「安い海賊版」、もう1つは「タダの海賊版」。で、安い、というのは、誰かが儲けようとしているわけですね。だから今、植村先生がおっしゃってたように、不当な利益を得ようと安く売ってる問題があると。
これは考え方があって、不当な利益だからけしからんという考え方と、正当な価格が間違ってる場合、ですね。つまり、海賊版の料金が本来正しいのに、無茶な価格をメーカーが付けてるから、あるべき価格に落ちつつあるんじゃないかと。「だって海賊版見てみろよ、その価格でできてるじゃねーか」って考え方もあります。
でもそれは、「正規版がちゃんと流通して、正規版をちゃんと作ってくれてそこで資金出してるからだ」という言い方もあると思うんですけども、でも海賊版が出るほど売れてるものなら、資金のリクープ、実はほぼ終わってますよね、と言えなくもない。
映画業界は例外だと思うんですよ。映画業界って、作るのに100億円くらい掛かるから、海賊版とか認めちゃったらなかなか資金のリクープができないと思うんですけども。海賊版の悩ましいのは、この、安いというのに関して、いつも消費者の視点で言われるのが、じゃあその価格が正当なものなのか。
何で日本でアニメがあんなに高くて、僕あのー好きなアニメとかが、あと怪獣映画とかがですね、東宝とかバンダイとかが出してるのが、メーカー名、言っちゃいましたけども……しまったぁ。
福井: いやNHKじゃないから(笑)
岡田: あーそうですか。いえ、いえいえ、もうあそことは仕事が無くなるな、と。
福井: いやいや、もう、どこに引っかかってるんですか(笑)
赤松: これから批判しようとしてたのね(笑)
岡田: で……ああいうところから出してるのってですね、マニアの足元見るような高い値段で出してるのに、海外のクライテリオンとかで出してるの見たらですね、画質それよりいいのに値段が半分とか3分の1くらいなんですね。てことは正規版の値段自体に対する批判的な力を持ってるんじゃないかと、というのが海賊版のやつが1つある。
で、もう1つ、タダのもの。これに関しては誰も儲けようとしてないから、さっき植村先生がおっしゃった、不当な利益を得ようとしてない。
赤松: ちょ、ちょっと待って下さいね。それ全然、ネットで違います。タダであの、音楽とかまあ漫画とかアニメやってるところは、人のものをタダで流しといて、隣にあるアフィリエイトで儲けるっていうシステムです。だから、儲けようとしてます。
福井: あとまあ、ちょっと補足。MegauploadっていうFBIが全世界同時逮捕した、あれ、日本の漫画を手に入れたかったらここに行けっていうほどのアップロードサイトだったけど、誰でも無料でダウンロードできるんだけど、有料会員登録しないと、まともなスピードにならないんですよね。だから、たくさん観たい人は有料会員登録するんです。
赤松: その手ですよね。
福井: で、ぱーっと押収したら、米国の本拠地だけでサーバ1000台あったらしいですけども、現金や高級車で40億円超えてたのかな、そのとき押収されたのが(福井注:起訴状によれば50億円超)。まあかなりやっぱり、ビジネスとしては美味しかったらしいですよ?(笑)
植村: 確認なんだけど、海賊版と言った場合は、他人の著作物なりを断りなく不正に利用しているものをここでは海賊版って言ってるんだよね?
福井: そうです。それに値段付ける付けないは、岡田さんがおっしゃる通りあり得ると思う。
植村: それだったら、悪いことやった奴はダメだよって僕は思います。
岡田: あともう1つ、何でそんな海賊版が起こるのかというと、著作権による許諾が必要だからですよね。これ別に、幾らで売ろうと、その10%を権利者に払えばよい、というような法律が全世界統一でできてしまえば、海賊版問題ってのは自動的に無くなると。
福井: 許諾権を報酬請求権にしちゃって、海賊版問題を解消しようと。
岡田: はい。という考え方もあるので、その、全てのものが、今ある法律になんかこう、縛られたり、それぞれのお国事情で縛られてるから一斉に出ている問題……
植村: でも、いま海賊版をやってる人たちは、そのシステムに移ってもやっぱり報酬払わないですよ。だって払いたくないからやってるわけで。報酬請求権っていう仕組みができあがったときに、その外にまた海賊版が生まれるんだから。
岡田: じゃあたぶんその海賊版と同じ価格で正規版出して、「こちらが正規版です」っていうふうに言えばたぶん正規版の方が売れますよね。
植村: だから、価格破壊ってね、例えばAmazonとかいろんなところがやって、ガンガン下げるメカニズム、僕は凄く素晴らしいと思うんですよ。それによって逆に言うと、僅かなお金をうんと売るっていうのが別にできあがるかもしれないから。
福井: ロングテールですね。
植村: ええ、それは別にいいと思います。ちゃんとした約束の中でやってんだから。おおいに価格破壊して欲しい。ユーザーとしてはね。
赤松: ちょっと、さっきの表の質問なんですけど、CDとか新聞とかって、日本全部で同じ値段で売らなくちゃいけないっていうシステムあったじゃないですか。
福井: 再販制度(※注:再販売価格維持制度)ですね。
赤松: あれは、どうなったんですか?これ。安くしていいんですか? CDとかモノですよね。電子データは再販制度に含まれませんけど、これっていいんですか?
