出版業界関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は、大手出版社売上上位10社のうち7社が減収という帝国データバンクのリリースが話題になっていました。
電子書籍の認知度はほぼ100%~ただし、現在利用している人は15% -INTERNET Watch ※2013年10月15日
この記事には、調査対象が「直近3ヵ月で書籍を1冊以上読んだ人(※コミック・雑誌は含めない)」という重要な情報が欠けています。一般化しちゃダメですよ。
藤井太洋「電子書籍」の広め方 デジタル時代の重要人物に訊く「実践マーケティング戦略」第3回:PRESIDENT Online – プレジデント ※2013年10月15日
藤井太洋さんへのインタビュー記事3回め。「Gene Mapper」公式サイトは独自ドメインなんですよね。「ここへ来ればコレに関する情報が得られる」という拠点を作るというのは大切なことだと思います。ドメインの力を1から育てるのは大変ですが。
(※藤井太洋さんの「電子連載」に関する新情報は、10月25日にこのページへの追加記載を予定しています)
何だろう?気になる……。
KADOKAWA・紀伊國屋書店・講談社、図書館向け電子書籍貸し出しサービスの準備会社を設立 – ITmedia eBook USER ※2013年10月15日
先週の気になるニュースで「角川歴彦会長がブックフェアの基調講演で語った構想はいまどうなっているのか」と書いたら、翌日に動きがありました。何だろうこのタイミングの良さは(偶然です)。
クラウドソーシングを利用してより迅速に読みたい人の元へ――「アクセシブルな電子書籍製作実験プロジェクト」始動 – ITmedia eBook USER ※2013年10月15日
視覚障害者が本を読むために、スキャンしてOCRした後の校正チェック工程を、クラウドソーシングで行うという試み。ちなみに「視覚障害者等のための複製」は自炊代行業とは異なり、著作権法第37条・37条の2で認められた行為(政令で定めるものに限る)です。
JAGATセミナー 電子書籍の最新事情とEPUB制作環境の進展 – ちくちく日記 ※2013年10月16日
ボクが行けなかったJAGATセミナーのまとめ。ありがたい。何かと批判の多い「コンテンツ緊急電子化事業」に内部スタッフとして関わった深沢英次さんの話が興味深い。リフローよりフィックスの方が大変だったというのは、いろいろ考えさせられます。
KDDI、人気作家の未発表作品を「ブックパス」で独占配信へ – CNET Japan ※2013年10月16日
特定の電子書店だけで独占配信というのは、ユーザーの選択の自由を奪うものですからあまり好ましくないと思います。ただ、この事例の場合、連載中は独占配信ですが、連載終了後には通常の書籍としても販売するそうなので、きっとその時には電子版も各電子書店へ配信することになるのでしょう。なるよね?
電子書籍投稿サイト『BookSpace(ブックスペース)』がサービス開始後3週間で会員数100名を突破! | ゴマブックス株式会社 | プレスリリース配信代行『ドリームニュース』 ※2013年10月16日
投稿型サイト(つまり一般に門戸が開かれている)が、サービス開始3週間で会員数100名って、ネガティブな情報だと思うのですが、それをプレスリリースするというのはどういう……プレスリリースサイトを広告の手段として活用しているのでしょうけども。
出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(番外編:電子出版独自追加版)(2013年)(最新):ガベージニュース ※2013年10月16日
毎年この時期にガベージニュースさんが公開している、出版関連の数値推移グラフの1つ。こちらは売り場ごとの販売額比較に、電子出版(調査機関や方法が別なので参考値)を追加したもの。駅売店は既に抜いています。
出版物の分類別売上推移をグラフ化してみる(2013年)(最新):ガベージニュース ※2013年10月17日
ガベージニュースさんから出版関連のグラフ記事をもう1つ。「額の推移が見たい」とリクエストしたのはボクです。指数推移なら対前期比から逆算すれば作れるんですけどね。コミック・文庫はそれほど減っていないというのが重要。
Kobo、電子書籍リーダー端末「kobo Aura」を日本市場に投入 – ITmedia eBook USER ※2013年10月17日
