電子書籍全盛時代に現れた最新印刷技術 プリント・オンデマンドは出版界の救世主となるか|ビジネスモデルの破壊者たち|ダイヤモンド・オンライン
上記の記事を読んだときに、最初に頭に思い浮かんだのがつい先日読んだこの記事でした。
池田信夫 blog : アゴラ研究所はアマゾンと提携して出版サービスを開始 – ライブドアブログ
「へー!」と思って、すぐに Amazon でプリントオンデマンドを検索してみたんですね。
74冊しか無くて、苦笑いしました。
まあ、プリントオンデマンド自体は「最新の技術」ではなく、数年前から始まっているサービスなんですが、ようやく最近になって脚光を浴びるようになってきたといったところでしょうか。
例えば書店大手の三省堂では、2010年の秋には既に、神保町本店でプリントオンデマンドの取り扱いを開始しています。
大人の社会科見学:三省堂書店オンデマンドで「本のATM」を体感してみた – 電子書籍情報が満載! eBook USER
Amazon のプリントオンデマンドは、昨年春に開始しています。
Amazon.co.jpもプリント・オン・デマンド開始、洋書60万冊以上から – 電子書籍情報が満載! eBook USER
角川学芸出版がプリントオンデマンドを開始したのは昨年秋です。
株式会社 角川学芸出版【プリントオンデマンド書籍】
しかし、こういった様々な動きがあるのに、どうも盛り上がっていない気がしますね。とくに、Amazon で購入できる本がまだ3桁にもいっていないというのは驚きです。流通や返本のコストを考えると、中小の出版社なら飛びついてもいいような気がするのですが……と思っていろいろ調べていたら、こんな記事を見つけました。
AmazonのPODは新規参入出版社にとってきつい – 言葉職人のデスクトップから
単行本としてたぶんこれ以上は薄くできない百数十ページの本で1冊300円ぐらいの印刷費ですね。日本の場合これより少し割高になります。細かい数字はバラしませんが、同じくらいのページ数の本で500円程度はかかります。もちろんページ数が増えればその分だけ印刷費は高くなります。300ページを越える本なら1000円くらいになりそうです。
この印刷コストに Amazon の販売手数料や著者印税(通常定価の10%)と、もちろん出版社の利益も考慮しなければなりません。このようにコストの積み上げだけで売価を考えると「きついなー」という考えになります。しかし商品の販売価格で重要なのは、消費者が買いたいと思う額かどうかです。
読みたい本が店頭には並んでおらず、1冊単位から注文できるとなれば、ハードカバーと同等かそれ以上の売価でも欲しい人は買うのではないでしょうか? つまり、書籍の中身が重要だということになります。
今のように、中身がスカスカの本でもガンガン新規で発行し、返本までのタイムラグを利用して自転車操業するようなやり方をしていたら、読者が「欲しい」・「読みたい」と思えるような本を出版するのは難しいのではないでしょうか。日本の出版社が電子書籍に消極的なのは、こういう事情があったからだとも言われています。
posted with amazlet at 12.02.22
佐々木 俊尚
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「絶版本ならリスクは無いのでは?」とも思うのですが、著作権は著者のものであって出版社のものではないので、出版社が勝手に再販することはできません。やるとしたら著者が直接 Amazon に依頼するか、アゴラのような仲介する企業に委託する形になり、出版社がそこへ介在することはできないでしょう。
さて、果たしてプリントオンデマンドは、出版界の救世主になれるでしょうか?