福井: まあAmazonの個別事情の話はやめておくとしても、1つには、ほら上を見ると、輸入盤が入ってくるわけですよ。輸入盤との価格競争って問題が既にあるんですよね。
赤松: 輸入盤……。
福井: これ面白いでしょ、輸入盤が2000円くらいなんですよ。で、本国では1000円以下で売ってるんだけど、輸入盤まだ2000円に保たれてて。
赤松: あーそっかそっか。
福井: でまあちょっとある種の価格競争は既に起こっていると。だから……
植村: あと、再販制度というのはメーカーが設定した価格を小売に守らせるっていうだけだから、別にメーカーがこれ値引いていいよ、って言ったら……
福井: それはその通りです。だから、再販制度があっても、ある種の価格競争圧力を受ければ、値段は多少動きます。ただ、再販制度が取っ払われると、もっと大きく動きます。そういう話かと。
赤松: なるほど。
福井: はい。今ね、海賊版の是非っていうところで出た収益モデルについては、正規版ならいいよと。正規版の価格はどんどん破壊されてもいいよと。そうするとやっぱり、正規版のコンテンツから得られるお金はどんどん下がっていくっていう岡田理論にだいたい皆さん同意ってことになるんですかね? で、それは、今後の作品作りにとっては特に問題ではないっていうことになるんですかね。
岡田: 電子出版に関しては、です。僕が言ってるのは。紙出版に関してはちょっと違います。
福井: うんうん、で、三田さんさっきおっしゃった、電子があっても紙も生き残るだろうと、その紙には投資いるじゃないかっていうところは……
三田: うん、だから電子はまあ、あの、どうでもいいっちゃーどうでもいい。
福井: どうでもよくなっちゃった!?(笑)
(会場笑い)
三田: うん。
福井: シンポのタイトルが(笑)
赤松: いや、あのね、漫画に関してですけど、電子でますます盛んになったジャンルがあります。エロです。
福井: はい。
赤松: 紙の本だと、本棚に飾れないんです、家では。
福井: はい。
赤松: あとね女性がね、男性向けのエロを結構買ってる。ボーイズラブだけじゃなくて。これは新しい客層ですよ。
福井: ちょっと、活き活きしてきましたね!赤松さん(笑)
赤松: 二次創作なんかもそうですけど、新しい仕組みがもしかして作られるかもしれない。その場合はですね、驚いたことに、電子書籍のエロ、1000円とかで売ってるんですね。凄い。で、紙の本がね1000円なんです。普通はちょっと下げるじゃないですか、電子を。自信とか実績の現れなんですけど、そういうやり方もあるんですよね。
福井: 価格破壊とは限らない、と!
赤松: そうなんです!
福井: あーあー。
植村: 現実にね、電子でうまくやって、むしろ高く売ってるっていう例の方が多くて。学術情報の世界だとElsevierとかSpringerはそうですけど、今まで学術情報の貴重なものって、マンスリー、つまり月に1回しかこなかったんですよ。
でも必ず、来月号のネイチャーにこんな凄い論文が載るよっていうアナウンスがあって。僕が学生の時代だと日本はまだシッピング(船便)で届いてたから、読むのが遅れちゃうんで、すごく有名な大先生が、自分の研究テーマでどうしても読みたい論文があるからといって、ハワイ大学まで見に行った話がある。
だけど今どうなっているかというと、さあ、来月号に載るぞ、だけど、電子ジャーナルだったら今日読めるよ、っていって高く売ってるわけです。研究者たちは凄い論文読みたいから、もう毎日のように新しい情報が来るなら高く買うっていうメカニズムですごくうまくいってる。
だから、電子ジャーナルは、紙から電子になって、値段がどんどん上がったんですよ。これはビジネスのやり方ですよね。金融などでも凄く早く情報知りたくてお金出すっていう世界あるじゃないですか。
岡田: じゃあ、例えば、三田先生が小説書かれるときに、編集者がちゃんとチェックしたもの、出版の版面を与えたものというのは遅い本で、もっと早いものは、三田先生の個人的なファンクラブで例えば有料メールマガジンに入っていれば、生原稿のデータが読める。こっちの方が高くなる可能性があるわけですよね。
植村: 新しいモデルとして、面白いですよね、それね。
福井: 今ね、デジタルシュリンクは必ずしも今後も続くとは限らないっていう視点だと思うんですけど、そうすると、ここまでずっと10年以上落ち続けてきた産業規模ですがこのあとひょっとしたら、下げ止まる、あるいは回復するかもしれないっていうことになりますかね? デジタルシュリンクは止まるかもしれない、と。
赤松: いや、あのね、エロがですね……えーっと
福井: うんうんうんうん。
赤松: あははは、エロばっかですいませんけど。
福井: いえいえいえいえ(笑)
赤松: 去年から今年で、(成長が)止まりました。
岡田: 止まった。
赤松: 下げてます、もう。それは、今までガラケーでエロ読んでたんですけど、ガラケーが無くなっちゃったんで、下げてるんです。スマートフォンではエロ読めないんですよ。それAppleと、Androidも実は規制はしてます。
植村: でもそれ、寂しい世界ですよね。
福井: ぶっ何が?!
植村: スマートフォンで見た方がぜんぜん、豊かな文化が、ねえ。
赤松: いやあ、体面が……あのね、ドコモもauも全部、ガラケー時代と同じ、その、コードで規制しますよって言ってるんだけど、昔より厳しくなってます。エロ漫画でエロシーンの行為は3割ぐらいに留めてくれ、というようなことを口頭で言ってる。
植村: だとしたら多分そのエロは、次の(新しい)チャネルを見つけて、販売が始まるから、それを考えた人が僕は勝ちだと思ってる。
赤松: あーでも普通エロ漫画って言ったら8割か9割エロシーンですよ(笑)
植村: でもね、うん……
(会場笑い)
赤松: じゃないと読まないですよ(笑)
出版社への隣接権付与には賛成? 反対?
福井: 深まってますよね議論。すごい深まってますね。ちょっと1回止めましょうか。1回みなさんクールダウンです。
岡田: すいません僕、今の聞いてませんでした。
福井: (笑)本当はこれでどんどん続けたいんです。ただ、時間が90分です。90分に無理があるから、話が中途半端だったねとか、そういう批判、なしってことにしましょうね。ネットの前の皆さんもなしですよ。
岡田: 続きは有料で続けるってのは無いんですか。
福井: 続きは有料で(笑)
岡田: 続きは1人2,000円とるってのをやったらきっと儲かりますよ(笑)
(会場笑い)
福井: ここでね、そういうマネタイズのあり方とか、もう議論が散らかったのは充分承知です。でも今後の収益モデルのさまざまなヒントが出ました。それらは散らかったままでお伺いします。その中で、海賊版対策とか、あるいは収益の確保のために、出版社は隣接権を今求めています。
で、この出版社に隣接権、権利を与える、版面の利用に対してNoと言える権利を与えることに対して、賛成か、反対かをここでは1回お伺いしたいと思います。ここでフリップ皆さん使ってください。賛成反対他何を書いて頂いても結構ですけども、ちょっと、お伺いしたいと思います。
それは、どうしてそう思うのか、権利の内容がどうだったら、その結論は変わるのか、例えば賛成だけどこの結論だったら反対に回るよ、反対だけどこの結論だったら賛成してもいいよ、というものがあれば、それは口頭で補足しください。はい、では三田さんから。
三田: 賛成です。
福井: 賛成、はい、賛成1票。
植村: じゃあ次に続いて、賛成。
福井: 賛成2票。
植村: それだけしか言わなくていい?
