出版業界関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は、「ガラスの仮面販売終了」「BOOK☆WALKERで青空文庫に寄付」「JEPA電子出版アワード」「ジャパゾン」などが話題になっていました。
hon.jp DayWatch – Amazon対策で米国の中小書店が個人作家とタッグ、100キロ圏内に住む個人作家たちの作品を店頭に ※2013年12月16日
記事中に「Amazon社の台頭に苦しんでいる中小書店」とありますが、アメリカではここ数年書店数が増えているそうですから、ちょっと見方を変えた方がいいかもしれません。Amazon対策というか、「Amazonができないことに、中小書店が取り組んでいる」と捉えるべきでしょう。
DeNAが教育事業に参入–教育アプリ「アプリゼミ」を提供 – CNET Japan ※2013年12月16日
これは教育系出版社にとって、大変な脅威でしょう。NHKエデュケーショナルと組んでいるというのも、とても手堅い。DeNAとグリー、差がついたなあ。
ベネッセ、小中学生専門の電子書籍ストア「ブクフレ本」開始 | RBB TODAY ※2013年12月16日
奇しくもDeNAの教育事業参入と同日オープン。こちらは、ACCESSの電子出版ソリューション「PUBLUS」です。
Kスタ宮城の新名称、「まだ決定した事実はない」と各社 – ITmedia eBook USER ※2013年12月16日
NHKまで報道していたから、しっかり裏がとれているものだとばかり思っていましたが……ITmedia 西尾さん、グッジョブ。
米Amazon、Kindle Fire HDXの無利子分割プランを開始 – ガジェット速報 ※2013年12月16日
Kindle端末はAppleなど他社に比べれば結構安価なのですが、それでも一括では買えないという人への対策。いろいろ手を打つなあ……。
『ガラスの仮面』配信終了について – 電子書籍のGALAPAGOS STORE ※2013年12月16日
【お知らせ】
”『ガラスの仮面』配信終了について”
版元からの停止なので、当ストアに限らず全てのストアにて配信停止です。弊社ならネット書庫で購入さえしていれば停止後も閲覧可能なのですが…巻数が多い電子向けで歴史的名作なので残念です。
http://t.co/qBqhZl5Y7F
— SHARP GALAPAGOS【公式】 (@SharpGalapagos) 2013, 12月 16
後から知ったのですが、実は白泉社e-net!では12月12日に販売中止のお知らせを出しています。その後、honto、BookLive!、Reader Store、Renta!、ニコニコ書籍、eBookJapanなどからも相次いでお知らせが出ており、恐らく何もお知らせが出ていない他のストアも、年内いっぱいで販売中止になることでしょう。Kindleストア、iBooks Store、Koboなどは、個別でこういうお知らせ出すことはないんですよね……突然店頭から消える。ただ、どのストアも購入済みのコンテンツは、そのまま継続して読み続けることができます。その点は安心。
hon.jp DayWatch – 米国の書店オーナー達がAmazonと大手出版社を訴えていた電子書籍DRM問題、NY地裁が棄却 ※2013年12月17日
「棄却について、ニューヨーク連邦地裁の担当判事は、DRMの有無はAmazonの競争優位の根拠にはならないと判断を明らかにしている」とのことです。まあ、DRMはむしろ、ユーザーに不便を強いる仕組みですしね。
地方発出版 電子化に活路 配送費ゼロ 全国に販路:朝日新聞デジタル ※2013年12月17日
以前、JEPAセミナー「地方から電子出版市場を創りだす!」でも話がありましたが、組版・製本・配本と在庫コストがかからないこと、すぐに修正して差し替えられることが、地方の出版社としては非常に大きいそうです。次は、マーケットを世界に向けることでしょうか。日本人はこの先、減っていくばかりですからねぇ……。
BOOK☆WALKERで青空文庫の提供開始――理念に沿ったひと味違う取り組み – ITmedia eBook USER ※2013年12月18日
青空文庫の「本の未来基金」にポイントを利用して寄付できる仕組みを同時に提供している点が、大変な賞賛をされています。ただ単に利用して「青空文庫」は目立たない位置に記載していたり、そもそも利用していることすら隠していたりする他企業とは大違い。
hon.jp DayWatch – Apple社、電子書籍ストア「iBookstore」に他ユーザーへのギフト機能を追加 ※2013年12月18日
自分の本を譲渡するわけではなく、買ってそのまま他の人にあげる機能です。自分は読めないです。
ところでギフト機能って、hontoにも前から実装されていたんですねぇ……気が付かなかった。hontoは機能的にはいろいろ優れているのに、告知がヘタ。あと、サイトが重い。
