「少年ジャンプ+」「ドワンゴがi文庫と読書メーターを買収」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #136(2014年9月22日~28日)

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毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「少年ジャンプ+」「ドワンゴがi文庫と読書メーターを買収」などが話題になっていました。

「週刊少年ジャンプ」をサイマル配信する新アプリ「少年ジャンプ+」公開 -INTERNET Watch ※2014年9月22日

ついに週刊少年ジャンプ電子版が定期配信! 年初の予測では、週刊少年マガジンの方が先だと踏んでいたのですが。それに、電子書店を使わずネイティブアプリだけで配信するというのは予想外でした。記念号でテストした結果、その方がいいという判断に至ったのでしょう。ちなみに「ジャンプLIVE」は「少年ジャンプ+」に吸収されました。

また、同時に漫画投稿サービスの「少年ジャンプルーキー」を開始するというのは衝撃。これ、Kindleストア日本上陸時にKDPが同時に始まったのと同じくらいインパクトあるかも。これにははてなが関わっているそうです。

新規連携機関の追加と既存連携機関との連携方式の変更を行いました(2014年9月22日) « 国立国会図書館サーチについて ※2014年9月22日

どこのメディアでもニュースになっていませんが、こういう動きをきちんと認識できていなかったのでピックアップ。国立国会図書館サーチが、東京都立図書館デジタルアーカイブや駒澤大学電子貴重書庫と連携を開始しています。

実は、検索対象データベース一覧を見ると、既にすごい数の連携が行われていることが分かります。ちょうど、福井健策さんの『誰が「知」を独占するのか-デジタルアーカイブ戦争』を読んでいたのですが、「提案2. 全国のアーカイブをネットワーク化し、独自の横断検索を実現」って、こういうことですよね。

なお、国立国会図書館サーチで連携先を含めて検索する際は、「すべての連携先を検索する」にチェックを入れておく必要があります。

どっちがどっち?:名前を間違われやすい2大“主婦”出版社、楽天Koboでコラボ企画を開催 – ITmedia eBook USER ※2014年9月22日

主婦と生活社と主婦の友社のおもしろコラボ。昭文社と旺文社によるコラボ企画「どっちがどっち?!」が元ネタで、ちゃんと許可も得ているそうです。

期待しています!

竹書房の4コマ漫画誌『まんがくらぶオリジナル』12月号で休刊 – ITmedia eBook USER ※2014年9月22日

漫画誌の休刊はさほど珍しいことではありませんが、連載作品や漫画家がどうなるか、方針すら告知されないというのは珍しいかも。どうなるんだろう?

電子書籍、紙と一体編集 講談社がNECと制作システム :日本経済新聞 ※2014年9月23日

有料会員限定部分に「8月末までに新システムで186作品を作成。凸版印刷や大日本印刷などと協力して実証実験」とあり、これから本格運用を開始するようです。NECのプレスリリースが記事の後追いで出ていましたが、XML形式データの作成・編集ソフトです。

恐らく従来は Adobe InDesign を使っていたと思うのですが、EPUB出力がダメらしいんですよね。NECのシステムは他の出版社への提供も検討しているそうで、もしかしたら InDesign のリプレイスが急激に進むかも?

目指すのは「本を媒介としたコミュニケーション」――読書メーター・赤星琢哉 – ITmedia eBook USER ※2014年9月24日

「読書メーター」代表 赤星琢哉氏へのインタビュー。冒頭に「海外では、読書コミュニティーサイト大手のGoodreadsがAmazonに買収されるなど、ビジネス的な側面で注目の動きもみられる。」と書かれているのが、今読むと何か示唆的な。

今年は本&ゲーム&報酬の組み合わせがアツい? 注目したい2つの動き – ITmedia eBook USER ※2014年9月24日

「ゲーム要素をブレンド」というか、「ビジュアルノベルゲーム」そのものではないだろうか、と思った動き。条件分岐せず一本道の「ひぐらしのなく頃に」をゲームと呼ぶのはちょっと無理があるのと同じように、ここまでくると「本」と呼ぶのは難しいような。「本」なのか「ゲーム」なのか、という定義論に意味はないかもしれませんが。

[FT]対アマゾン、作家千人超が独禁違反の調査要請 :日本経済新聞 ※2014年9月25日

ジェフ・ベゾスはワシントンポストを買収するなど、入念なロビー活動を行ってきたわけですが、果たして司法省は動くか否か。アマゾンの圧力は「優先的地位の濫用」なのかどうか。注目。

ネットでマンガ無料公開続々、出版社の狙いは : 本よみうり堂 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) ※2014年9月25日

