毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「紀伊国屋書店が村上春樹氏の新刊を買い占め」「週刊少年サンデー新編集長の宣言文」などが話題になっていました。
週刊少年サンデー:新編集長就任で異例の宣言文 新人作家の育成優先へ – MANTANWEB(まんたんウェブ) ※2015年8月19日
週刊少年サンデー特集、新編集長・市原武法インタビュー (1/3) – コミックナタリー Power Push ※2015年8月19日
新人作家育成重視路線に切り替えるとのこと。ナタリーのインタビュー「藤田和日郎先生、西森博之先生、久米田康治先生。この3名には一刻も早く帰ってきてほしいと思っています。」が泣ける。
ところで、声明文の右下に編集部員の名前一覧があるのですが、『金色のガッシュ!』『アラタカンガタリ』『焼きたて!!ジャぱん』などに関連して評判の悪い編集者の名前がない。なるほど。
DVDリッピングソフト配布で初の著作権法違反による検挙。リンク行為も幇助に – AV Watch ※2015年8月19日
これ、どこの出版社か分からないのですが、「DVD Shrink 日本語版」へのリンクを収録したDVDコピー本を出版したことではなく、出版社ウェブサイトからダウンロードサイトへのリンクを張ったことが「幇助」とみなされ検挙されているんですよね。リンク張ったら幇助って怖い。
怖いのは「リンクを張る」作業そのものが法改正前であっても、法改正でリンク先が違法になったら、現在進行形で生きてるリンクはみんな幇助だと見做される可能性があるってこと。過去十数年ブログを更新してきた人や、何十万ツイートしてる人、過去ログぜんぶひっくり返してリンク消さないとヤバい。
— 鷹野 凌/月刊群雛発売中 (@ryou_takano) 2015, 8月 19
楽天株式会社、「楽天いどうとしょかん」をフランスにて今秋から運行 | カレントアウェアネス・ポータル ※2015年8月20日
楽天のCSR活動、ついに海外展開開始。地道にやり続けているところが立派。
インプレス&三省堂書店、「Espresso Book Machine」を活用したグローバルPODに着手 – ITmedia eBook USER ※2015年8月20日
OnDeckに当事者からの解説が載っていますが、先方が書誌情報日本語のままでも構わないと言ってきたから実現したとのこと。「課題はいかに海外の読者に知ってもらうか、そしてエスプレッソ・ブック・マシン設置店に足を運んでもらうか」ですね。
又吉直樹『火花』電子版が10万ダウンロード突破 文藝春秋では初 – ITmedia eBook USER ※2015年8月20日
紙が239万部(ただし発行ベース)なので、実売部数とはいえまだまだ電子の市場は小さいです。リリースで興味深いのは、1万ダウンロードを超えているとして名前が挙がっている「Kindleストア(Amazon)、Reader Store(Sony)、iBooks(Apple)、楽天Kobo」(ママ)の4ストア。恐らくこれ、売れてる順だと思うのですよね。興味深い。
ちなみに先日NDL行って1年前の『電子書籍ビジネス調査報告書2014』をチェックしてきたのですが
https://t.co/kHVSzCRUWM
有料電子書籍の購入先(複数回答)はKindle28.7%、Kobo27.2%、Reader20.3%、honto13.4%の順。
— 鷹野 凌/月刊群雛発売中 (@ryou_takano) 2015, 8月 19
5番目にApp Store10.5%がきて「おいおい」という感じがしますが、その次にBOOK☆WALKER10.2%、dブック9.0%、eBookJapan8.7%、BookLive!8.3%、iBooks Store8.3%までが上位10店。n=807。パソコン調査なのが痛い。
— 鷹野 凌/月刊群雛発売中 (@ryou_takano) 2015, 8月 19
2015ではスマートフォン調査もやってます。
Mac Book Airより大きい12.9インチ「iPad Pro」今秋発売か – ねとらぼ ※2015年8月21日
記事中にもあるように複数のソースから情報が出ており、今度こそ本当? か?
商品よりも“作品”を、売り方の話よりも作家とファンの接点を——23歳CTOとマンガ編集者の挑戦 | TechCrunch Japan ※2015年8月21日
1年以上ずっとベータ版だった「マグネット」がついに正式オープン。エンジニア草野翔氏と、代表の佐渡島庸平氏へのインタビュー。さっそく使ってみたのですが、誰でも簡単に使える(有償配信する場合は申請が必要)のと、固定レイアウトEPUBの制作ツールとして使えるところが良いと思いました。
紀伊国屋書店、村上春樹氏の新刊「買い占め」 :日本経済新聞 ※2015年8月21日
出版流通イノベーションジャパンへ繋ぐ一手でしょうか。ライバル店が人気商品をあまり仕入れられないよう買い占めてしまうのは、一般的な商品に対する通常のビジネス活動としてはアリだと思います。資本がある小売店しかできない技ですが。
ただこれ、再販売価格が例外的に拘束できる商品でやるのはどうなんでしょう? ユーザー置いてけぼりになってませんかね? ウラゲツ☆ブログにこんな記述がありました。
漏れ聞くところによると、今回の件で取次から書店への卸正味は通常とほぼ変わりないようですね。違うのは買切という条件だけだと。(中略)ただしマージンが増えるのは紀伊國屋書店だけなのですから、「全国の書店が一丸となって」というスローガンには、他書店にとってはどこかむなしく響く部分もあるものと考えた方がよさそうです
買い切りで卸正味同じだったら、特に中小書店は仕入れるのためらうのでは。出版流通イノベーションジャパンで手を結んでいる丸善ジュンク堂、文教堂、図書館流通センター、honto辺りはお付き合いするでしょうけど。中小書店に並ばない、ネット書店でも買えないとなると、多くのユーザーにとってはデメリットの方が大きそう。何のための再販制度なの? という感じが。