寝不足必至:少年画報社の482作品が48時間読み放題「SGS48~叛逆の48時間482冊まるごと無料だZ~」 – ITmedia eBook USER ※2013年12月18日
これまた凄まじいキャンペーン。アクセス集中で、ブラウザビューアに繋がらないなどの障害が一時発生していたほどの活況だったようです。次に繋がるといいのですけど。
お知らせ|Reader™ Store|ソニー: 話題作の事前予約に対応など、Reader Storeの使いやすさを向上 ※2013年12月18日
「電子書店完全ガイド2013:ソニー『Reader Store』を徹底解剖する」で、リニューアル後の Reader Store にかなり注文を付けたのですが、その多くが改善されています。ただなあ……こうやって後から徐々に直すスタイルだと、話題にならないんだよなあ……。
「サンレコ」「キーマガ」など音楽専門誌の記事資産、電子書籍化スタート -INTERNET Watch ※2013年12月19日
時が経っても色褪せない過去のコンテンツは、こうやって再利用できるからいいですね。そのままバックナンバーではなく、記事の再構成である点、音が聴ける(ただしiBooksのみ)点が面白い。
大賞を個人が受賞――第7回 JEPA電子出版アワード結果発表 – ITmedia eBook USER ※2013年12月20日
ブログ更新です / 電子出版アワードの大賞を受賞してしまいました(震え声) – 電書ちゃんねる http://t.co/Ux8pvdwPIH
— ろす@俺がお前のサンタだ (@lost_and_found) 2013, 12月 20
おめでとうございます!!
授賞式、ボクも取材に行ってました。よく見たらこの盾、大賞の方ではなく、エキサイティングツール賞の方ですね。しまった。
いやーそれにしても、個人がこういう賞を獲るというのは、いいですね。
政府、オープンデータ活用サイトを12月20日に開設 :日本経済新聞 ※2013年12月20日
ちょっと「出版」とは違いますがピックアップ。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「CC-BY」で公開されていますので、利用は出典さえ明示すればOKです。さらに、「数値データ、簡単な表・グラフ等のデータは著作権の対象ではありません」と明示されている点も素晴らしい。
【山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ】楽天「Kobo Aura」 ~ベゼルとの段差をなくして薄くなった6型E Ink端末 – PC Watch ※2013年12月20日
フラットパネルの採用というのは、電子ペーパー端末としては新しいし、操作しやすくていいなーと思うのですが、うーん……ボクもレビュー書いてますので、詳しくはそちらを。まだ公開されてないけど。
『ジョジョ』荒木飛呂彦登場の動画も掲載 『ジャンプLIVE』2号配信開始! | ダ・ヴィンチ電子ナビ ※2013年12月20日
単発企画で終わらずに、2号目が出たという点がいいですね。1号目よりかなりパワーアップしているらしいのですが、ボクはまだ未確認。
電子書籍を書店で検索、現金で購入:表紙を読み込み電子書籍情報を表示できる「ヨミCam」アプリ – ITmedia eBook USER ※2013年12月20日
書店員のPOPが画面で見られるというのは面白い試みだと思うのですが、神保町本店だけでのトライアルというのが弱い。まあ、まだ試験段階ということなのでしょうけど。
実はボクも取材に行ってました。
書店で電子書籍販売へ 来春から13社、アマゾンに対抗:朝日新聞デジタル ※2013年12月22日
あまりにも「ジャパゾン」のインパクトが(悪い意味で)強すぎます。ボクの意見は「リアル書店で電子書籍の販売はいいけど、どうしていまさらコンソーシアムで実証実験なのか」をご参照下さい。
しかし、ネットユーザーの反応を見ていると、「リアル書店で電子書籍の販売」という点が結構批判されているというのが気になりますね。「いまさらコンソーシアムで実証実験」とか「ネットよりも書店で先行販売する電子書籍」というのは批判されて当然だと思いますが、「リアル書店で電子書籍の販売」はアリではないでしょうか。
店頭に物理的スペースは限られているので、発売から1ヶ月もすれば返本されてしまう(つまり見つけた時に確保しないと、二度と買えない可能性が結構高い)ことを考えると、店頭で電子コンテンツが買えるという代替手段を提供するのはユーザーメリットだと思うのです。カナダでKoboが後発でもKindleに勝っているのは、リアル書店とのパートナーシップ戦略に依るものですし。
この辺り深堀りすると、とてつもなく文量が長くなりそうでなので、ここはこれまで。