【提案】Myブック変換協議会と出版社は、日本蔵書電子化事業者協会と協業して電子書籍のラインナップを増やせばいいのでは?

日本蔵書電子化事業者協会

日本蔵書電子化事業者協会

以前、Myブック変換協議会のシンポジウムのエントリーにボクの意見として、自炊代行業者がスキャンしたデータを使い回して販売することを許諾すればいいということを書きました。

単純な話ですが、許諾があれば違法ではないわけです。つまり、自炊代行業者が電子書店を兼ねることで得られた収益を、出版社・著作権者へ還元すればいいというアイデアでした。

これは、既存電子書店のライバルを大量に発生させることになるので、「高付加価値化することで対抗すればいい」という提案をしつつも、正直、難しいかなあと思っていました。そこで、別のアイデアを提示させて頂きます。それは「自炊代行業者のスキームを応用して、電子書籍のラインナップを増やす」ことです。

自炊代行業者のスキームを応用とは?

現在、日本蔵書電子化事業者協会の中心になっている自炊代行業者のBOOKSCANは、おおまかに以下の様な流れで作業を行なっています。

  1. ユーザーはBOOKSCANにオンラインで申し込みをし、自炊代行対象書籍を宅配便で発送する
  2. BOOKSCANは、自炊代行を拒絶している著者リストと照合し、対象書籍をスキャン対象から除外する
  3. BOOKSCANは、裁断・スキャン・データのクオリティを確認し、ユーザーへデータを納品、一定期間経過後に原本を破棄する

これを、こんな流れにしてみてはどうでしょう?

  1. ユーザーはBOOKSCANにオンラインで申し込みをし、自炊代行対象書籍を宅配便で発送する
  2. BOOKSCANは、自炊代行を拒絶している著者リストと照合し、スキャン対象から除外する
  3. BOOKSCANは、スキャン対象書籍が出版社によって電子化・販売されているかどうかを確認し、まだ電子書籍として流通していない書籍があったら、ユーザーに二次利用の許諾を得た上で、出版社がスキャンデータを買い取る
  4. BOOKSCANは、裁断・スキャン・データのクオリティを確認し、ユーザーと出版社へデータを納品、一定期間経過後に原本を破棄する

つまり、自炊代行業者が、電子書籍の制作会社を兼ねるということです。

電子化されていない書籍ほど、自炊代行の対象になる

ユーザーには、「出版社がデータを買い取るので、スキャン代行料金は頂きません」という形にすればいいでしょう。すると、現時点でまだ電子化されていない書籍であればユーザーは無料でデータが手に入るので、電子化されていない書籍ほど自炊代行の対象になりやすくなります。すなわち、過去の膨大な出版物の電子化が、あっという間に促進されることになるわけです。

出版社が買い取る価格は、スキャン代行料金と同額か、少し上乗せする代わりに納品データをそのまま再販可能な形に加工してもらえばいいでしょう。いずれにしても、あまりコストをかけずに過去の出版物の電子化が図れることになります。

なお、このスキームによって生産される電子書籍データは、文字モノであってもすべて固定レイアウト(フィックスフォーマット)型ということになりますが、まずは電子化され販売されるだけでも充分でしょう。無いより遥かにマシです。出版デジタル機構が作ったブルーバックスの電子書籍データも固定レイアウトですし。

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出版社は、あまりコストをかけずに電子化できたわけですから、電子書店で販売する価格は紙よりかなり安くできるでしょう。つまり、電子書店のユーザーも、このスキームによってメリットを享受できるわけです。

関係者メリットまとめ

このスキームには、関係者それぞれにこんなメリットがあります。

  • まだ正規の電子版が流通していない紙書籍を持っているユーザーは、無償でデータを手に入れられる
  • 許諾を受けた自炊代行業者は、合法的に商売ができ、電子書籍の制作会社を兼ねることもできる
  • 出版社は、低コストで過去書籍の電子化ができ、廉価版のラインナップが増やせる
  • 電子書店のユーザーは、これまでなかなか電子化されなかったラインナップを安価に手に入れられるようになる
  • 電子書店は、増えたラインナップから販売収益を得られる
  • もちろん出版社・著者にも販売収益が入る

関係者全員、Win・Win・Win・Win・Win・Winです。デメリットは……出版デジタル機構の役割がなくなるくらいでしょうか。

スキャン行為を許諾する代わりに著作権使用料を取るというのは、1冊100円くらいでやってるビジネスからすると、相当厳しいことが予想できます。その分をユーザーの利用料に上乗せすれば、利用されなくなるか、日本蔵書電子化事業者協会に加盟しない闇業者が増えるだけなのではないかと思います。

関係者みんなにメリットのある形がいいですよね。

……穴があったらご指摘下さい。

[追記]

ツッコミを頂いたので、ボクなりの回答を。

電子書籍にする時の最大のハードルってデータのスキャン作業なんでしたっけ?

「権利処理(著者に電子化の許諾を得る)」という事務処理コストが、結構大きいでしょうね。このスキームでも、そこが最大の難所だと思います。

でも、スキャン作業費用と品質保証(quality assurance)のためのコストが大きいのも事実だと思います。要するに「売れるかどうかわからないものに、コストをかけられない」から過去書籍の電子化が進まないわけですから。

文字モノならリフロー型に対するこだわりを捨てること、多少スキャン精度が低くても構わないという思い切りで、制作コストが1冊100円~200円くらいで済むなら、結構電子化進むと思うんですけどね。甘いかなあ?

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