「技術的保護手段を回避するプログラムの製造で初の逮捕者」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #105(2014年2月17日~23日)

Nexus 7のebiReader

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「技術的保護手段を回避するプログラムの製造で初の逮捕者」「TPP交渉で著作権保護期間死後70年へ延長に日本が合意?」などが話題になっていました。

国際電子出版フォーラム(IDPF)、EPUBに関してIBMとの協力を発表 | カレントアウェアネス・ポータル ※2014年2月17日

このニュースに関して、CAS-UBブログ(アンテナハウス・小林徳滋氏)にこんな記述がありました。

Readium Foundationの入会費は非常に高額ですので、単なる情報収集やお付き合いで入る可能性はあまりないでしょう。つまり、自社開発で商用ライセンスのEPUBReaderを作る計画がないなら、Readium Foundationには入る意味がないということになります。

ここから言えることは、IBMはEPUBReaderを開発したり、EPUBを利用したソリューションを作るなどかなり明確な計画があるのだろう、ということです。

注視しておきたい動きですね。

電子書籍価格はいまだに著者・出版社にとって繊細な問題 – ITmedia eBook USER ※2014年2月17日

価格付けは難しい。提供者側はどうしてもコストの積み上げ+利益で考えてしまうのですが、本来は「消費者が “欲しい” と思う価格」が正しいのですよね。

楽天の提案を蹴ったソニーの電子書籍事業の未来は?:日経ビジネスオンライン ※2014年2月18日

ソニー社内は意見が真っ二つに分かれていた。野口不二夫事業部長率いるデジタルリーディング事業部は日本での事業継続にこだわり、ビジネスディベロップメント部門は北米だけでなくグローバルの電子書籍事業すべての売却を望んでいた。

日経新聞・日経ビジネス系のこの手の「スクープ」って、眉に唾つけて読むべき(話を潰したい勢力によるリークや、観測気球として利用されている可能性が高い)だと思っています。まあ、VAIO事業売却しちゃうくらいなので、電子書籍事業もどうなるか分からないといえばそうなのですが。電子書籍端末事業に関しては、教育分野に活路を見出そうとしているので、簡単になくすことはないんじゃないかな?

【山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ】楽天「Kobo Arc 7HD」 ~Google Playにも対応した楽天製Androidタブレット – PC Watch ※2014年2月18日

GooglePlayが使えて、microSDカードが挿せる、比較的高性能な7インチタブレット。ホーム画面がカスタマイズされていて変更できないのですね。root化して(略)

小説やゲームをリノベーション――電子貸本Renta!の「絵ノベル」とは? – ITmedia eBook USER ※2014年2月18日

これって選択肢のない「ビジュアルノベルゲーム」なのでは。

hon.jp DayWatch – 英国のアダルト電子書籍排除運動、今度はGoogle Play Booksが炎上 ※2014年2月18日

100作品ほど獣姦ポルノ作品が児童書とミックスして表示され、子供の親が激怒した模様。Google社では即時対応し、作品を抹消登録した

ネタ元が英国のDailyMailなので、東スポと同レベルくらいで捉えておいた方がいいとは思うのですが、登録者がわざとやったのかどうかは気になるところ。ゾーニングが厳しくなるだろうなあ。

デジタルブックワールド2014報告:第4回 電子書籍ビジネスが“ファイル変換”から“情報サービス”へと進化する | OnDeck ※2014年2月18日

デジタルブックワールド2014報告の連載最終回は、ティム・オライリー氏のプレゼンと、セルフパブリッシング(自己出版)の分析セッションについて。

英国の図書館が貸し出し窓口を無人化→アダルト小説の貸し出し数が一気に5倍 – ITmedia eBook USER ※2014年2月19日

通販もアダルト分野は強そう。NHKで「本屋さんではライトノベルの表紙が恥ずかしくて買えなかったけど、電子書籍になって気軽に買えるようになった」と喜んでいる70代男性、というニュースを見た記憶が。

eBookJapan、一部の書籍で複数端末間での同時閲覧を開始 – ITmedia eBook USER ※2014年2月19日

従来は複数端末に「コピー」ができず、1つのファイルを「トランクルーム」を介して「移動」する形でした。著者・出版社との契約がそういう条件だったのですよね。契約条件の見直しに応じてくれた作品から変更しているということでしょう。頑張ってるなあ。

「DMM.com」の電子書籍、コピー禁止回避の違法ソフト製造で会社社長ら逮捕 – MSN産経west ※2014年2月日

(cache) 電子書籍:保護解除プログラム作製の社長ら逮捕 京都府警 – 毎日新聞 ※2014年2月19日

毎日新聞が一番詳しかったのですが、ここは一定期間で消えちゃうので魚拓にて。「著作権法違反(技術的保護手段を回避するプログラムの製造)と特定商取引法違反(誇大広告)の容疑」とのことです。産経新聞によると被害者は「DMM.com」なので、PCフリーズやファイル破壊の問題が発生していた悪名高きDRM「CypherGuard」を迂回したということなのでしょう。

弁理士の栗原潔さんがこの「技術的保護手段」の解釈を試みていますが、今後裁判でこれが「技術的保護手段」なのかどうか争われることになるのでしょう。しかしこれ、どっちに進んでもイヤな未来になるような……

  1. 裁判で「技術的保護手段である」と確定した場合
    • 電子書店各社がみなキャプチャ禁止機能を導入するようになる
    • CypherGuardを導入するところが増えるかも
    • PCフリーズやファイル破壊の問題が再発・頻発するかも
  2. 裁判で「技術的保護手段ではない」と確定した場合
    • 「また冤罪か」みたいな警察不信が広がる
    • 連続キャプチャソフトが合法的に売られるようになる
    • 「著作権法を変えねば!」という方向に

寒い……((( ´w` )))

ストア配本の書店を追加しました! :: BCCKS情報局 ※2014年2月20日

Kindleストア、iBooks Store、楽天Koboに加え、紀伊國屋書店 Kinoppy、Sony Reader Store、BookLive!、ブックパスの計7書店へ配信できるようになりました。さっそく月刊群雛創刊号も申請しておきました。より多くのユーザーに届けられるのは嬉しいのですが、検証が大変だ……ReaderはEPUB 3にまだちゃんと対応できていないはずなんだけど、大丈夫なんだろうか?

ComicWalker(コミックウォーカー) | KADOKAWAの人気マンガが200作品無料で読めるウェブコミックマガジン ※2014年2月21日?

KADOKAWAのウェブコミックマガジンが3月22日に始まるようです。ティザーサイトがオープンしています。

17年分の『インターネット白書』バックナンバーを無料公開 「インターネット白書ARCHIVES」 Webオープン! -IAjapan/JPNIC/JPRS/インプレスR&Dの共同企画 | インプレス R&D ※2014年2月21日

バックナンバー無料化です。なんとも太っ腹! 今後は最新号だけ有料販売という形にしていくのかな?

TPP、大枠合意探る 22日から閣僚会合 :日本経済新聞 ※2014年2月22日

出版にも関わる大きな動きというところでピックアップ。

海外での著作権収入を増やしたい米国が各国に期間延長を働きかけている。アニメやゲームの輸出に力を入れる日本は米国と共同歩調をとる。カナダなども国際標準の70年を容認する見通し。アジアの一部は一律の延長に慎重で、分野によって違う年数を設けられる例外規定もつくる方向だ。

「また日経か」と看過できる報道ではないです。どこからどういう情報が出るとこういう記事になるのか。

夜に直接お会いする機会があったのですが、かなり怒ってらっしゃいました。

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