オトバンク広報さんからお誘いいただき、日本オーディオブック協議会設立記者会見へ行ってきました。
協議会役員(敬称略)
代表理事:佐藤隆信(新潮社社長)
常任理事:相賀昌宏(小学館社長)
常任理事:野間省伸(講談社社長)
常任理事:川金正法(KADOKAWAビジネス生活文化局局長)
常任理事:上田渉(オトバンク会長)
理事:堀内丸恵(集英社会長)
理事:松井清人(文藝春秋社長)
理事:乙部雅志(岩崎書店常務)
理事:斎藤健司(金の星社社長)
理事:佐藤潤一(福音館書店専務)
理事:岡本厚(岩波書店社長)
理事:矢部敬一(創元社社長)
理事:熊沢敏之(筑摩書房社長)
理事:鹿谷史明(ダイヤモンド社社長)
理事:干場弓子(ディスカヴァー・トゥエンティワン社長)
理事:清水卓智(PHP研究所社長)
なお、協議会発足のきっかけは、小学館社長の相賀昌宏氏とオトバンク会長の上田渉氏だったそうです。相賀氏が半分冗談のように「『出版社が既得権を守るための新たな団体設立』とか書かないでね」と言っていたのが印象的でした。
以下、記者会見の概要です。
代表理事 佐藤隆信氏(新潮社社長)
代表理事に就任した佐藤隆信氏は「まだまだこれからの市場なので、勉強しながら資産を活用していきたい」と挨拶しました。
常任理事 上田渉氏(オトバンク会長)
続いて常任理事 上田渉氏(オトバンク会長)が、オーディオブック市場の現状について説明しました。
オーディオブックは耳で読む本で、耳の隙間時間を活用できるハンズフリーな書籍であると同時に、目を使わなくても読めるバリアフリー書籍だと説明します。
利用者層は男性が70%。20代〜40代で過半数を超えており、ビジネスパーソンが42%と、働き盛りの層が中心です。
作品数は現在1万5000タイトルですが、3年後には4倍になると見込んでいるそうです。現状ではビジネス書のラインナップが一番多いですが、ノンフィクションが7割くらいを占めているアメリカの市場に近づいていくとすると、3年後には文芸の方が多くなる(4割くらい)と見込んでいるそうです。
協議会の設立目的
- オーディオブック市場の分析及び拡大
- オーディオブック、電子書籍、印刷書籍の共存共栄
- 著作者の利益と権利の確保
協議会の活動内容
- オーディオブック市場の定期的な計測・分析
- オーディオブックんお出版・制作・流通ビジネスに関する情報共有
- 出版社・著作者・オーディオブック制作者の権利等に関する研究
- オーディオブックの発展及び普及に関する活動
- オーディオブックに関する日本発のビジネスモデルの検討・協議
- 公共機関・教育機関・図書館等オーディオブックの関連分野に関する情報共有
- 高齢者・視覚障害者へのオーディオブックの普及に関する協議
- 出版契約のヒナ型へのオーディオブック化許諾記載に関する協議
要するに、電子書籍の次の柱としてオーディオブックを推進していこう、とのことです。
常任理事 相賀昌宏氏(小学館社長)
続いて、常任理事 相賀昌宏氏(小学館社長)が挨拶。恥ずかしながら「ウチの本、何がオーディオブックになってるの?」くらいの認識だったし、アメリカ市場がこれだけ伸長しているというのも知らなかったそうです。本の利用が困難な人へのアクセシビリティ確保や、マルチリンガルへの対応をしていきたいとのころ。著作者の権利を守るという意味では、出版社が手を取り合ってやっていくのは意味がある、と語りました。「音は重要な出版物の一つ」と。
常任理事 野間省伸氏(講談社社長)
続いて、常任理事 野間省伸氏(講談社社長)が挨拶。アメリカでは市場が立ち上がっていたのは知っていたが、日本はまだまだこれから。オーディオブック市場については「全然分かっていない」のが実情。ちゃんと整理把握して、どうマーケットを作っていくかをこの協議会で考えていきたいと語りました。
常任理事 川金正法氏(KADOKAWAビジネス生活文化局局長)
最後に、常任理事 川金正法氏(KADOKAWAビジネス生活文化局局長)が挨拶。川金氏は中経出版のブランドカンパニー長でした(4月1日より現職)。オトバンクとは結構前から一緒にやっており、ブックウォーカーの知見やノウハウを協議会の発展に役立てたい、と語りました。
質疑応答
どれくらいの頻度で活動する?
特段決まってないが、最低でも3ヶ月に1回は情報交換をしたい。
目標は?
いま立ち上がろうとしている市場を、うまく作っていくこと。良い商品を作ること。「良い商品とは何か?」もまだ分かっていないので、勉強していきたい。
課題は?
各社バラバラ。パッケージのダウンロードもあれば、ストリーミングもある。ジャンルも違う。状況も違う。
オーディオブックはストアで販売?それとも違うモデル?
上の質問への回答と同じ。
公共図書館などへの配信は、障害者差別解消法対応?
既に図書館では大活字本や朗読サービスが始まっている。意識の問題が大きい。出版社と一緒に本を作ってきた著作者と、手を結んでやっていきたい。「誰かがやるだろう」はまずい。啓蒙活動もやっていかねば。機械読み上げより朗読の方がいい場合が多い。ただ「コンテンツが機械的に読めます」ではないサービスを作っていきたい。
日本の市場規模は?
パッケージが20〜30億円、ストリーミングが10数億円、計50億程度。米は1600億円。世界的には書籍市場の10%程度で、今の日本は8000~9000億なので、800~900億程度まで成長する余地はあると思う(※注:初出時この数字が間違っていました。お詫びして訂正します)。
著者と出版契約を結ぶ段階でオーディオブック化の許諾を?
有無を言わさず契約に入れるというのは難しい。市場が何を望んでいるか? をちゃんと把握した上で、著者と話し合わねば。既得権を守るのではなく、著者にとって一番いい形を。
音が出る電子書籍もこれもオーディオブックの範疇?
(児童書の出版社からすると)電子書籍とオーディオブックは別だと考えてる。絵本はアプリ的。オーディオブックはあくまで音。絵本は絵で見る必要がある。紙の本を見ながら朗読を聞く、というのはオーディオブックだと捉えている。
感想
オトバンクさんが出版社をうまく炊きつけたのかな? という印象。質疑応答にもあった障害者差別解消法対応という部分も大きいのでしょう。ちなみにオトバンクは昨年7月に大日本印刷と提携して、電子図書館システム「TRC-DL」を導入している公共図書館でオーディオブックをレンタル可能にしています。