出版(紙・電子問わず)関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。先週は、司馬遼太郎作品の電子化が発表され、話題になっていました。
「エラー451」の時代はやってくるのか? « マガジン航[kɔː] ※2013年6月3日
台湾では著作権法によるウェブサイト封鎖が検討されており、今後は「エラー404(ページが見つかりません)」ではなく「エラー451(法的な理由でアクセス不可)」だらけの時代になってしまうのでは?という危機意識の記事。日本も「児童ポルノ改正法案」がイラストなどにも適用を検討されており、他人ごとではありません。
ちなみに、例えばGoogle+やPicasaにエロ画像をアップすると、アルゴリズムで自動的に画像が削除されたり、アップロードした人はアカウント凍結されたりします。Appleがエロ表現に厳しいのは有名です。政府に法規制される前に、企業が自主規制していると捉えるべきなのでしょうけど……。
【児童ポルノ改正法案問題】社会倫理と表現規制の先行事例としてハリウッドのヘイズコードを再考してみる ※2013年6月3日
漫画に「表現の自由」は必要だろうか? ※2013年6月3日
ハリウッド映画に「ヘイズ・コード」という自主規制がかつて存在したというのは知りませんでした。国が法として規制する前に、業界がきちっと自主規制(ゾーニングなど)しておくべきではないだろうか?という主張も、ある意味で正しいと思います。ただ、国の規制というのは「絶対」なので、言ってみれば「いままさに銃殺されようとしている」わけです。そういうタイミングで「銃の所持を業界自主規制で抑止しよう」と言われても……という思いも。こういうみんなが注目しているタイミングだからこそ、というものかもしれませんが。
ブロガーにこそ勧めたい:「個人出版」を語り尽くした、勝間×いしたにトークイベント – ITmedia eBook USER ※2013年6月3日
仕事で行けなかったのが残念。勝間無双になぎ倒される人もいれば、嫉妬でメラメラと燃えている人もいるようです。まあ、セルフパブリッシングは「書く」ことだけではなく、「作る」「売る」まで考えなきゃいけないというのが、面倒なところでもあり面白いところでもあるのですが。
緊デジ(経産省の電子書籍化事業)の成果が謎すぎる件 | 電明書房 ※2013年6月3日
ボクも、タイトルリストのPDFを見て、1ページ目に「究極超人あ~る」や「健太やります!」が載ってて、あれあれ?と思った口ですが、ここで言われているような「疑念」の大半は、情報がちゃんと開示されていないことから起きる話。緊デジは国が予算付けてやってるわけですから、少なくとも「タイトルだけ」みたいな公表の仕方じゃダメでしょ。
第2回:佐々木大輔(LINE株式会社 執行役員)1/5|インタビュー連載「これからの編集者」 | dotPlace (α) ※2013年6月3日
ライブドアブログの佐々木大輔氏インタビュー。著書「セルフパブリッシング狂時代 [第二版]」や「セルフパブリッシング狂実録 – 誰でも作家時代の作家論」に書かれていることが中心なので、興味を持たれた方は本の方もぜひ。
電子書籍市場、出版社と書店の間に“意識のずれ” – 株式会社 MM総研 ※2013年6月3日
市場調査やコンサルティングをやる会社が、この程度の認識とは……と、強い批判を受けていた記事。この内容、たぶん書店へのインタビューしかしてないんじゃないかな……? まあ、MM総研の調査レポートには、注意した方がいいですね。
楽天、出版取次3位傘下に 2000書店で受け取り :日本経済新聞 ※2013年6月4日
日経ソースなので眉唾で見ていたのですが、朝日新聞でも報道されました。楽天単独ではなく、講談社、小学館、集英社、大日本印刷が出資を検討しているというもの。「大阪屋といえばAmazon」という印象が強いですが、主要仕入先は既に日販へ変更されています。「救済」という側面が強いのかな、という印象。
