リアル書店で電子書籍を売るO2O事業が続々登場 « マガジン航[kɔː]
昨年12月24日にマガジン航へ寄稿した「リアル書店で電子書籍を売るということ」の続編です。朝日新聞が「ジャパゾン」と報じた、電子書籍販売推進コンソーシアムによる実証事業について。
リアル書店で電子書籍を売る意味について
リアル書店で電子書籍を売る意味について。これは前回の記事でがっつり書いてますし、直前にINTERNET Watchへ寄稿した「紙と電子の相互補完──三省堂書店が電子書籍を販売するわけ」でもがっつり紹介してますので、今回の記事ではそこは省略しました。
しかし「なぜ書店で電子書籍を買う人がいると思ったのか」といった反響を見ると、箇条書きでも載せたほうがよかったかな……という気がします。リンク貼ってあっても、リンク先までは読まない人が多いですよね。ちょっと失敗。
- 本はまだ、圧倒的にリアル書店で売れている(2012年で全出版物販売額の72.8%)
- クレジットカード決済額は民間最終消費支出の17.4%(2011年)で、まだまだ現金決済を好む人が多い
- 圧倒的大多数の一般ユーザーは、ネットユーザーほどITに詳しくない(デジタルデバイド問題)
- 紙の在庫が切れてしまっている場合でも、電子で代替できる
- プレゼントできる
例えばゲームでも、店頭で「ダウンロード版」を販売してたりするわけで。
ネットユーザーには不要のサービスだとしても、低年齢層やITに詳しくないユーザーには良いと思うんですけどね。そういう意味では、端末を展示するのはいいけど「スマホで読めます」ってポスターも貼った方がいいかも? 専用端末じゃないと読めないって誤解されるから。
売り方について
カードの展示方法について。有隣堂のように1ヶ所にまとめて目立つようにするやり方と、三省堂書店のように分散させる方法のどちらも、「認知」させる手段です。どういうやり方がいいのかは書店の現場でもいろいろアイデアが出ているようですし、思いつきで「こういう方法はどうだろう?」みたいなことを部外者が言っても……というのがあったので、マガジン航の記事では触れませんでした。
ただ、個人的には、以前ITmedia eBook USERで紹介された「図書館の電子書籍をより可視化する方法」のように、カードを書籍に挟み込んだり、書籍の上や下に置いたりと、棚に溶け込ませた方がいいのではないかと思っています。「デジ本プラス」は、まさにそういうやり方(”付録”的扱いなので、当然といえば当然ですが)なんですよね。
「デジ本プラス」は雑誌に挟み込まれている(赤い紙)
「BooCa」の裏の目的
昨日、日経にこんな記事が出ました。電子書店閉鎖時のトラブルを防ぐために救済策が必要だ、という内容です。
電子書籍、ルール周知が課題 サービス停止でトラブル相次ぐ 買うのは「読む権利」、利用者と意識に溝 :日本経済新聞
実はメディア向け説明会で配布された資料にチラッと書いてあるのですが、「BooCa」は「BookLive!」と「楽天Kobo」という全く異なる2つの電子書店を、1つのプラットフォームで相互乗り入れする仕組みです。
「BooCa」説明会資料
これは将来的に、ある電子書店が仮に閉鎖するような事態が起こった場合でも、他の電子書店で購入履歴をカバーすることを目標に設計しているそうです。ただ、残念ながら現時点の「BooCa」は、それが可能な仕組みになっていない(あくまで「将来的に」という話)ので、記事中で触れるのはやめました。
というのは、例えば「ブックリスタ」の参加企業は、閉鎖時に他の電子書店で救済することを視野に入れた提携をしていたはずなのですが、楽天が「Raboo」を閉鎖する時には役に立たなかった前例があるからです。
問題は、システム的に連携させて技術的には移行が可能になっていたとしても、著作権者や出版社の許諾が別途必要なんですよね。たぶんそっちの障壁の方が大きいのだろうな、と。「車で聞きたければCDを持って行くか、それがいやならもう1枚買えば良い」という考え方は、出版系の人も同じですもんね。