福井: いえいえ理由を補足して下さい(笑)
植村: さっき言ったように、僕は制度設計によって、ビジネスとかは守られたり、成長するってのは絶対あると思ってる。歴史を振り返っても。例えば、いろいろ言われるかもしれないけど、日本の取次って機能がもたらした結果によって、僕は世界で最も多くね、人口、国民人口当たりの書店があったり、小さな出版社がある日本の出版文化システムって凄くいいと思ってるの。文化産業システムって。
ただそれが、いまいろいろなところで問題があってほころび出ているかもしれないけど、かつて果たしてきた役割はあって、実は極めて意図的にGHQによって制度が作られたところってありますよね。
僕は、ある種の社会制度ってのは、それは行政がやるか誰がやるか分からないけど必要だと思っていて、当面、そしてさっきも言ったように汗かいたことに対価を得るっていう枠組みを維持するには、やっぱり隣接権って方法がいま一番いい方法だろうなって思ってるってこと。
三田: 私はね、出版社に何か権利をあげるということではないと思うんです。何か問題が生じたときに出版社が責任をもって対応をするということなんで、責任だけ負ってもらうということであります。
福井: あらー(笑)
三田: アメリカなどでは著作権を出版社に預けてしまうんですね。出版社が著作権を持っていますから例えば出版社がAppStoreにアップできるわけですね。
日本の出版社が同じことをしようとしたら、「あなた著作権持ってますか? 持ってませーん」ということでアップできないということがあります。でも作家としてはね、何か怪しいから、著作権は出したくないんですね。だから、隣の権利をあげましょうと。その代わり、ものすごい大きな責任を負ってくださいと。
何か権利を出版社にあげるのではなくて、もしも何か、海賊版が違法に流通するとか、問題が起こったときに、出版社が責任をもってそれに対応してくれるということなんで、われわれは、何かを切り取られて(出版社に)あげるという感じはまったく持ってないんですね。
福井: なるほど、シビアなバーター取引ということですね。要するに、じゃあちょっと隣の権利をあげるから、その分、出版社の責任増やしますよっていうことですか。はい。あ、きましたね、じゃあ岡田さん。
岡田: はい。僕は与えません。これは賛成か反対かってことではなくて、僕はしませんっていうことです。でもしそんな法律が法制化されたら、それ以降、出版社から本は出しません。
福井: あらら。
岡田: はい。というか、こんな権利を要求してそれが成功するってことは、出版社が保護産業になった証だと思います。つまり、歌舞伎や文楽と同じく、保護してあげなければ存在できない存在にまで成り下がってしまった状態っていうのがコレだと思うんです。
これが必要になるんだったら、もうこの産業は国家の保護なり何なりを受けてください。僕はそこに対して、何か助けたりはしようと思いませんから、そっから本は出しません。
福井: 歌舞伎・文楽的なものに対してコミットする気は無いと。
岡田: はい。で、三田先生がおっしゃった、“巨大な責任”というのを出版社がかぶってくれないのも僕知ってます。僕、今まで2件訴訟がありましたけども、光文社も新潮社も途中で逃げました。
(会場笑い)
岡田: ということは恐らく、その作家から得られる売上と、その作家から得られる評価とを加味した上で、出版協会とかペンクラブとかの偉い人だから三田先生には手厚く、偉くないから岡田斗司夫には薄くということをやるのは、ビジネスとして当たり前だと思うんですね。だから、超メジャーじゃない人が、こういうものを与えても何のメリットもないと僕は思います。
福井: 岡田さん、アニメと違ってここは、実名ありなんですか(笑)
岡田: ここは、ありです。
福井: ここはあり(笑)
岡田: ここはありにしないと、僕が言ってることがただ単に、空虚な話になっちゃう。やっぱここは、実体験で語らないと。
福井: うんうんうんうん(笑)
岡田: あーあーあーあーやだ、さっき新潮社の社長から名刺貰ったのに(笑)
福井: ……もう時間切れですかね(笑)はい、じゃあ、あの、ありがとございました。赤松さん、もうご用意できてますかね。じゃあ赤松さんからどうぞ。
赤松: 本当は反対なんです。でもまあ少しなら、っていうツンデレですけど(笑)
福井: ツンデレなんだ(笑)あ、ほんとだ、小さく書いてありますね(笑)でもまあ少しなら、と。
赤松: あのねー、プロセスがちょっと気に入らないんですよ。だいたいいいんですけど。今回、三田先生と植村先生、中川勉強会に出てらっしゃったんですよね。(勉強会に)漫画家呼ばなかったのは何でですか?(笑)
(会場笑い)
岡田: 偉くないからですよ。
植村: いや、そんなことはないですよ。そんなことはなくて、わりとこう、ほら、えーっと、最初っからガチっとみんなでやるんじゃなくて、どんどん声かけをね、っていうところで、あったはずですよ、すっと。
赤松: それで4回までずっとやられて、最後、最終回の5回目だけ里中先生1人呼んだ(笑)。あのプロセスが気に入らない。それでいて議員立法でやっちゃおうとか、漫画家の稼ぎって出版社にとって大きいのに何で無視するってのがチョー気に入らなかったってのがあるんです。
内容に関してはね、そこそこいいとこもあるのでいいですけど、そういうことやってると反対ですよっていうのが漫画家の意見ですよね。
福井: プロセスを、ちゃんと改善してくださいと。
赤松: そうです。ダウンロード違法化のやつ、刑事罰化もそうですけど、プロセスが酷いと、賛成の人も反対しますよそれは。
福井: ダウンロード刑罰化はプロセスちょっと大間違いでしたね、あれはね。うん。なるほど。今後、それは気をつけなきゃいかん。
植村: だからプロセスに関しては、中川勉強会は例えばすぐに、何だっけな、記者会見だけじゃなくて資料上げるとか、わりとQ&Aも一生懸命書くとかですね、あるいは、その前段としてヒアリングはさせて頂いたと思うんですよ。で、ヒアリングに関して資料を上げたりとか……
赤松: 呼べばいいんでしょ? あのね、出版社の人がね、「呼ばなくていいよ」って言ったていう噂はあるんです。
植村: それ僕は関与してませんよー(笑)いちおう言うけど。
(会場笑い)
赤松: 個人名出しませんけど(笑)
福井: えー(笑)
岡田: そういう時個人名出さないと俺信用しないもん。俺みたいにリスク負って言ってよ。はい。卑怯だなー。
赤松: 私ちょっとリスク負うの嫌いなんで。嫌いなんです、リスク負うの(笑)
福井: えーっと、今のやり取りのところ、カットでお願いしますね、カットで(笑)
(会場笑い)
福井: ま、冗談はともかく。判りました。赤松さんは以前かなり危惧を抱いてたと思うんですけども、プロセスを除けはまあいいかという考えになった決め手は何ですか?
