毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「講談社、デジタルの伸びで増収増益」「インターネット広告媒体費1兆円超え」などが話題になっていました。
雑誌ニュートン発行元、負債20億円 民事再生申し立て 朝日新聞デジタル(2017年2月20日)
先週のニュースまとめで「会社存続できるのかな……」と書いたのですが、直後に民事再生法適用申請。雑誌は体裁を変えず発行を続けるそうです。
W3Cメンバーサブミッション「Web技術を用いた日本語組版の現状」(2017年2月20日)
IDPFがW3Cに吸収された直後に技術提案。迅速かつ素晴らしい動きです。著者は小林龍生さん(Scholex)、村上真雄さん(ビブリオスタイル会長兼CTO)、村田真さん(日本電子出版協会CTO/ビブリオスタイル技術顧問/国際大学)、新名新さん(出版デジタル機構社長)、Florian Rivoalさん(ビブリオスタイルCTE)、吉井順一さん(講談社、IDPF理事)と強力なメンバー。3月17日にJEPAで行われるセミナー、取材に行ってきます。
ネット情報の削除代行、非弁行為に該当 東京地裁が判断 日本経済新聞(2017年2月20日)
ネットの風評被害対策、削除代行は弁護士以外に認められないという判決。まだ地裁なのでどうなるかわかりませんが、検索するとゴロゴロ広告が出てくるので、結構影響大きそう。著作物の削除も代行したら非弁行為になるのかしら?
これ、検索したら広告いっぱい出てきたんだけど、これが弁護士事務所じゃないとアウトってことになるのか。うーわ。 pic.twitter.com/l9j999tbGT
— 鷹野凌 (@ryou_takano) 2017年2月21日
講談社、ミリオンセラー無き増益 デジタルで稼ぐ 日本経済新聞(2017年2月21日)
デジタル分野の売上高が前期比44.5%増の175億円(逆算すると前期は121億円)。出版科学研究所『出版月報』2017年1月号によると、電子出版市場は前年比27.1%増の1909億円。講談社は2016年11月期なので集計期間に1カ月ズレがありますが単純計算すると、成長率は業界平均の1.64倍、市場占有率は9.17%ということになります。伸びてるなーっ!
フランス語圏向け個人作家団体「l’Alliance des Auteurs Independants Francophones」が設立へ hon.jp DayWatch(2017年2月21日)
The Alliance of Independent Authorsのフランス語圏版発足。ちなみに日本では、2013年9月1日に始まってます。設立者、私(宣伝)。
メディアドゥ コミックカラーリング事業を買収 海外展開の鍵に アニメーションビジネス・ジャーナル(2017年2月25日)
メディアドゥの買収攻勢がまずます激しくなってきました。『ドラゴンボール』『ワンピース』などのデジタルカラー版を制作してきた会社を傘下に。欧米のアメコミやバンドデシネはフルカラーが多いので、海外展開の鍵を握るのではとのこと。
マンガの海賊版は「最新作の売り上げ減少」と「旧作の売り上げ促進」の2つの効果をもたらす GIGAZINE(2017年2月22日)
慶應義塾大学経済研究所の田中辰雄さんによる調査。最新作が最新作であるときに売上が稼げないと評価されづらい現実があるので、何年か経って旧作になったときに売上が促進されてももう遅い、という事態を招きそうな調査結果です。
加Rakuten Kobo社、月額制の電子書籍読み放題サービス「Kobo Plus」をスタート、まずオランダから hon.jp DayWatch(2017年2月22日)
「Kindle Unlimited」対抗。1カ月10ユーロ(約1200円)。北米版もまもなくスタートする可能性が高いとのことです。日本にもいずれくるかな?
2016年「日本の広告費」は6兆2880億円 インターネット広告費が初の2割超え AdverTimes(2017年2月23日)
昨年の同じ発表に「インターネット広告媒体費は今年も同じ伸び率ならいよいよ1兆円を超えます」とコメントしましたが、予想通り見事1兆円超え。ちなみに2015年の伸び率は111.5%、2016年の伸び率は112.9%でした。加速してる! 逆に、雑誌広告費は91.0%(2223億円)と酷い状態になっています。
電子書籍ストアBookLive ウェブマンガサイトのフレックスコミックスなど2社を買収 アニメーションビジネス・ジャーナル(2017年2月23日)
アプリックスがエンタメ事業から完全撤退。『ブレイクブレイド』などの人気作を持つフレックスコミックスは、もともとソフトバンクグループです。BookLive傘下になるということで、他ストアへの配信が滞る可能性を心配する声が散見されます。現状でも、Kindleストアには36点、楽天Koboには223点、BOOK☆WALKERは0点、そしてBookLiveには59点と、あまり安定供給されていないようですが……。
北海道天塩町社会福祉図書館がOverDrive導入 文化通信(2017年2月23日)
OverDrive Japanの電子図書館は、公立図書館への導入では4例目、北海道へは初。もっと広がれ!
読書時間ゼロ、大学生の5割に 増えたのはスマホの時間 朝日新聞デジタル(2017年2月24日)
毎年行われている、全国大学生活協同組合連合会の調査報告。毎年思うのですが、これは新聞の取り上げ方が悪いと思います。不読率は大学生に限らず、全体でも50%に近いのです(平成25年文化庁調査PDF10ページ参照)。しかも平成20年調査から傾向はほぼ同じ。また、大学生協連合会のリリースは「仕送り減・奨学金減で、バイトを増やすしかない」といういまの学生の経済実態から始まってるのに、そこをすっ飛ばして「書籍購入費も減る」「増えたのはスマホの時間」などなど、「ワカモノノホンバナレ」みたいな方向へ読者を誘導したがってるように見えます。スマートフォンの利用時間がなにに使われていて、そこから得られているものはなにか。友人と長電話したり、ファミレスでだべったり、ゲーセンで遊んだりするのとなにが違うのか。そういう視点が必要なのでは。
Google、“毒コメント”にリアルタイムで対処する機械学習API「Perspective」公開 ITmedia NEWS(2017年02月24日)
「“毒コメント”ってなんぞ?」と思ったら、リリースに “toxic comments(毒性のあるコメント)” って書かれてるのですね。「読んだ人が会話から離れてしまうような無礼で理性的でないコメントのこと」だそうです。Google+の投稿は少し前から “Hiding low-quality comments(低劣なコメントを隠す)” 仕組みが動いていますが、同じロジックかな?
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