先週は「NetGalleyベータ版開始」「メディアドゥがメディバンと資本業務提携」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年6月26日~7月2日分です。
発売前の本の“ゲラ”を読んで評価できる「NetGalley」ベータ版を使ってみた INTERNET Watch(2017年6月26日)
自分が書いた記事ですがピックアップ。発売前の本の“ゲラ(galley:校正紙)”データを読んでその本を評価できるサービスです。今後の鍵を握るのは、まずはコンテンツ数です(断言)。読める本が少なければ、レビューを書く人が寄ってきません。ベータ版なので「参加出版社が7社に限定」されているのですが、現時点で「出版社一覧」には名前が出ているにも関わらず、KADOKAWAと集英社は残念ながらまだ1冊も本がありません。どうなっているんだ……。
実はずっと、DRMフリーなんです。 インプレスブックス出版営業スタッフブログ(2017年6月26日)
知ってた。というか、なぜアピールしないのかずっと不思議でした。ボクの『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。』刊行時に、インプレスブックス内でDRMフリーである旨が記載されているページを探したんですが、見つからなかったんですよね。
米大手出版社HarperCollins、公共図書館向けの電子書籍ライセンスモデルを変更、同時閲覧可能に hon.jp DayWatch(2017年6月26日)
実際に貸出されたときはじめて課金されるモデルを、ハーパーコリンズが採用。サイモン&シュスターも以前から採用しており、新刊を除きこちらのモデルが一般化していくかもしれません。従来の貸出モデルだと必ず初期に図書館側がコスト負担をする必要があったため、予算の都合上、ラインアップが限定されてしまう問題がありました。Rakuten OverDrive がアピールしてきた“Buy it now”とは相性が悪そうですが、どうなるか。日本にもくるかな?
日販、書店から出版社の在庫を検索できるシステムを構築 財経新聞(2017年6月26日)
出版関係じゃない方々から「まだなかったんかい!」という声が複数。はい、なかったんです。いや、「出版VAN」というのがあるのですが、取次の反対によって書店が外されていたそうで。次は、出版社の在庫ステータス(20番台と30番台)が信用できない問題が。これはそのまま、アマゾンが日販へのバックオーダーをやめる話とも関連してきます。詳細は下記Facebook投稿のコメント欄実況を参照。
出版不況なのに、『コロコロコミック』が80万部も売れているヒミツ ITmedia ビジネスオンライン(2017年6月28日)
冒頭に「漫画雑誌の発行部数をみると、ほとんどが右肩下がり。そんな中で、『コロコロ』は80万部ほど。」なんてことが書いてありますが、ミスリードを誘っています。前から当ブログを読んでいる方はご存じかと思いますが、『コロコロ』も右肩下がりなのです。「妖怪ウォッチ」のブームが去って、100万部超えから80万部弱まで急減しています。2ページ目以降の和田誠編集長インタビューは面白いのですが、残念。「出版不況」を枕詞に使っている記事は疑ってかかったほうがいいでしょう。
米Amazon、電子書籍の新呼称「eBook」「Digital Book」など複数候補をA/Bテスト中 hon.jp DayWatch(2017年6月29日)
「Kindle Edition」表記が「eBook」や「Digital Book」に変わるかも。「Kindle」はストアの名前でもあり、端末の名前でもあり、コンテンツの呼称でもあったわけですが、どういう風の吹き回しなのでしょうか?
“EPUB3”に準拠した電子書籍ビューワー「超縦書」が無償公開 窓の杜(2017年6月29日)
なんと無料公開。公式サイトによると「組版要件は凸版印刷株式会社の子会社である株式会社BookLive様にご協力いただき、業界において求められるレベルを高い水準で満たしています」とのこと。さっそく試してみましたが、「Kinoppy」や「Edge」よりかなり軽くて動作が機敏なのは大きなメリットだと感じました。ただ、複数ウィンドウが開けないのが不満。画面の拡大機能にはアクセスしやすいけど、文字サイズの変更が設定の奥にあってアクセスし辛いのもやや不満。ほか、サイズを変えたり戻したりすると「整形中」表示で固まる場合があったり、余白設定を「無し」にしても「広い」にしても変わらなかったり、といった細かい不具合が。むむむ。しかし、Windows環境で安心して勧められるEPUBビューアの1つであることは間違いありません。
アマゾンジャパン社長が語る顧客第一主義 運送問題は「心配しないで」 BuzzFeed News(2017年6月29日)
アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長インタビュー。冒頭の「現段階で私が発表できることは何もありません」は、もはや様式美。問題はタイトルにもある「顧客にはショッピングの舞台裏で何が起きているか心配しないで欲しいんです。それは私たちの責任ですから。」という発言。スタンスの問題ですが、コーヒーなどで「フェアトレード」がアピールされるのとは、真逆のことを言っているように聞こえます。中間業者に搾取されまくった商品が奴隷によって運ばれてきたら、拒みたくなると思うのですが(あくまで例えで、実態がそうだと言うつもりはありませんが)。あと、誰もが供給者側にもなれる時代において、それでいいのかという問題も。
慶應義塾大学SFC研究所・KADOKAWA・講談社・集英社・小学館・出版デジタル機構、未来の出版に関する研究をおこなうAdvanced Publishing Laboratoryを設置 カレントアウェアネス・ポータル(2017年6月29日)
IDPFがW3Cへ統合されたことを受けた動き。EPUB 3.0制定のときは出版社の動きが遅くて大変だったそうですが、さすがにW3Cとなるときっちり体制を整えてきた感があります。周囲の知ってる人たちが何人か参加する模様。
メディアドゥ、MediBangと資本業務提携 電子書籍配信で ITmedia NEWS(2017年6月30日)
普通株式取得と新株予約権付社債あわせて計6億円。これはメディバン社長の高島秀行さん(GMOクリック証券会長)の資金調達が巧みすぎる。しかしこれで、メディアドゥが投稿プラットフォーム方面にも興味があることがわかりました。ウチのNPO法人にも協賛してくれないかなあ……。
漫画『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』について、飛鳥新社に強く抗議します ねとらぼ(2017年6月30日)
飛鳥新社の声明文に対する、ねとらぼの再抗議。KADOKAWAが蚊帳の外になっている感が。飛鳥新社の編集担当者、『昆虫交尾図鑑』と同じ人なのですか……(絶句)。
出版状況クロニクル110(2017年6月1日~6月30日) 出版・読書メモランダム(2017年7月1日)
毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。「私は書店の味方のような言説をふりまいている人物がプライム会員で、雑誌や書籍のすべてをアマゾンで購入しているのを知っているが」には苦笑い。アマゾンも書店(もやってる総合小売店)ですよね。同じ論理で言うと、紀伊國屋書店だけで買う人物や、丸善ジュンク堂だけで買う人物は、中小書店の敵ってことになっちゃいます?
日販、グループ書店1割閉鎖へ 日本経済新聞(2017年7月1日)
グループ書店255の1割なので、約26店舗減少。文具を多くしたりカフェを併設したりなど業態を変えていくのにも限度があるでしょうから、いたしかたないところ。
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