(※写真:写真素材 足成より)
「紙書籍・電子書籍」関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。毎週月曜配信。
【別の視点から・・】出版社の復活は電子書籍の「戦略的」値下げをしないと始まらない | More Access,More Fun! ※2012年11月26日
永江一石さんの歯に衣着せぬ物言いは結構好きだったりしますが、この記事には少し反論しておきます。ネット慣れしてる人は「誰もがAmazonで購入してる」という先入観を持ってしまいがちですが、恐らく古書流通という意味ではブックオフの方が遥かに影響はでかいと思います。そして、ブックオフを覗くと「100円コーナー」で大勢の人が立ち読みしているという現実。ただ、「安価な電子書籍を提供することで、古書市場に奪われていた顧客を取り戻せるのではないか?」という総論には賛成です。
ボクは以前書いた通り、どちらかと言えば「電子書籍ならではの付加価値を提供しよう」という意見です。ただ、裏を返せば「付加価値が付けられないのであれば、紙書籍より安くしなきゃダメでしょ」とも思っています。まあ個人的なことを言えば、置き場所に困らないというだけで電子版を選ぶ理由には充分なのですが。
hon.jp DayWatch – ゼロワン、電子書籍投稿コミュニティサイト「よむわん」12月1日オープンに向け個人作家を募集開始 ※2012年11月26日
新しいセルフパブリッシングのサイトですが、先行他社と比べて「ここならでは」という特徴が無い気が……既に正式オープンしてますが、登録数もまだまだ寂しい感じです。「アダルト作品もOK」を謳ってるけど、まだ誰も登録していないという(;^ω^)
デジタル英語版「少年ジャンプ」 日本発売と同日に最新作の北米配信決定 ※2012年11月27日
同日配信は凄い!以前書いた「鮮度」の付加価値ですね。これは海賊版対策にもなると思います。日本国内でも月曜日に少年ジャンプが手に入らない地域があるわけですから、ニーズは確実にあるでしょう。ただ、国内でネット配信を始めると、確実に書店やコンビニの収益源を奪うことになるのが難しいところ。
国内初のKindle専用端末「Kindle Paperwhite 3G」ファーストインプレッション -INTERNET Watch ※2012年11月28日
この記事には書いてないのですが、どうやら「3G回線でもコミックのダウンロードは可能」という噂は本当のようです。ユーザーには通信費かからない分、出版社にしわ寄せがいくはずなんですが、大丈夫なんでしょうか……?
Google、「Google Play Books」米国版で発売前作品の予約が可能に – ITmedia eBook USER ※2012年11月28日
日本の電子書店に足らないのは、こういう動きだと思います。「今後配信される予定の作品」ですら、公開しているのはBOOK☆WALKERくらいという有様。紙書籍には刊行予定が公開されてるのに、なぜ電子書籍ではできないのでしょう? 恐らく電子書店側ではなく、出版社や電子取次側の問題が大きいと思うのですが……。
ネオスら、電子書店構築システム「電子書店構築 CMS」発売 – ITmedia eBook USER ※年月日
ワンストップということは、恐らくDRMフリーではないのでしょう。本棚を簡単に移行できない電子書店がこれ以上増えても困るんですが……(;^ω^)
Kindleシリーズ、電子読書市場の55%を独占 – ITmedia eBook USER ※2012年11月29日
Koboが表に載ってないって、ちょっと可哀想。SNS関連の調査では無視されることの多いGoogle+的なポジションになってしまった?(;^ω^)
市場が独占されると、競争がないとサービスがこれ以上良くならない(競合全て叩き潰してから値上げをするという汚いやり方も考えられる)ので、よろしくないと思うんですよね……2番手、3番手にも頑張ってもらいたい。
「ガラスの仮面」に初の電子ペーパー版 – 本のニュース | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト ※2012年11月29日
BookLive!では「ガラスの仮面」を2012年4月27日から販売しているのですが、電子ペーパー向けにカスタマイズしたバージョンを出すのかな?と思ったら、どうもそうではないらしく。電子ペーパー端末を出している競合のKindle、Kobo、Reader Storeでは取り扱っていないので、「初の電子ペーパー版」ということになるようです。