赤松: あのですね、私が知ってるやつはですね、2002年当時の出版社の権利について書かれたものなんですけど、これを見るとね、凄いんですよ。出版社はアイデアとかね、そういうのも全部権利も欲しいし、期間もあと50年欲しいし、など作者と同じ力が欲しいんだよってことを10年前は言ってたんですけど、その後いろいろ叩かれたりして、今の形になったんですが、その凋落ぶりがかなり凄いんですよ。
福井: うはははは(笑)
赤松: ちょっと可哀想な感じがするくらい落ちちゃってて、で、運用ガイドラインとか、紛争処理機関ってのがちゃんとできてれば、まあ、いいんじゃないの? って里中先生もおっしゃってるし……。ちょっとプロセスが気に入らないけど、中身はまあまあかな、という感じがしますよね。
福井: 確かに植村さんがさっきおっしゃったのは事実で、中川勉強会は確かに情報公開はしてきてますよね。事後ではあるけども、情報公開は早かった。で、だんだん縮小してきたのは事実ですよね。
赤松: だって、50年だったんですよ?ほんとは。
福井: そうね。
植村: 1つ言っておくと、何か縮小してきた議論っていうか、中川勉強会の中では、むしろなるたけフラットで始めようよっていうんで、前々(2002年)のでかいとことから縮めたっていうプロセスは全然とってないですよ。
福井: ああ、勉強会の中で言うとそうかもしれませんね。
植村: ええ、それで僕もちょっと参加してたってのはあるし。あと、そのときの問題はむしろ海賊版。僕はさっきから言うように、海賊版は許さないから。海賊版に対して、すぐ、それを止めるってことにおいては、やっぱり(出版社への権利付与が)必要だよねってのが1つと、もう1つすごくこれは出版社の人に強く言うけど、そもそも出版社ちゃんとやってきたか? ということに関して僕はやっぱ疑問があって。
だってそれこそ赤松さんとか、作家の不満を聞いてくとさ、出版社ってやっぱりちょっと問題あったんじゃないの? いや、3月までなら(僕は出版社の人間でしたから)俺達って言ってもいいんだけど、それは凄く認めるの。そのときに、そういう出版社と作家の関係のすごく不透明な慣行みたいなものを全部はっきりさせようって。出版社が権利を得たらはるかに強い義務をちゃーんとこれからやらなきゃいけないんだから。
で、この義務は、結構しんどいですよ、皆さん。本当に権利が手に入ったら。これからはむしろ作家から「お前らなんだ」って言えるようにしっかり作ろうよっていうことをしなければ、それができない出版社辞めなさいって。
福井: さっきの三田さんの議論に繋がりますね。
植村: ええ。
福井: なるほど。分かりました。恐らくまだまだ皆さんお話しされたいことがあろうと思うんですよ。ただね、今日はこれだけの方が会場にいらっしゃってますから、会場とのやり取りも、ちょっといきたいなと思うんですね。
岡田: ちょっといいですか、まとめだけいいですか。
福井: どうぞ。
岡田: はい、すいません。僕、出版社を守りたい、で、今日のシンポジウムで話、考え方変わるかも判んないって言ったんですけど、だいたい結論出まして……
福井: あ、最後にはもう1回結論は言ってもらいますよ。
岡田: はいはい。
福井: どうぞ。
岡田: すいません。今、小さな政府ってみんな言ってると思うんですよ、つまり、政府が巨大になり過ぎて税金が多すぎて、何やってるか分からない。だから政府を小さくしようと。で、これは、個人責任が逆にどんどん増える。そういう悪いこともある。その結果、市民ボランティアがだんだん増えてきた、政府に頼れないから。
同じことだと思います。基本的にこれからは、小さな出版社になるべきであろう、それしかない。ということは、作家責任が自動的に増えてくる。つまり、出版社が、もうすべての責任とか、催促とか、助言とかをしてくれる時代はほぼ終わりに近づきつつある、イコール、読者による、読書ボランティアとか読者ボランティアですね、そういうようなサポートが必要になってくると。
例えば、タダで読めるからといって、図書館を全部利用しないとかですね、ちゃんと紙の本、余裕ある奴は出して買えっていうような形に、この、小さな政府だったら個人責任と市民ボランティアが出る。同じように、ボランティアまったくやらない人いますよね。それと同じように、小さな出版社にこれからなっていくんだったら、こういう潮流になっていくんじゃないかなってと僕は思いました。
福井: なるほど。これは機能するかどうかってのは……
三田: いまのね、ちょっと待ってくださいね。いまの考えだとね、作家が1人1人がね、弁護士雇わないといけなくなるんですね。弁護士が儲かってしょうがない。で、私は出版社にお世話になってるんで……
(会場笑い)
福井: ちょーーーっと待って下さい。ちょーーーっと待って下さい。ちょっと論理がおかしくありませんか?(笑)だって、さっき、コンテンツ産業にはお金流れなくなるって言ったでしょ? お金あんまり儲かんないんでしょ? 弁護士がその儲かんない人から、稼げますか?(笑)
三田: だから、出版社に1人弁護士がいれば、すべての問題は解決できるんでね。作家1人1人が責任を持たされたら、やってけないな、と。
岡田: でも同人作家1人1人責任持ってますよ。
福井: 確かに、出版社中抜き論には、その裏の形として、じゃあ、作家やそれを支える制度はちゃんとあるんだね、自律してそれを支えていけるんだねってことは問われますよね。それがうまく機能するかってのは、議論としてはあるんだと思う。
植村: でも、そんなに人って自律的に、自分を律して仕事できてますか? さっき岡田さんはね、「僕が子どものころだったらこれは俺のチャンスだって思う」って言ったかもしれないけど、僕は親に怒られたり尻叩かれしながら、やっとここまでやってきたっていうタイプだから、やっぱり、誰かのサポートとか、そういうのが必要だと思うんですよ。
だけど、時にはね、「このやろー」ってムッとして反逆起こすとか、若い人間が謀反を起こすってのと、何となくそれなりに、世の枠組みの中から、新人育成って言ってもいいけど、っていうようなやりとりがずっとあったと思うの。僕の最近の不満は、いまの若い人がはるかにパワーがないっていうかさ。やっぱ、70年闘争とかちょっと上の方見てきた人間からするとさ、若い連中革命起こして欲しいよなって。年取りゃ保守になるんだから。
福井: 革命ね。
