7月10日に行われた、『Jコミ』改め『絶版マンガ図書館』の正式発表記者会見をレポートさせて頂きます。
『Jコミ』は7月11日に大幅バージョンアップします。それを期に『絶版マンガ図書館』へ名称も変更します。「J」なので、ジャンプ作品しか扱っていないと思っている人もいたそうで、誰が見ても分かるようにするのが目的だそうです(裏の理由も述べられましたが、そちらはナイショということで)。
Jコミがこれまでやってきたことは、以下のとおりです。
- ウェブで絶版マンガを無料公開&広告収益を著者へ100%還元
- JコミFANディング(クラウドファンディング)
- Jコミで印刷できるってよHD(オンデマンド印刷版)
広告収益モデルは、知名度と古さにも依るけど、出版社や電子書店からの売上が年1000円未満であれば、確実にJコミへ入れた方がいいという結論が出ているそうです。初月でクリアできるとか。逆に、年1万円以上儲かっているタイトルは、有料のまま置いておいた方がいいとか。
『絶版マンガ図書館』がめざすこと
『絶版マンガ図書館』がめざしているのは、以下のようなことです。
- サイバーロッカーやWinnyなどの海賊版の撃滅
- 出版社が扱わななくなった作品の収集・図書館化
キーワードは以下のとおりです。
- 電子書籍版「YouTube」を目指す
- 絶版判定アルゴリズム
- 全巻無料閲覧&広告収益100%還元
(これまでのJコミと同じ)
- 海賊版にダメージを与えるDMCA申請代行
- キンドル(KDP)に同時登録可能
(Jコミ手数料5%)
- 無検閲のスマートフォン用アプリ
(これまでのJコミと同じ・プラットフォームの審査を逃れる)
- 高精細オンデマンド印刷
(作者印税30%・Jコミ手数料20%)
- 電子透かし入りPDFストアを出店可能
(販売額が月1万円以下なら手数料無料・8月か9月開始予定)
- マンガ専門Wikiとデータベースを構築
電子書籍版「YouTube」とは?
ユーザーが作品Aの「資料」を非公開のままアップロード(著作権法30条の3「検討の過程における利用」を根拠とする)すると、Aが絶版かどうかを自動判別します。
絶版ではない場合はAを削除します。絶版であることが確認できた場合は、ランダムな5ページを透かし入りで公開し、Aの作者からの連絡を待ちます。
作者から連絡が届き、公開OKの場合は全ページを無料公開したり、アプリ配信やKDP配信代行をします。公開NGの場合は、漫画版Wikipediaとして活躍します。また、GoogleにDMCA侵害申請し、海賊版にダメージを与えます。
『マンガ専門wiki』とデータベースについて
これまで赤松健さんが自分で調べて書いていた「赤松健による解説」がそろそろ手が回らないので、wiki形式にして読者・著者自身に委ねるというものです。
漫画フキダシ自動検知&データ化&翻訳
セリフを文字列化することで、検索できたり研究できたり、広告マッチング精度を高められます。東大の相澤研究室と、漫画の画像からのセリフ検出共同研究をやっているそうです。
作者が許可すれば、翻訳して海外向け配信という展開もあり得ます。出版社だと精度が求められるため、OCRや自動翻訳は避けられているそうです。
Jコミが他社と提携してスマートフォン用アプリを展開
Jコミはライト層に弱いため、強いところと手を組みたいと思っていたとのこと。そこで、ソフトバンクグループのSBイノベンチャー(株)と提携して、無料でコミックが読める「ハートコミックス」を今秋よりApp Storeで提供開始するそうです。
質疑応答
赤松健さんはお金持ちだけど、これまでのように手数料ゼロだと『絶版マンガ図書館』を持続的な事業としてやっていくのが厳しい日がくるのでは……? という質問が出ました。これは前述のとおり、今後はKDPやオンデマンド印刷で手数料を貰うようになること、純広告にもう少し力を入れること、漫画家のエージェント事業的なこともやっていくとの回答でした。
行方不明作家の孤児作品は、将来的に文化庁裁定によって公開することも視野に入れているそうです。
R18に関しては、基本は作者の意志で決めているとのことです。
メルマガ「はんぺん」は、今後も続けるけど内容が固すぎるのでもう少し柔らかくしていきたいとのこと。
翻訳は自動だけでなく、人間が修正することも可能(ただしボランティアベース)です。
[追記]
これ重要でした。
赤松健さんによる『Jコミ』改め『絶版マンガ図書館』記者会見レポート : 見て歩く者 by 鷹野凌 http://t.co/c5r4akGIAJ ★ヤラセではないことを証明するため(笑)、会場からの声で「はるかリフレイン」を自動セリフ解析。なかなかの精度でフキダシを確定できている。
— 赤松健 (@KenAkamatsu) 2014, 7月 10
こんな質問してみました
@ryou_takano 最初から色々やると失敗しがちなので、まずはKDPからということで。(^^;)
— 赤松健 (@KenAkamatsu) 2014, 7月 11