ソニーReader PRS-T3S、Amazon Kindle Paperwhite(2013)に続く、新型電子ペーパー端末の投入です。kobo Auraが面白いのは、フラットパネルを採用している点。他の電子ペーパー端末は、ベゼル部分がディスプレイ部分より数ミリ厚い(真ん中が凹んでいる)のですよね。ここにゴミが溜まりやすい。フラットパネルになると、かなり使用感が変わるはず。楽しみです。
Amazon、Kobo、ソニー――出そろった各社の電子書籍端末新モデルを比較 – ITmedia eBook USER ※2013年10月17日
というわけで、早速その3端末のスペック比較表が。ちなみに、Kindle Paperwhite 2013年モデルは、2012年モデルと全く同じ大きさです。PRS-T3Sは最軽量ですが、内蔵ライトなし。
電子書店「ポンパレeブックストア」11月オープン リクルートライフスタイルとメディアドゥが電子書籍販売のサービスを共同で提供開始 – SankeiBiz(サンケイビズ) ※2013年10月17日
また新しい電子書店が、こんどはリクルートから。メディアドゥは「LINEコミック」の裏方でもありますが、ついにマザーズへ上場するそうです。武器商人だけが儲かっている……。
「ももクロ本」の印刷部数を過少報告 ぴあが発表 :日本経済新聞 ※2013年10月17日
1970年代くらいまでは、検印紙というのを貼った枚数に応じてロイヤリティが支払われていたそうです。それが、著者と出版社の信義則にもとづき、廃止されていったという歴史があるようで。この印刷部数虚偽申告というのはその信義則を破る行為なわけで、これで著者の出版社に対する不信感がますます大きくなるのではないでしょうか。
集英社も4.4%減──出版大手10社中7社が減収、市場縮小止まらず 帝国データバンク調査 – ITmedia ニュース ※2013年10月17日
この記事を斜め読みして、最後のパラグラフを見落としました。翌日、マイナビが「”電子書籍”への対応は裏目に!? 大手出版社、売上上位10社のうち7社減収」というタイトルを付けていたので、「は?」となって、帝国データバンクに問い合わせをすることになったというわけです。
電子出版をやろうと思うと別途経費や手間がかかるので、市場が小さい今は「利益が圧迫される」という主張なら理解できるのですけどね。「紙媒体の一部需要を奪う負の側面」って、売上の話でしょ。電子出版市場の規模と、紙の出版市場の規模を比較すれば、とてもそんな状態じゃないのはわかるはず。感覚的に誰か何かを悪者にするのヨクナイ。
独立した電子出版権創設に関する「中間まとめ」に対する意見表明 – 日本ペンクラブ ※2013年10月17日
今般導き出された独立した電子出版権の創設について反対すると同時に、議論の差し戻し、もしくは新たなメンバーによる議論を要求する。
日本ペンクラブ、電子出版権の創設を全否定です。なんだなんだ。
「出版権」緊急説明会|出版広報センター ※2013年10月18日
日本ペンクラブの意見表明後に、出版広報センターから文化庁中間まとめとパブコメ案・意見などの一覧が。まだ目を通せていないのですが、概略をまとめた記事が今日あたり出るかな……?
NHN、無料の電子コミックサービス「comico」開始、すべてオリジナル作品 -INTERNET Watch ※2013年10月18日
作家と独自契約を結んだ上で無料配信ということは、単行本化で収益を得るスタイルでしょうか。出版社化するのか、どこかの出版社と手を組むのか。
艦これ関連書籍が2冊同時に初の電子化:『艦これ白書』が電子書籍でも同日配信――アップデートで誤植修正 – ITmedia eBook USER ※2013年10月18日
世の中的には、紙の本の誤植が多すぎて艦コレ運営がゴメンナサイした話の方が騒がれていると思いますが、ボクはあえてこっちをピックアップ。「後から修正ができる」というのは電子書籍の大きなメリットですが、電子書店によっては対応していない場合があるという点も見逃せず。自己出版をやっているので、koboがアップデートに非対応(裏ワザ的には可能)というのは知ってますが、たぶん他にもあるのでは。
海賊版対策で「電子出版権」創設へ 「近代化」遅れる出版業界、関係者の思惑は「呉越同舟」[電子書籍] | 毎日フォーラム~毎日新聞社 | 現代ビジネス [講談社] ※2013年10月20日
「電子出版権」まわりにどうしてこんな対立構造があるのか、わかりやすくまとめてある記事。しかし、写真のキャプション「急速に普及する電子書籍端末」に目を奪われてしまった……専用端末の普及率は数%程度だと思うのですが。