植村: だから、そういう意味において、いま、こうドラスティックに社会がこうぐるぐる回るんだとしたらさ、やっぱもちろんそれはITを使った革命を起こしてもらっていいと思うから。もうウェルカムだし。こないだ、ボイジャーの萩野さんと話したんだけどさ、そもそも電子書籍って、俺達こんな年になってずっとやってちゃいけないよねって。やっぱりそこは、こんなに面白い電子書籍が出たんなら、チャンスだと思って若い人どんどん来て革命起こしてよって思いますよね。
会場との質疑――メディアミックス機能における出版の役割
福井: 分かりました。じゃあ、名残りは尽きませんけれども、残り15分ですから、会場との質疑をさせていただいて、最後にみなさん一言ずつ、クロージングコメントを頂きたいと思います。
そのときに、改めて、出版社は必要だと思いますか? ってさっき岡田さんにも答えて頂いたから、もう1回、お伺いしたいと思ってます。じゃあ、会場、質疑、いかがでしょうか? はい、じゃあ1番最初に手を上げた、中ほどの黒いシャツの方。出版社の方はね、自主的に、どの出版社か、名乗っていただいても結構ですよ。はい、自主的にね。
(会場笑い)
客(1): 興味深い話どうもありがとうございました。今回出なかった視点の1つだと思うんですが、出版社の役割として、メディアミックスというものがあると思うんです。80年代の角川グループ以降、特にそういう役割が与えられてたと思うんです。しかし、赤松さんのお話でも、岡田さんのお話でも、今から出てくる新人の作家は、出版社に魅力を感じないだろうという前提があったと思いますが、一方で、自分の作品がアニメになるとか、映画になるってのは多分出版社を介在しないと難しいような気もしまして、その辺りに魅力を感じる要素というのを、可能性として、ちょっとお聞きしたいな、と感じました。
福井: ありがとございます。凄くいい質問ですね。一応話の種に表示しておきますね。出版社の機能論として、出版社って、本当にやってるかは別問題として少なくとも理念上は、こういう役割って果たせるんじゃないのってよく、私なんかも使うし議論してる問題ですよね。
赤松さんのさっきのお話とか、今日の中でもずいぶん出てきましたけど、作家を発掘し育成する「発掘育成機能」、作品の創作をサポートし、時にリードする「企画・編集機能」とかね。これがいくとこまでいくと、代わりに書いてやるってのが出てくるんだけれども。
で、文学賞や雑誌媒体に代表される信頼により世に紹介・推奨する「ブランド機能」、それから4番目として、赤松さんもおっしゃった「プロモーション・マーケティング機能」、で、5番ですよね、作品の二次展開を進めていく、そこにおいて窓口や代理を務める「マネジメント・窓口機能」、まあ広い意味でのメディアミックスなんかこことも関わってくる。あるいは最初の企画・編集のときにも、メディアミックスを企画するんだけども、これが関わってくる。
で最後に、三田さんもおっしゃった、初期コストと失敗リスクを負担する「投資・金融機能」ですよね、なぜなら今のすべてはコストがかかるからです。で、必ずしも回収は、保証されないお金だからですよね。でも、これはあくまで理念上のものです。今のメディアミックス機能における出版の役割をどう評価するか、っていうのをどなたかお答え頂けないでしょうか。
植村: じゃあすいません。最初の指摘凄くいいと思って、魅力を感じないってのは、出版社に魅力を感じないんじゃなくて、魅力を感じる出版社がないっていう意味だと思うんですよ。だとしたらまさにメディアミックスとか、さまざまな手法でさらに魅力あるものを考えていくのは、出版社側の役割かなって思うんで。
それが今のところ不況だとかいろんなことによって停滞感があるのかなって。方法はいっぱいあって、紙と電子はどんな組み合わせがあり得るのかを当面は考えようよ、ってのが僕の持論です。
赤松: メディアミックスの件ですけど、最新の若い作家さんは、別にそれを望んでない場合が出てきてます。つまり、どんどんメディアミックスでアニメ化したりとか映画化したらいいなっていうのはわれわれの世代の夢なんで。「売れたくない」って考えてる作家が凄く増えてる。
福井: あ、そうですか。
赤松: 意味判らないですよ、私はね。ただ、事実です。
福井: へーーーーーっ
岡田: 露出コストが掛かっちゃうってことですよね。自分の作品とか自分のモノに関して、露出したらそれだけのコスト掛かっちゃうし、あと、自分の思い通りにならない。コントロール権を奪われるってのも。
赤松: 恐らくそんな感じだと思います。もう1つはね、自分の中からその作品を出したくないっていうこの、じゃあ書くなよ!とか思うんだけど。
(会場笑い)
赤松: 自分の領域の中でこういろいろやりたい、みたいな。他の人が関わると嫌だし、あと、自分はこんなに売れていいはずがないとかっていう自分をこう信じてないとか、いろんなものが混じり合って……
福井: そんな要素が(笑)
植村: つまんなくない?そういう連中。
赤松: いや、結構面白いんですよ。
植村: いや、なんか人間としてつまんないような気がするんだけど。
赤松: それはそうかもしんないけど(笑)
福井: それはそうかもしれない(笑)
赤松: とにかく、メディアミックスで売れたいってのが、今後もいいとは限らないです。
岡田: それはね、大衆っていうか、マスに対する不信だから、僕らが持ってるものと実は共通してるんですよ。そんなに分からないものでもないから赤松先生がこんなに面白がってるんだと思いますよ。
赤松: そうなると、かなり減っちゃうんですよ。
福井: なるほどね、うん。元々この機能をちゃんと果たせよって話も出たけれども、それだけじゃなくて、この機能を求めてないクリエイターも増えてきてるんじゃないかと。
赤松: 今後は相当増えると思います。
福井: うん、まあ全部とは言わないけど、いくつかについては。
植村: そういう意味では、出版社を通して、社会に働きかけようってのが本来だと思うんですよ。だから、社会に働きかけるための機能として、今の出版社、というか出版社的なものが、役立ってないんだってのがむしろいまの若い人たちの捉え方だと僕は取ってるんだけども。
僕はやっぱり若い人たちは、社会に直に働きかけられるんだって、それだったら、今のそういう組織は要らねーって思ったら、そりゃ組織はやっぱ無くなるよね。
福井: これね、レコード産業などでも言えそうですけどね、メジャーからインディーズ回帰が起こるだろうって言われたんですよ。だって、メジャーレーベルはもっと要らないんです。初期コストも下がってるし。でもレコード産業自体は落ちているけれど、メジャー離れはそこまで急速には進まなかった。
