毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「著作権侵害でスクエニ家宅捜索、『ハイスコアガール』自主回収」「『ジブリ、ドワンゴ傘下に』はデタラメ」などが話題になっていました。
個人マネーでマンガ家育成へファンド組成 :日本経済新聞 ※2014年8月3日
1週前ですが、見落としていたのでピックアップ。コルクの佐渡島庸平さんによる新しい仕掛け。クラウドファンディングではなく、資金回収を前提にしたファンドというのが面白い。1人1口1万570円で、総額約130万円が2日間で集まったそうです。
羽賀翔一のマンガファンド、応募期間を2ヵ月用意していたのですが、たった2日ですべての枠が埋まってしまいました。応募してくださった方々、ありがとうございます!
— 佐渡島庸平 (@sadycork) 2014, 8月 10
日本雑誌協会、電子書店10社と「デジタル雑誌愛読キャンペーン」 – ITmedia eBook USER ※2014年8月4日
業界団体主導で行われるキャンペーンで、Amazon Kindleストアが含まれているのは珍しい。逆に、雑誌専業の『zinio』や『dマガジン』が含まれていないのが気になるところですが。
電子書籍事業者のサービスが終了したら、購入済みの本も読めなくなった!(メールでよくある情報提供と回答)_国民生活センター ※2014年8月4日
国民生活センターのFAQに載りました。「利用規約等に必ず目を通し、再配信に関する規定を確認しましょう。」とのこと。デジタル著作権管理(DRM)にも触れて欲しいところだけど、説明が難しいか。
マッグガーデンの『コミックブレイド』がWebへ移行、『月刊コミックガーデン』の創刊も – ITmedia eBook USER ※2014年8月5日
「休刊」ではなく、Webへ移行。9月1日公開。しかし別途、月刊誌を創刊するというのが、何か不思議な感じ。
紀伊國屋書店Kinoppy 2.0が登場 高速化と新UIにより読書体験が大幅向上 – ITmedia eBook USER ※2014年8月5日
自分の記事ですがピックアップ。本棚・読書アプリとしては、頭ひとつ飛び抜けているのは間違いありません。問題は、ウェブストア。
凸版印刷の4~6月、営業益80%減の10億円 出版印刷が苦戦 :業績ニュース :企業 :マーケット :日本経済新聞 ※2014年8月6日
大日印・共同印が最終増益 4~6月、凸版は減益に :業績ニュース :企業 :マーケット :日本経済新聞 ※2014年8月7日
印刷会社大手3社の四半期決算。凸版の売上は3%減だけど、営業益80%減の主要因は新工場立ち上げ費用に依る。大日本印刷の売上は2%増だけど、情報コミュニケーション部門(出版印刷・商業印刷・電子書籍など)の営業益は26%減。共同印刷の連結純利益は67%増だけど、雑誌印刷は振るわず、伸びてるのはラミネートチューブ。「消費増税による購買意欲の低下も逆風」は、出版だけではなく国内全ての産業に及んでいるようですが……。
スク・エニに家宅捜索 人気漫画「ハイスコアガール」がゲームキャラ無断使用・著作権侵害の疑い (1/2) – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
「ハイスコアガール」スク・エニ告訴でSNKプレイモアが説明 「なんら誠意ある対応なかった」 – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
「ハイスコアガール」著作権侵害問題でスク・エニがコメント – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
「ハイスコアガール」問題、カプコン・ナムコ・セガはキャラクター使用を許諾済み – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
「ハイスコアガール」単行本を自主回収 スク・エニ「著作権侵害の認識はない」 連載は継続 – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
見出しだけで何が起きたのかだいたい状況が把握できますが、ボクがよく分からない点を以下に列記しておきます。
- カプコンなど他社には事前にちゃんと確認して許諾を得ているのに、なぜSNKプレイモアだけ無断使用になってしまったのか?
- 昨年夏ごろに無断使用が発覚、SNKプレイモアは「販売の即時停止を求めた」ようだが、なぜいきなりそんなに強硬なのか? 使用料払って手打ちにできなかったのか?
- 単行本は自主回収、電子版は配信停止だが、『月刊ビッグガンガン』での連載は継続とのこと。本誌のストーリー展開がどこまで進んでいるか分からないが、SNKプレイモア作品を出さない方向になる?
- 9月発売予定だった6巻は『真サムライスピリッツ』『ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)’95』(※どちらもSNKプレイモア)から始まるので、発売は無理そう?
