経済産業省(大和総研)の試算した電子書籍の越境取引額はOnDeck weeklyの読者アンケートを元にしている

税制調査会(国際課税DG③) 〔国境を越えた役務提供の市場規模の試算〕経済産業省資料

先日行われた「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム(Archive)」は、紀伊國屋書店社長による「消費税率が10%になった時にはうちも白旗を揚げる」とか「電子書籍はどこで買っても同じだから価格だけの勝負になってしまう」といった発言が、(個人的に)いろいろ波紋を呼んでいます。

それはともかくとして、フォーラムで参照されていた経済産業省による試算「電子書籍の越境取引額350億円」という数字(上図)はどういう根拠なんだろうと思い、原典(内閣府に資料がありました)をあたってみたところ、「OnDeck weekly」が2013年3月に行った読者アンケートを元にしていることが分かりました。

あかんやん!!

こちらの資料の5ページ目を見ると……

税制調査会 (国際課税DG3)国境を越えた役務提供の市場規模の試算 経済産業省資料

右下に

出典:インプレスR&D「電子ストア利用動向調査」(2013年4月版)より経済産業省作成

とあります。この数字は、「OnDeck weekly」2013年5月2日号に掲載されています。

「OnDeck weekly」2013年5月2日号

OnDeck weeklyはインプレスR&Dが発行している、アンケート参加者に無料で配布するデジタル雑誌です。電子出版関係の良質な記事が多く掲載されており、ボクも愛読しています。

何が「あかん」かって、OnDeck weeklyの読者という時点で、めっちゃバイアスかかっている(偏ってる)のです。アンケートに答えているのは、出版関係者とか、電子書籍に興味ある人が中心なのです。

「そういう人たちによる回答なんだよ」というのを分かった上で使うならいいのですが、ここから海外企業の売上割合を算出するって無理がある。さすがに複数回答だというのには気づいていて、「延べ利用者数を全体の延べ回答者数で除算した割合を推定利用率とした」と、数字をこねくり回してますが、元が偏ってるんだから意味がないです。

こちらの資料の5ページ目を見ると……

税制調査会 [際D3-3] (国際課税DG3)国境を越えた海外電子コンテンツの市場規模について 経済産業省資料

どうやら、やらかしているのは大和総研みたいですね。右で参照しているインプレスビジネスメディア「電子書籍ビジネス調査報告書2013」には、NTTレゾナントのgooリサーチを使った、電子書店別利用率調査(※比較的信頼性が高い)が載っているはずなのですけど……。

総務省調査の「Google+が国内SNSで2位」といい、なんだかなあと思った次第でした。国の方針を決めたりする方々には、もっとしっかりしていただかないと。

そういえば以前、OnDeck weeklyの読者アンケート結果を使い、単純に足し算して「電子書籍シェアはKindleとiBooksで利用率70%超!」って書いちゃったメディアがあったなあ……リンクは貼りません。複数回答すら考慮していないという。5位まで足すと、100%超えちゃうよ!

ボクもいつかやらかすかもしれないから、気をつけよう。

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