ただ確かに二極化はしてるかもしれず、インディーズでいいですって言ってインディーズであり続けている存在もいるし、一方でやっぱり、メジャーにこだわり、そこで戦おうとする人たちも残り続けてる。
岡田: 面白いことに中間層が一番被害受けるんですよね。例えば出版とか漫画とかコンテンツ産業は全部そうだと思うんですけども、弱者にとって海賊版ってのは何ら脅威になり得ない。自分たちの作品は、海賊版として流通してもらえるほどには売れてないから。なので、海賊版で他の人の作品見れる方が得だから、弱者にとって、インディーズにとって、海賊版っていうのは何ら問題がない、それどころか自分にとっては有利。
福井: ビジネスモデルが違いますよね。
岡田: 中間は違うんですよ。ところが、強者にとって海賊版はさほど不利にならない。海賊版でどんどんどんどん見てもらえる方が、最終的に自分の知名度とか評価が上がってきて、他の収益方法とか収益モデルを考えられるわけですよね。
なので、強者と弱者に分かれやすいんですよ、このIT時代ってのは。中間者がいなくなっていまう、いわゆる、本当に中抜きですよね。クリエイターの中抜きで、強者は海賊版別にあってもいいし、隣接権なんか別に要らないし、俺電子出版だけでも食っていけるし、とか、俺は紙の本でもちゃんと刷ってもらえるし、って言えるんですよ。
で、インディーズにしてみたら、そんなの俺関係ないよ、だって俺、自分の作品を理解してくれる人だけ相手してればいいしって。赤松さんが言ったようなことですね。で、中間層の人たちが困る。その人たちが、多分どんどんいなくなっていくという、そういう流れだと思います。
福井: 強者・赤松健、どうですか。
(会場笑い)
赤松: 漫画なんかだと、新人さんが、すっごい不利になってますね。雑誌が売れなくなると、宣伝媒体としての雑誌が機能しなくなりますし。
それと、単行本が売れない。だから、単行本の部数的に言うとマガジンの中でも、メジャー誌内メジャー作家と、メジャー誌内マイナー作家に完全に別れてしまった。上の人たちはだんだんこうちょっとマンネリ化してくるし、下は出てこないしで業界全体のパワーは下がると見てます。
福井: なるほどね。
植村: だから、結局コミケのようなシステムが機能してないっていうか、出版社っていう組織体じゃないところからどんどんどんどん若い人が入ってきて、しかも、何度も言うけどその人たちが「食える」って……
赤松: 彼らが食えなくていいって言ってたらどうします?
植村: だから、食えなくていいならどうやって食っていくんだろうって。
赤松: いや、本職があって。
植村: うん、だからさ、そこがさっきの……
赤松:あの、ニコ動でミク動画、流してる人たちってのは、編集者とかこの、ディレクターの直し入ってないんですよ。漫画もそうなんですけど。
植村:むしろそれで凄くいいコンテンツがどんどん出るっていうんだったら、そのシステムが素晴らしいと思いますけどね。
福井: ボカロのシステムは確かに、非常に面白いんだけれども、もう少し質問もとってみましょうね。ほか、いかがですか。別なことで結構です。はい、じゃあこちらの中ほどの方、早かったんで。このシマの中ほどの方。すいませんこちら、ちょっと待って。
岡田: やっぱ、手を上げるのは男ばかりナリですね……。
福井: 不満ですか?(笑)
岡田: いえいえいえいえ。
客(2):よろしくお願いいたします。先ほどからやり玉に上げられていた、若い、アマチュアの制作者の一人として、ちょっと一言言わせて頂ければと思います。確かに、僕らがアマチュアでやっていて、本職があるし、それで食えているんで、わざわざ出版社を通して何かをしたいという思いもないですし、一定の人たちが読んでくれて支持してくれてればいいな、と。
そういう思いもありますけども、ただ実際に、本を出してもっとメジャーになりたいと思ったときに、電子書籍が、今の出版社のような役割をしてくれるとは思えないんですね。例えば、コミケに本をだすと、それと同じレベルて、電子書籍の中の一部に僕の本が入ったとして、そっから僕の作品がメジャーになる可能性って皆無だと思うんですね。
ですからやっぱり、出版社の力は必ず必要だと思いますし、ただ、やっぱりWebで有名になった人が、出版社を通して漫画が出ると何か面白くなくなってるなってのを最近感じたりとか、そういう意見がネットで見られていたりして、そういうのがあるとですね、非常に物悲しいものがありますので、僕は出版社として魅力ある人たちが、もっともっと、前面に出てきてほしいと思いますし、とある出版社の編集者なんか、わりと顔を、前に出されてですね、去年か一昨年か、このブックフェアでも講演されてたと思いますけど、そういう方たちがもっと出てきて、あーこの出版社と、この編集者と組んでみたいって、そういう人たちが出てきてくれると、嬉しいなと思います。
赤松: 質問じゃねぇ(笑)
客(2):じゃないですね。すいません、質問じゃないですね(笑)
岡田: 前半に関して答えます。無理。無理です。何で無理かっていうと、あなたが考えてるのは、出版社が限定された本を出してるということが前提です。今日本では、多分1日100冊くらい、100種類くらい新しい単行本が出てるんですけど……
植村: 2~300くらいありますよ。
岡田: あ、で、これでも多すぎるって言われてるんですけども、この状態でもやっぱ目立たないわけですね。これが電子出版時代になるとどうなっちゃうのかっていうと、極端な数値を代入すると、1日に1万種類とか、5万種類の新刊書が出るわけですね。
そうなるとあなたの本が目立つことはできない。コミケだったらまだブースの数が有限で、歩いて回れるから、まだ、自分の本が目立たないってことはないんですけども、こっから先、どんどん電子出版が盛んになって、参入しやすくなってくると、編集者がいようがいまいが、1日5万冊、10万冊っていう新刊書が出る世界の中で目立つことなんか到底不可能だと思います。
だから、おっしゃってることは、そうやって編集者の人が頑張って、とかいう感じで、才能ある作家を見つけて育成するシステムを残してくれっていうのは、かなり難しいんじゃないかなと僕は思っています。
植村: ま、その文脈でとらせて頂いて、ある種の反論なんだけど、だからこそ、電子書籍における、セールスプロモーションとか、やっぱり良質な、オススメしたい、高く売れるな、これだったらっていうメカニズムが、やっぱり生まれちゃうと思うんですよ。だからやっぱり中抜きは僕は起こらないって。
出版業界30年後の未来――クロージングコメント
福井: 分かりました。赤松さん、巻いた方がいいっていう今、メッセージ出てましたね。
赤松: 何か書くんでしょ?