もう一つ言及しておきたいのが、『ねとらぼ』の記事について。最初のタイトルは『漫画「ハイスコアガール」スク・エニが自主回収 デジタル版もすべて削除へ』(※魚拓)というものでした。
「削除対応」?配信停止ではなく?|漫画「ハイスコアガール」スク・エニが自主回収 デジタル版もすべて削除へ – ねとらぼ http://t.co/KYEpcKxGqK @itm_nlabさんから
— 鷹野 凌/月刊群雛8月号発売中 (@ryou_takano) 2014, 8月 6
「すべて削除」なんて書き方をしているので、もしかしてユーザーが購入済みのコンテンツまで削除されるのか? それとも再ダウンロードができなくなるのか? という憶測も流れました。まあこれは、電子書籍が「有効期限が明記されていないレンタル本」に過ぎないと認識されてしまっている以上、そう思われても仕方がない部分はあるでしょう。
「ガラスの仮面」などの過去の事例から、2以下はまずないものと思われる。 "1. 既購入者は再ダウンロード可能 " ハイスコアガールがSNKプレイモアから承諾を得ていなかった件で電子書籍版はどうなる? – 最終防衛ライン3 http://t.co/3VnEcIY9YL
— 鷹野 凌/月刊群雛8月号発売中 (@ryou_takano) 2014, 8月 6
・何らかのトラブルで販売停止された「ガラスの仮面」電子版はいまでも再ダウンロード可能
・KADOKAWAが自主回収した 「妹ぱらだいす!2」電子版はいまでも再ダウンロード可能
・STAP細胞疑惑発生後に販売停止になった「細胞のお姫様」電子版はいまでも再ダウンロード可能
— 鷹野 凌/月刊群雛8月号発売中 (@ryou_takano) 2014, 8月 6
後に『ねとらぼ』のタイトルは『漫画「ハイスコアガール」スク・エニが自主回収 デジタル版は配信停止』(※魚拓)に変更され、「デジタル版の新規購入はできない状態ですが、「購入済みのデジタル版が読めなくなることはない」方針で、購入済みの人がデジタル版を再ダウンロードすることも可能だそうです。」という情報が追加されます。
既報の文面をしれっと書き換えるのではなく、追記を入れるか、別記事で初報とは違っていた旨をきちっと説明して欲しい……。
ジブリ、ドワンゴ傘下に すでに蜜月関係 仰天身請け話が浮上したワケ (1/2ページ) – 芸能 – ZAKZAK ※2014年8月5日
「ジブリをドワンゴが買収」報道に川上会長「まったくのデタラメ」 – ITmedia ニュース ※2014年8月6日
上の『ジブリ、ドワンゴ傘下に』が産経の『zakzak by 夕刊フジ』なので、単なるゴシップに過ぎないと思うのですが、結構釣られてた人が多かったようです。ドワンゴ川上会長がITmediaの取材に対し「まったくのデタラメ」と言ったところまではいいのですが、はてなブックマークの kawango や koizuka のコメントまで載せちゃうのが何とも。
月間売り上げ10億円を突破――アムタスの電子書籍配信サービス – ITmedia eBook USER ※2014年8月6日
ちょっと驚きました。『eBookJapan』の今期売上予測が50億円(PDF)ですから、売上規模的に倍以上ということになります。決算資料(PDF・22P)によると、2011年11月からスマートフォン向け事業を開始し、それまでフィーチャーフォン依存だった売上を見事にシフトしています。
ここまでスマホシフトがうまくいってる事例って、他にもあるんでしょうか? ちなみに取次はメディアドゥ、ビューワはセルシスの「BS Reader for Browser」を使っているようです。
【新文化】 – 出版協の加盟4社、再販違反で日販に違約金請求 ※2014年8月6日
出版協の怒りの矛先が、Amazonだけではなく日販にも向けられたということで、ピックアップしておきます。「看過すると、再販制度が崩壊しかねない」と批判したそうですが、日販どうするんでしょうね?
ソニー欧州法人、電子書籍端末の新モデルは今後発売しないことを明らかに – ITmedia eBook USER ※2014年8月6日
ソニーもReaderの後継モデルについて言及、日本では…… – ITmedia eBook USER ※2014年8月6日
ついにソニーの新端末が出なくなるそうです。「日本では、PRS-T3の在庫がほかの地域に比べて厚めに確保されており、すぐに入手できなくなるようなことはなさそう」とのことですが……。
2014年、84%の出版社が電子書籍の制作を計画 – ITmedia eBook USER ※2014年8月6日
アメリカの出版社に対するアンケート調査。EBOOKを出したことがある出版社は63.26%、2014年に出そうと思っているのが83.72%。日本で同じ調査をやったら、どのくらいになるかな……。
E1594 – 電子書籍を長期保存するために:論点整理 | カレントアウェアネス・ポータル ※2014年8月7日
国立国会図書館によるレポート。デジタル著作権管理(DRM)が「保存には頭の痛い課題」だと明言しています。
利用者が増えるどころか希望者が減る状況―定期調査「電子書籍」(12) – インターネットコム ※2014年8月8日
「電子書籍」未経験者702人のうち、読みたくない人が70.1%(492人)。前回5月の調査では未経験者684人のうち、読みたくない人が65.8%(450人)。前々回1月の調査では未経験者679人のうち、よみたくない人が71.7%(486人)。まあ、ぶっちゃけ誤差の範疇じゃなかろうかと思うのですが。
しかし、未経験者が関心のない理由として1番に挙げるのが「画面では読みにくい」というのは、やはり先入観なんでしょうか? 実際に使ってみると印象が変わる人、多いんだろうなあ。
NHN PlayArtの「comico」が累計400万ダウンロードを突破 – ITmedia eBook USER ※2014年8月8日
6月30日に300万ダウンロード突破したばかりですが、1ヶ月ちょっとで100万ダウンロード増えてます。凄いなあ。