リサーチバンクの調査「月に1冊以上本を読んでいるのは46%」という数字からは、漫画・雑誌と、電子書籍が除外されている

読書に関する調査。月に1冊以上本を読んでいるのは、46%程度。|リサーチバンク

読書に関する調査。月に1冊以上本を読んでいるのは、46%程度。|リサーチバンク

10月27日から11月9日は「読書週間」ということで、ライフメディアのリサーチバンクがこんな調査を行っています。

10代から60代の全国男女に対し、本を読む頻度を尋ねたところ、46%が月に1冊以上本を読んでいることが分かった。

ちょっといろんな意味で考えさせられた、というかツッコミを入れざるを得ない調査だったのでエントリーにしておきます。

リサーチバンクはここ数年、毎年同じような調査を行っています。「月に1冊以上本を読んでいる」人の割合を推移で見るとこんな感じです。

2010年 55%

2011年 56%

2012年 49%

2013年 46%

他の調査でも「月に1冊以上本を読んでいる」人の割合はだいたい50%前後なので、この調査結果が大きくぶれているということはないと思います。ただ、こうして推移で見ると、3年前から10ポイント減というのが「本離れ」の傾向を示しているようで、「これが出版不況の原因か!」と思いたくなりますね。

「月に1冊」からは「雑誌・漫画」はおろか、「電子書籍」まで除外されている

しかし、この調査の質問は、こうなっています。

Q1.あなたは普段、平均してどのくらい本を読みますか?(雑誌・漫画・電子書籍等は除く)

「雑誌・漫画・電子書籍等は除く」なのです。

「読書」に雑誌や漫画は含まれないというのは昔からそうなので、納得はできないけど理解はできます。ただ、出版統計には雑誌や漫画もばっちり含めているわけですし、漫画の売上によって経営が支えられている出版社も多い(特に大手)のですよね。「除く」のではなく、含めた上で区別すればいいのに。

なお、先日書いた下記の記事でも指摘をしているとおり、2000年を基準にして考えると、「雑誌」や「ビジネス」「専門書」の落ち込みはひどいですが、「コミック」「文庫」はそれほど変わっていないというのが実態です。

そして「電子書籍等は除く」に関しては、理解もできない。ボクはここ1年くらい電子の本ばかり読んでいて、紙の本をほとんど買ったり読んだりしていません。だからもしボクがこの質問に答えると「1年に1冊程度」ということになってしまいます。電子の本が含まれるなら、漫画を除外したとしても「週に数冊」は読んでいるのに。まあ、ボクみたいなのは、まだ極めて少数派でしょうけど。

電子書籍の利用経験には、雑誌・漫画が含まれている

また、調査サマリーにはこんな一文もあります。

10代から60代の全国男女に対し、最近1年間の電子書籍の利用について尋ねたところ、有料無料問わず何らかの電子書籍を1年間に利用した人は、21%程度だった。

これ、質問はこうです。

Q5.あなたは、最近1年間に電子書籍を利用しましたか?

ライフメディアに問い合わせてみたのですが、Q5.の意図としては雑誌・漫画も含まれるそうです。Q1.で「雑誌・漫画・電子書籍等を除く」とあるので、てっきりここでもそのままの流れで雑誌・漫画を除いているのかと思ったのですが、そうではないと。回答者でも勘違いした人、結構いるんじゃないかな。

2012年の売上比率は?

ところで、8月に行われたJEPAの「eBookJapanの電子出版への挑戦」というセミナーで、興味深いデータが提示されました。

紙の売上グラフには省略線が入っており、電子の売上は紙に比べればまだ極めて小さい(4.2%)ということがわかると思います。しかしコミックは、2012年の時点で既に電子の売上比率が結構高く(16%)なっています。電子書籍市場768億円のうち、584億円(76%)はコミックなのです。

これは、漫画に強いeBookJapanが勝手に言ってる話ではなく、データ出典はインプレス「電子書籍ビジネス調査報告書2013」です(紙は出版科学研究所「出版月報」2013.1月号・2月号)。資料や動画はepub cafeにアップされています。まとめ記事はこちら

コミック(紙)の対前年比が▲3.5%ということは、136億円の減です。コミック(電子)の対前年比が+14%ということは、72億円の増です。フィーチャーフォンの売上も落ちているので、電子で紙の売上減を補うところまではいってませんが、Kindleストア上陸が2012年10月25日の話ですから、2013年の数字は結構期待できるのではないでしょうか。

で、リサーチバンクの「読書に関する調査」は、大雑把に言えばQ1.は左側の真ん中だけ。Q5.は右側だけを調べているわけです。もっとも、図書館で借りて読んでいる人もいるでしょうが、読書量と売上は少なくとも比例はするでしょう。「出版」という大きな枠組みで捉えると、かなりの部分が無視された調査になっています。

最も大きな問題は、このリサーチバンクの発表や、それを取り上げたニュース記事を読んだ人が、こうした事実をちゃんと把握できるか? というところにあります。記事になったときに「雑誌・漫画・電子書籍等は除く」が省略されちゃってるような場合もありますし……困ったものです。

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