総合電子書店の道を行く:eBookJapan、.book/XMDFに対応し文芸書・一般書籍の取り扱い開始 – ITmedia eBook USER ※2012年11月29日
いままで独自フォーマットで「我が道を行く」感じだったeBookJapanが、でっかい方針転換をしました。コミックの冊数では頭ひとつ飛び抜けているという強みがあるので、ここから一般書籍もラインナップに加えていくとかなり強力な電子書店になれるのではないでしょうか。ネックは「トランクルーム」という仕組みが異様に面倒だという点なのですが……
@ryou_takano 申し訳ないです(・ω・`)色々検討しているところですのでそろそろどうにかします、もうちょっとだけお待ちを。
— eBookJapanさん (@eBookjapan) 11月 12, 2012
ということのようです。期待してます。
無料公開で紙の本が売れる? うめ「トイボ」1stシリーズがニコニコ静画公開で重版決定 | nelja ※2012年11月29日
「信じられない」という人も多いようですが、他にも事例はいくつかあったはずなんで、そろそろ「実証された」と言ってもいいのではないかな?と思います。続刊がたくさんある場合「1巻無料」はかなり効果的。「絶版」ではなく「日本の出版独特の習慣である『品切れ・重版未定本』」という形で抱え込んでる書籍で試してみてはいかがでしょう? 権利だけ抱え込んでいた所で、お金にしなかったら無意味ですよ。
BOOK☆WALKERがキャリア決済に対応 電子書籍の購入代金を、月々の携帯電話料金と合算してお支払い可能に – MSN産経ニュース ※2012年11月29日
あ、電子書店の決済方法一覧、更新しなきゃ……。
Kindleユーザー サービスは満足、品揃えには不満 | ダ・ヴィンチ電子ナビ ※2012年11月30日
「OnDeck weekly」読者を対象としたアンケートなので、業界人が中心というところに留意。一般の方からすると、Kindleですら「買いづらい」と感じるらしいですよ?(;^ω^)
「Amazon Student」プログラムの中止に向けて: 日本出版者協議会 ※2012年11月30日
生協でも学割あるじゃん!と思ったら、独占禁止法第23条5項の規定により再販契約を遵守する義務を負わないそうで。シラナカッタ。いずれにしても、消費者そっちのけで権利ばかり主張していたら、消費者にそっぽ向かれるだけだと思うんですけどね……。どうもこの団体は、「Google撃退」に味をしめている感が。
121201 出版社が電子出版(電子書籍)に踏み切れない3つの理由 : 京都から世界へ -藤田功博の京都日記- ※2012年12月1日
3つの理由だけ抜粋して引用します。
- 見かけの売上高が減る
- 「カラ売り」による決算ができなくなる
- カラ在庫によるバランスシートの偽装ができなくなる
この記事を共有したら、出版社関係の方々から「わりと実情に即している」というMentionがいっぱい返ってきました。日本の経営者っていまだに(利益ではなく)売上至上主義なんでしょうか? うーむ。「カラ売り」「カラ在庫」は、要するに自転車操業ということですよね。こっちは分かる。
もうちょっと踏み込んで考えてみます。「見かけの売上が減る」のは「電子書籍を出すと紙書籍の売上がカニバリされる」という考え方に基づいていると思うんですが、それって本当なんでしょうか? アメリカでは電子版を出すことで紙書籍の売上も伸びているという調査結果も出ているはずなのですが……。
紙と電子を併売した場合に、もちろん紙で買うのをやめて電子だけを買う人も少なからずいるでしょうけど、「電子で」かつ「その値段だから」という理由で買う人のほうが多くて、合計売上冊数や合計売上額は伸びると思うんですけどね。
ボクの場合、例えば津田大介さんの「ウェブで政治を動かす!」はあまり興味を引かれなかったので紙も電子も買うつもりはなかったんですが、Kindleストアで半額セールをやってるのを知って買ってしまいました。この250円という売上は、紙だけ発行だったら生まれなかったわけです。
posted with amazlet at 12.12.03
朝日新聞出版 (2012-11-13)
売り上げランキング: 1
全く同じ本で比較できない以上明確にはわからないのですが、実際の所この戦術が「紙の売上にどの程度影響したか?」というところは非常に興味があるし、著者・出版社の見解も伺ってみたいところですね。