4大マスメディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)と、インターネットの広告費推移をグラフにしてみました。元データは、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査(長期データ)です。
困ったことに、経済産業省の元データには金額の単位が書いてありません。そこで、日本新聞協会のデータ(元は電通なので若干盛られてるっぽい広告制作費がプラスされてる?)と比べ、恐らく「百万円」単位であろうと仮定しました。
新聞・雑誌・ラジオ広告は、インターネット広告に抜かれている
まず、単純な棒グラフです。クリックすると拡大できます。
インターネット広告が「その他」から単独枠に移行した2006年時点ですでにラジオを抜いており、2009年には雑誌超え、2013年には新聞超えを果たしています。
ではこれを積み上げグラフにするとどうなるか? クリックすると拡大できます。
全体傾向としては2009年にどーんと落ち込んで、その後徐々に回復していることが分かります。2009年に急減したのは、リーマン・ショック(2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻)が原因のようです。
さてここからは仮説です。私は、インターネットの普及によって大きな打撃を受けたのは、新聞・雑誌だと考えています。文字・画像が中心というメディア特性が似てますからね。そこで、新聞・雑誌・インターネットだけの積み上げグラフを作ってみました。クリックすると拡大できます。
右端は合計です。新聞・雑誌広告の減少を、インターネット広告の増加が補っていることが分かります。2013年の新聞+雑誌+インターネット=934,964百万円なので、2002年の新聞+雑誌=929,265百万円を超えているのです。
ここで問題になるのは、新聞・雑誌を発行している企業が、インターネットからどれだけ売上を得られているか? という点です。つまり、新聞「社」や雑誌「社」の立場で考えれば、新聞・雑誌メディアが衰えたとしても、その分インターネットに移行できていればいいわけです。
IT企業のウェブサイトと、雑誌・新聞のウェブサイトを比較
「SimilarWeb」という、ウェブサイトのアクセス数を調べられるサービスがあります。例えば itmedia.co.jp と business.nikkeibp.co.jp(日経ビジネスオンライン)を比較すると、こんな状態です。
Estimated Visits(推定訪問数)で、4倍以上の差があります。では、最近アクセス数が急増したらしい toyokeizai.net(東洋経済オンライン)はどうでしょうか?
それでもまだ倍以上違います。恐らく全体的な傾向として、雑誌社はまだインターネットであまり稼げていないのではないかと思われます。では新聞社はどうでしょう? itmedia.co.jp と yomiuri.co.jp(読売新聞)を比較してみます。
なんと、yomiuri.co.jp の方が上です。では asahi.com(朝日新聞)は?
yomiuri.co.jp より asahi.com の方が上です。itmedia.co.jp とは1.67倍の差があります。これだけサイトパワーがあるなら、もしかしたら新聞社は雑誌社とは異なり、インターネット広告でそこそこ稼げるようになっているかもしれません。
では、広告ではなく販売はどうか?
ここからは出版について。
よく「出版不況」という言葉を目にしますが、紙の本だけの統計を論拠としている場合が多いです。『「出版不況」は本当か?–書籍まわりのニュースは嘘が多すぎる』という記事で、電子も含めると書籍販売は微増で雑誌販売は横ばいというデータが示されています。なんだ、出版の未来は明るいぞ?
ただ、電子書籍も電子雑誌も新興企業がプレイヤーとして参入しているので、全体の売上が伸びているとはいえ、恐らく既存の出版社はあまり稼げていないのが現状なのではないでしょうか。
つまり、広告にせよ販売にせよ、今までの手法では稼げなくなっているのを「出版不況」と呼んでいるだけで、本来は「出版社の衰退と新興企業の降盛」として捉えるべきなのかな、と。