福井: そう、書く。そろそろみなさん準備してくださいね。ご質問、二人じゃさすがにあんまりか。もう1人だけとりましょうかね?!じゃあ、朝日の赤田さんに、ああ、言っちゃいましたー(棒)カットしてくださーい(笑)
赤田: 朝日新聞の赤田でございます。今日、私ですね、電子出版EXPOの取材をずっとしていてですね、未来の電子……、未来の本の形、未来の出版界がどうなるんだろうってことをずっと考えながら取材してたんですけど、今日もまあそういうことを考えながらお話伺っていて、出版社が必要だと概ね3人がおっしゃっていて、岡田先生も、まあ守ってあげたいっていうことでした。あえて伺いたいのが、そういう必要かどうかというものよりも、予想、予想というかですね、予測をしていただいて、30年後の未来を。
福井: 30年でいい?
赤田: はい。出版社がどうなっているか。必要だと思った方も、必要だと思っているけれどなくなってしまっているとかですね、その辺、で、ちょっと1つ、具体的な事例として、最近で言うと、某大手印刷会社系列の電子書店が、端末も出しますっていう発表をしました。まあ、あの、凸版系ですけれども。で、そのつまり、えーっと……
福井: いいんですいいんですいいんですいいんです。
赤田: まあつまり、凸版さんは、端末の発売、それからその電子書籍のデータを作るところ、それから端末経由でそれを売るっていう、つまり、一気通貫で電子書籍のビジネスをやるっていうことを言ってらっしゃると。
で、その中で、本を作る機能という出版社の機能は、まだ完全には入ってきてないんですけど、その、凸版の子会社がやってる電子書店で、実はオリジナルの本も実際でていると。それは漫画ですけれど、要するに、電子で出たものが、何と某朝日出版から紙の本で出たりしていて、つまり、オリジナル企画が電子で、出版社以外から出ているっていうことですよね。
だから、そういう事例も当然出てくるし、当然ネット時代に非常に大規模な資本でなければ逆に生き残れないということも出てくると思います。だから、Amazonや、Appleや、米国資本との関係も含めて、日本の出版社がどうなっているのか。
福井: かえって大資本が必要かもしれない、っていう視点も面白いですね。じゃあね、クロージングコメントの中で、その視点が入れられるようなら入れていただくということでよろしいですか? で、クロージングコメントの質問は、「出版社はやはり必要だと思いますか?」で、赤田さんからの「30年後にどうなっていると予測しますか?」ってことも出るなら。あるいは、今日最後これを言いたいということ。すいません時間限られてます。おひとり1分、そのくらいでお願いできればと。
岡田: 1分!?
福井: はい、はい、わかりました、じゃあね……
岡田: や、1分でいいです。
福井: え、これ、延長大丈夫なの、かな?中継は。
岡田: 大丈夫です。
福井: ああ、そう。じゃあ、おひとり2分ね。
植村: 大丈夫って、主催者みたいですね(笑)
岡田: いま、放送から○サイン出ました。大丈夫です。
福井: 大丈夫ですね。はい、じゃあ、みなさん拍手で。
(拍手)
福井: 用事のある方は、こっそり出てって下さいね、はい。じゃあ、赤田さんよろしいですか?
赤松: 赤田さんって誰?(笑)
福井: 名前間違えた、赤松さん宜しいですか?
(場内笑い)
赤松: 赤田さん、いつから登壇してんの(笑)
岡田: 後で朝日の赤田さんにもコメントさせましょう(笑)
福井: えーーーーー……
赤松: 赤松でいいのかな?
福井: やるんじゃなかったこんな司会ね。
(場内笑い)
福井: はい、じゃあお願いします、赤松さんどうぞっ。
赤松: 残念ながら要らないような……要らないって言っても私は欲しいんですけど、若手が徐々に欲しくなくなってしまうから。
30年後って、それはもちろん要らないですよ。3年後に、要らなくなってしまう可能性が、いまのところ高いのではないかと。私は要ります。私の代とかバクマンの奴らは要りますけど、要らない感じ?多分そうなってしまうと思う。
福井: お、短かった。じゃあ植村さん。
植村: まず30年後に答えるかっていう意味においては僕は、電子書籍で食える時代っていうか、ボーンデジタルっていうのかね?だからさっきの方が言ったけど、むしろ電子書籍でちゃんと食えるように、ってこれはでもね、意図的に誰かが、みんながっていうのかな、汗かいてそういう時代を作るんだと思うの。
それは誰が作るのかって言うと、やっぱ、革命じゃないけど、僕、上から巨大な資本が作るのは嫌なの。だから別にいま動いてるIT企業が凄い仕組み作って「ほらお前らやれるよ」って仕組みを僕はそれ受け入れたくなくて、やっぱそれは、下から革命起こそうよっていう方が好きだからさ。何しろ70年闘争を見ながらきてきた世代だから。
電子書籍で食える、生活できる時代は、必ずくるっていうか、必ずこさせようっていうのがどっちかっていうと僕の考え。で、それは下から作ってこうよ。どっかの巨大な資本が作ったものに乗るんじゃなくて、というのが僕の考え。で、そのプロセスとして、出版社に隣接権だとしたら、それも1つのアイデアだなっていうふうに思ってます、ってことです。いまいまでは。
福井: はい、ありがとうございました。じゃあ、岡田さん。
岡田: はい、僕は「守ってあげたい」というのがシンポジウムの最初の意見でしたけど、いまは、「出版社を小さくする手伝いをしたい」です。このままでは小さくなります。つまり、事情によってとかお金によって売上によって小さくなっていったら、必ず辛いこととか悲しいことがいっぱい起こるので、そうじゃなくて、自分たちで出版社が小さくする、ことの手伝いをしてあげたい。
そのためには、さっきの質問と込みですけども、こう考えます。これからの読者はこうなるであろうっていうやつです。1万人はタダで読まれる。つまり、読者全体が1万人いるとしたら、母集団として、この人たちは、タダじゃないと読まない人たちだ。で、その中の5%、500人は電子出版を買ってくれる人たち、その中のさらに5%、25人は紙の本を買う人たちです。多分この5%・5%というのは僕自身、あるいはだいたい同じような業界の人が痛感しているものだと思います。