お知らせ|Reader™ Store|ソニー: PlayStation(R)Vita 対応コンテンツについてのご案内 ※2013年6月4日
Reader Store には PS Vita 非対応のコンテンツが多かった(VitaはEPUBしか対応していないため、.bookで買ったコンテンツがVitaでは読めなかった)のですが、対応できるようになったというリリース。内部事情を知っている人からすると「なにげに凄いニュース」みたいですが、いままでマイナスだった部分がゼロになっただけとも……。
電子書籍購買層拡大の起爆剤に、文藝春秋が司馬遼太郎「竜馬がゆく」電子化 -INTERNET Watch ※2013年6月4日
こういうビッグネームが電子化されると、それをきっかけにして始める人が増えるでしょう。そして、増えたユーザーが失望しない程度のサービスは、既に各社提供できていると思います。ここ1年間で、どの電子書店も急激にサービスが良くなっています。では、競争に勝つのはどこか?といえば……
電子書籍の購入予約が可能なKindleストア、iBookstore、楽天koboでは、6月3日から予約も開始された。
こういうところで確実に差がつきますよね。この3社以外で購入するのは、各社が既に抱えている既存顧客だけではないでしょうか。新規顧客の多くは、「購入予約」ができるところに獲られちゃうと思いますよ。ただでさえ強いKindleが、ますます強くなるわけです……。
honto – hontoビューワーアプリの端末登録数上限が増えました。 – hontoからのお知らせ一覧 ※2013年6月4日
ようやくhontoも「5台」制限に。これで「対応デバイス一覧」でチェックをしている電子書店からは、「3台」という制限がなくなりました。ボクくらい何台も持ってて検証しなきゃいけない場合でも、5台制限ならさほど不自由しません。ただ、例えばReader Storeみたいに、登録した端末からじゃないと登録解除できないという仕様だと、故障したときに困っちゃうのですけど。
<電子書籍不正>被害額2170万円 160人関与か (毎日新聞) – Yahoo!ニュース ※2013年6月4日
2170万円という被害額も凄いですが、不正利用ID数が約160人というのも凄い。
LINE、書き起こしの小説を無料で楽しめる「LINEノベル」を公開 – ITmedia eBook USER ※2013年6月4日
プロの小説家によるLINEのための書き下ろし作品の配信。同時に始まった、友だち登録数と投票で大賞が決まるという小説新人賞もユニークですね。
「旅者の歌」に見る――電子書籍プロモーションの新たな取り組み – ITmedia eBook USER ※2013年6月5日
1つの作品が2カ月で1万ダウンロードというのは、AppStoreの「もしドラ」とかKindleストアの「Gene Mapper」とか、いくつも前例があると思いますが……ただ、
これは、今までの出版社全体に言えることなのですが、出版社は今まで高いところからの視線で読者を見ていたと思います。しかし、今の若い人やネットを使いこなす人たちにとっては、そのような視線の高さの違いが障壁になっていました。それが出版社のWebビジネスが上手くいかなかった理由なのではないかと考えています。
こういう反省の弁が出てくるというのは、いいことじゃないかな、と思います。
ちなみに「旅者の旅」は独特の世界観が結構好きなのですが、話が中途半端なところで終わっちゃってるのが残念。著者の小路幸也さんに「続きが読みたい」とMentionを送ったら、
@ryou_takano ありがとうございます。続きは書きますのでよろしくお願いします。
— 小路幸也さん (@shojiyukiya) 2013年6月5日
楽しみにしてます!
