毎週月曜恒例でしたが、今回は1日遅れました。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「FacebookとGoogleが、捏造記事とキュレーションサービスに対策」「電書購入が作家支援にならない?」などが話題になっていました。
レベルアップに必要なのは師匠? メンター? ライター交流会イベントレポート CONTENTZ(2017年1月29日)
「新人育成」という意味で興味深いレポート。なのですが、1点とても気になったことが。“商用利用で東京タワーを勝手に写真に撮っちゃいけない” の法的根拠はなんだろう? 東京タワーやスカイツリーの写真を商業媒体に載せるのに対価を要求されるという話は知っているのですが、著作権法46条2項2号「建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」を除けば建築の著作物は自由に利用できるはずなのですよね。これっていわゆる「疑似著作権」問題では。
「無料モデル」は難しい 少なくとも「物語」においては ITmedia NEWS(2017年1月30日)
堀田純司氏による冷静な意見。事例を挙げながら、炎上ビジネスは文芸でも昔からあるが、「物語」において無料公開は持続可能なモデルなのか、それで作家を育てることはできるのか、という疑問を投げかけています。新しい生態系を築くのは「有料」だという堀田さんの意見を私なりに補強すると、「Kindle Unlimited」と「Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)」の組み合わせがまさにそれ。独占配信しなければならないのが、私にとってはネックなのですが。
Amazon欧州法人、出版社との間で交わされている電子書籍販売契約の「最優遇条項」排除へ、独禁法違反回避のため hon.jp DayWatch(2017年1月31日)
「ライバル電子書籍ストアより優遇するように」と明文化されていた条件を撤廃するとのこと。これは、昨年8月に日本でも公正取引委員会が立ち入り調査を行った理由でもあるので、日本に波及するかもしれません。ただ、もしかしたら、他ストアでのセールに勝手に自動追随するのを利用して稼ぐ、いわゆる「アマゾンハック」も同時に対策されるかもしれません。
「電子書籍の購入は作家の応援にならない」は本当? 現役編集者に聞いた KAI-YOU.net(2017年1月31日)
物議を醸していた記事。簡単に言えば「市場規模がまだ小さい」ということなのですが、マンガに関してはそうでもないのですよね。そこに触れていないから、妙な言い訳に聞こえてしまう。ちょっと驚いたのは反響。以前と比べ、明らかに電子擁護派が増えています。隔世の感があるなあ。
出版状況クロニクル105(2017年1月1日~1月31日) 出版・読書メモランダム(2017年2月1日)
毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。「新文化」のインタビューによると、出版輸送がすでに危機的な状況にあるとのこと。これは出版以外も同様で、トラックの運転手は「キツイけど給料はいい」仕事だったのが、「キツイし給料も安い」になりつつあるという話を聞いたことが。ネットで注文したその日のうちに送料無料で届く、みたいな便利さが、なにを犠牲にして成り立っているのか? ということなのかな、と。
最高裁、「グーグル」結果削除は公共性を重視 日本経済新聞(2017年2月1日)
「表現の自由」を重んじた最高裁判決。ただし、「忘れられる権利」に関しては言及がありませんでした。「公表されない利益が優越することが明らかな場合」という、その「明らかな」というのはどう判断すればいいのでしょうね?
電通グループからの「成功報酬」-買われた記事01 ワセダクロニクル(2017年2月1日)
電通PRからKK共同に、記事配信の成功報酬が支払われていた、という話。私はこの記事内容より、これが早稲田大学ジャーナリズム研究所による「非営利型の調査報道メディア」だという点に興味を惹かれました。月々1000円から寄付を募ってますので、こういう活動を応援したい方はぜひ。
Facebook、捏造や扇情的でない記事を優先するようアルゴリズムを変更 TechCrunch Japan(2017年2月1日)
Facebookによる捏造記事対策。しかしこれ「今拡散している話題を素早く表示する」施策と同時に行われるあたりに、すっごい不安を感じるのですが。
J:COM、電子雑誌読み放題サービス始める 新文化(2017年2月1日)
オプティム(読み放題サービス「タブホ」)のプラットフォーム。「雑誌コース」は既存サービスとの競合ですが、「NHKテキストコース」は他にはない(「タブホ」にも)んじゃないかな?
「電子書籍の購入は作者の応援にはならない」の嘘 アオシマ書店(2017年2月2日)
ゲーム作家・米光一成氏によるカウンター。そんなのは「一部」だけだ、と。ジャンルによっても、出版社によっても、もっと言えば担当者によっても違いがあるでしょう。一部を見て全体を知ったような気になるのは危険。同時に、全体を見て一部の違いを見落とすのも危険。陥りがちな罠、気をつけたい。
ネット時代の編集者や出版社の価値は? 新人発掘と育成機能について敏腕編集者が対談 INTERNET Watch(2017年2月2日)
自分の書いたレポートですがピックアップ。「電撃文庫」から飛び出した三木一馬氏と、「JUMP j BOOKS」編集長の浅田貴典氏。めちゃくちゃ面白い対談イベントでした。私が書いたのは後半パートだけなのですが、取材していた人は他にもいるので、たぶんそのうち前半含めた詳細レポートが他のメディアから出るのではないかと思われます。
Google、日本語サイトの評価方法を変更 検索上位狙う「低品質なコンテンツ」の順位ダウンへ ITmedia NEWS(2017年2月3日)
キュレーションメディア“狙い撃ち” Google検索、アルゴリズム変更の狙い ITmedia NEWS(2017年2月3日)
Googleによる「SEO対策」対策。Googleが「日本語検索の品質向上にむけて」と公式発表をするのも極めて異例とのこと。効果は既に、そして劇的に現れているようです。
メディアドゥ、集英社と資本提携 電子書籍強化 日本経済新聞(2017年2月3日)
見出しが集英社だけだったので驚いたのですが、既に小学館と講談社も資本を入れているとのこと。いずれKADOKAWAも? トーハンや日販にはその前身時代から大手出版社がガッツリ資本を入れて支配しているわけで、電子取次にも同じような動きがあっても不思議ではありません。ただ、これによってベンチャー企業らしい素早い動きが、阻害されてしまうかもしれないという懸念が少し。まあ、数%程度なら発言権はそれほど強くないとは思いますが。
IDPF+W3Cの組織統合スタート、IDPF自体は団体活動停止、電子書籍ファイルフォーマット「EPUB」はW3C管轄下に hon.jp DayWatch(2017年2月2日)
Publishing@W3Cがスタート EBook2.0 Magazine(2017年2月2日)
結局無事に組織統合完了。統合反対派のOverDriveステイーブ・ポタシュCEOは、IDPFの前身組織の創設者だったのですね。なるほど納得。
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