ということは、この母数を多くするしかないんですね。タダでないと読まない人、つまり、今の読者人口自体が減ってることの方が問題であって、そのためには、タダで本をいっぱい読ませた方が、結局いいと思います。
タダで本をどんどんどんどん読ませたり、どんどんどんどん安くすると、結果的に電子出版を買う人がその中の5%で増えていって、その中で紙の本をあえて買おうという25人も増える。で、この、5%の5%の25人っていうのは、時代によって移り変わるんですよ。そのときの経済状況とかですね、たまたま親が紙の本が好きだったとか。
でも、ここを増やそうとするよりは、ここ、電子出版とか紙の本を守ろうとするよりは、読者人口自体をいかに増やすかを考えた方がいいので、できるだけ無料に近い形で、どんどん本が読めるような仕組みを作るために、出版社を小さくする方法ってのを一緒に考えたいと思います。
福井: 前向きな縮小って感じですね。
岡田: はい。その方がマシ。
福井: フリーミアムモデルですね、基本的にはね、うん。ありがとうございました。三田さんいかがでしょうか。
三田: 私は、出版社はなくならないと思います。なぜかというと、やはり紙の本がいいんですね。これは例えば、演劇とかオペラとか、それが例えテレビで観ることができたとしても、やはりそこに行って観れば楽しいわけですね。紙の本も、持って「重いな」と思いながら読むのが、読む醍醐味であります。だから、紙の本はなくならないんですが、ちょっと危ないかなというふうに思っております。
なぜ危ないかというと、アメリカでKindleというものが大変に売れて、電子書籍が非常に売れておりますけども、Amazonは実は紙の本の本屋さんであります。だからAmazonは、紙の本も売って儲けようとしております。
何が起こっているかというと、紙の本と電子書籍同時に出版するとですね、Amazonさんは、思いっきり電子書籍の値段を下げるんですね。駅前とか商店街の中にあるような現実の本屋さんに本が平積みになっているときにですね、電子書籍をダンピングします。で、売れねーなーということでですね、本屋さんの店頭から本がなくなったときに、電子書籍の値段を上げてね、で、Amazonの通信販売で紙の本を売ると、いうことをやってます。
で、これが実際にそういうことになってしまいますと、街角の本屋さんが消えていくんじゃないかなという危機感を持っています。
最初に言ったように、本を平積みに置いてもらうというのは作家の命なんですね。現実の本屋さんがなくなってしまいますと、フラーッと本屋さんに入ったら平積みで置いてあって、これ、面白そうだなーと手に取るという、そういう形で本と出会うということがなくなってしまって、全部端末で、情報だけで見るということになってしまいますと、文芸文化そのものに大きな危機がやってくるかなと思います。
でも、文芸文化そのものが絶えてしまったら、電子書籍も意味のないものになってしまうんですね。だから、なるべく本屋さんで、現実の本屋さんで、本を買おうということを、ここにいる皆さんとですね、ネットで見ている皆さんにですね、訴えたいと思いますね。そうじゃないとね、例えば文庫本みたいなモノは危ないわけですね。電子書籍と競合します。だからなるべく文庫本を買ってですね、自分で所有すると。できたら2冊か3冊かね、たくさん文庫本を買ってですね……
福井: 同じ本を?
三田: 紙の本屋さんとそれからあの紙の出版社と、紙の本を現実の店で売ってる本屋さんを、われわれで守っていかなければならないというふうに思ってます。
福井: ありがとうございました。本日は、最初から申し上げていた通り、90分で論点を出す、そういう場だったと思っております。
出版社のこれまで果たしてきた、あるいは、果たすことが期待されていたいろいろな機能。この機能そのものが、いま、必要とされてるのか、あるいは、必要とされているものがあるとすれば、それを十全に果たしていくためには、いったいどんな仕組みがあり得るのか。それを担うのは、出版社なのか、あるいは形を変えた事業体なのか。そうしたことを考えていく上で、非常にたくさんの、豊富な問題提起・材料をいただけたように思います。
これは皆さんにそのまま、問題意識としてお渡しします。皆さんが、この先、ぜひ議論をしていただいて、面白い作品が生まれ続ける仕組み、それにわれわれが自由にアクセスし、豊かな文化を享受できる仕組みを、一緒に考えていければ幸いに存じます。お忙しい中ご登壇いただきました、登壇者の皆さんにぜひ大きな拍手をお願いします。
(拍手)
また本日はお忙しい中、出版界で言えば早朝にですね、お集まり頂きました皆さん、本当にありがとうございました。御礼申し上げます。終わりです。
岡田: 福井先生、パート2やりましょうね。今度。
(場内笑い)
福井: 有料でしょ?
岡田: 有料で。
福井: 有料ね。
岡田: 有料。
福井: はい。
岡田: でもやるとしたら、出版社が必要かじゃなくてもっと恐ろしい問題で、書店がこれから必要かっていうね。
福井: そう、本屋ね。うん。
岡田: もっと怖い話。
赤松: 著作隣接権に関しては、10日の23時半からニコ生をやる予定です。中川勉強会の方と、作家と、出版社の取締役級が、参加する。いちおうね、森川ジョージ先生と、ネームが間に合えば、井上雄彦先生をお呼びしてあります。
(※注:序盤に若干放送トラブルがあり、14:20頃から始まります)
福井: そういうことで左右する。
赤松: あと私も出ます。
福井: それは無料ですか?
赤松: ニコ生だから無料……
岡田: あーそれは実質、有料ですね。プレミアム会員じゃなきゃ追い出されちゃうから。
(場内笑い)
福井: はい、えー本日はありがとうございました。
[鷹野の感想]
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