本の目利きが選んだダ・ヴィンチ「2013上半期 BOOK OF THE YEAR」発表 | ダ・ヴィンチ電子ナビ ※2013年6月5日
ボクも依頼されて何冊か投票したのですが、対象が「2012年10月1日~2013年4月6日に刊行された書籍」という条件なので、リストアップしたらえらい少なくなってしまったという。そこそこ冊数は読んでいるつもりなのですが、電子書籍ばかりを買ってるので、新刊本より既刊本のウェイトが大きくなってるというのはあるかも。しかし1冊もランクインしなかったというのは、ちょっと偏り過ぎか……。
なかよし編集部がpixivで未来の漫画家支援 「漫画どう描く?」講座オープン – ねとらぼ ※2013年6月5日
最近このような形での「未来の漫画家を応援」するプロジェクトをよく目にするような気がします。紙の漫画誌がなくなってしまった時に、出版社が果たしていた「新人の発掘・育成」機能が失われてしまうのではないか?という危機意識が、さまざまな形で具現化している感じですね。
hon.jp DayWatch – 米Amazon、加Koboの後を追い、書店店頭での電子書籍端末の販売を模索か ※2013年6月6日
日本では既に有隣堂書店がKindle端末を売ってますが、本国アメリカではまだやってなかったんですね。電子書籍が普及しても紙書籍を駆逐することはない、ということがはっきりしてきたから、書店側の態度が「Amazon敵視」から「Amazonと協調」に変わったのかな?
9.7インチ画面の Kindle DX が Amazonで復活、無料3Gつき299ドル – Engadget Japanese ※2013年6月6日
いまさらなぜ?というニュース。倉庫に眠っていて忘れられていた在庫が掘り起こされたのか、次の一手への布石か。
くら寿司に行けば手塚作品が無料で読める「TEZUKA SPOT」 – ITmedia eBook USER ※2013年6月6日
最近の手塚プロダクションは、次から次へ新しいことを始めますね。ちなみに、日曜日にこんなツイートが。
手塚マンガを読みたいのもあり、くら寿司に行ってみたら脅威の68組待ち。あきらめて移動(ToT)
— 星野泰視さん (@pochin55) 2013年6月9日
「TEZUKA SPOT」効果でしょうか? 68組待ちって凄いなあ。
オール新作オール無料:秋田書店、Webコミックサイト「Champion タップ!」を7月オープン – ITmedia eBook USER ※2013年6月7日
紙の漫画誌を休刊する代わりにウェブコミック化するのではなく、オリジナルのウェブコミックを新たに立ち上げるという前向きな話。ただ、そろそろ数が多過ぎて追い切れない(※リンク先はWEB漫画まとめサイトの配信サイト一覧)というのが正直なところ。紙の漫画誌みたいに「サイト自身がどういう読者層を想定しているか?」というのを、明確にして欲しいところです。
ブックスキャンら4社、「日本蔵書電子化事業者協会」設立 – ITmedia eBook USER ※2013年6月7日
Myブック変換協議会の投げたボールが、きっちり投げ返されました。日本蔵書電子化事業者協会のアドバイザーに入っている松原聡さんと石川准さんは、Myブック変換協議会のシンポジウムでモデレーターとパネラーをやっていた方々。これはちゃんと前に進みそうな予感。
EPUB 3、活用への道半ば – ITmedia eBook USER ※2013年6月7日
日本ではEPUB 3が普及し始めていますが、欧米ではまだEPUB 2が中心という話。横書き文化圏では、EPUB 3に変える必然性がないのかも。O’Reilly Japan の「EPUB 3とは何か?」を読んでおきたいところ。無料です。
本を発見するための「出版ハッカソン」 « マガジン航[kɔː] ※2013年6月7日
Discoverability問題をどう解決するか?を、エンジニア、プログラマー、起業家がアイデアを出し合ったというもの。どれもあまり新鮮味はないかも?
REAL-JAPAN » 盗作事件史から考える佐野眞一の盗作疑惑事件 ※2013年6月8日
佐野眞一さんを糾弾することを目的とした本への執筆依頼に応じて、書いたはいいけどボツにされた原稿が無料公開されています。本の趣旨には合わないだろうなーとは思いますが、書かれている内容は非常に中立的かつ客観的で、ただ単に「盗作だ!」と騒ぎ立てる側のおかしさが浮き彫りになっています。面白い。