ネット上の無料購読は、書店での「立ち読み」の役割を果たしているわけだ。

マンガ誌が売れなくても単行本が売れれば、出版社的にはOK。ところが書店は、マンガ誌が売れなくなると苦しい。そして書店が消えていくと、単行本が売りづらくなる。この辺りを解決すべく「空飛ぶ本棚」みたいな試みが進められているわけですが、まだマンガ誌には導入されていません。うーん。

ドワンゴ、電子書籍ビューワー「i文庫」取得 開発者は電子書籍チームに – ITmedia ニュース ※2014年9月25日

業界関係者に「まじかよ!!」と衝撃が走りました(その1)。「i文庫」は非常に使い勝手がいいので、これによって「ニコニコ静画(電子書籍)」アプリのUXが改善されるのは喜ばしいことです。

がしかし、ドワンゴと合併するKADOKAWAには「BOOK☆WALKER」があり、それぞれ別のビューワ(ドワンゴは独自開発、BOOK☆WALKERはACCESS)を使っています。ストア特性や客層が異なるため、10月1日の合併以後もそれぞれ継続する予定なのですが、客観的に見てリソースが重複しているのも事実。さてどうなるか。

ドワンゴ、読書メーターのトリスタを17億円で取得 – ITmedia eBook USER ※2014年9月26日

業界関係者に「まじかよ!!」と衝撃が走りました(その2)。ボクは以前、「日本の電子書籍、普及の課題は『ディスカバラビリティ』」をINTERNET Watchへ寄稿しましたでこんなことを書きました。

「ブクログ」や「読書メーター」を電子書店が買収したり提携したり、というのは超・アリだと思います。

「電子書店」と一般論で語ってますが、きっとアマゾンやアップルに先を越されるんだろうな、と思っていました。まさか日本企業が先にこういう動きに出るとは。そして、ブクログはどうなる!?

明治図書出版はなぜDRMフリーの電子書籍販売に踏み切れたのか――担当者に聞いてみた – ITmedia eBook USER ※2014年9月26日

ここ、重要。

(雑誌を)10年間DRMフリーで販売してきて、何か問題が起こったかというと、結局起こっていない。そうした事情で、(書籍も)DRMフリーに舵を切りやすい土台はあったと思います。

※()は筆者の追記

正確には「DRMフリー」というより、その発展型である、購入者情報を埋め込む「ソーシャルDRM」です。「この程度の緩いDRMで充分だ」という認識が、もっと広がっていくといいのですが。利用者をベンダロックインするガチガチのDRMは使い勝手が悪いし、ストア閉鎖時に巻き添えを食らうなど、いろいろ弊害があるので。

ネット小説・漫画サイトのアルファポリスがマザーズ上場へ – ITmedia ニュース ※2014年9月26日

おめでとうございます!

編集者の日々の泡:集英社2014/5決算出る ※2014年9月26日

このエントリーを見て「おや?」と思ったのでピックアップ。集英社の決算について。

●2014年5月決算

売上高 1233億円  前期比-1.6%

営業利益 29億円 前期比+36%

純利益  38億円 前期比+18%

営業利益がどーんと増えています。もうちょい詳しい記事はないかと検索したら、「新文化」に9月2日付で載っていました。

売上高は1232億8300万円(前年比1.6%減)で減収。利益面では営業利益28億9700万円(同36.2%増)、不動産収入などの営業外収入を含めた経常利益は73億4100万円(同12.5%増)、当期純利益は37億5600万円(同18.0%増)で増益決算となった。

営業利益は本業での収益を示す指標です。大手出版社や新聞社は不動産収入がかなり大きいのですが、本業ではないため営業利益には含まれていません。売上は減っているのに営業利益が大幅に伸びているということは、製造原価や販売管理費が大幅に減っているということ。

製造原価は著者への原稿料・印税、編集・校正・装丁・デザイン費、印刷・製本など。販売管理費は、広告費、間接部門の人件費、福利厚生費、在庫の倉庫費など。さて、どこが減ったのでしょう?

そしてもう1つ興味深いのは売上構成比。

売上高の内訳は、「雑誌」748億2700万円(同3.4%減)、「書籍」164億4100万円(同4.0%減)、「広告」110億2100万円(同3.8%減)、「その他」209億9400万円(同8.7%増)。

「その他」だけが伸びています。想像ですが、ここにはデジタル部門の売上とライセンス部門の売上が入っていると思われます。

他社も確認してみたところ、講談社も2月20日の決算では営業利益が大幅増でした。KADOKAWAの2014年3月期は営業利益大幅減ですが、ネット・デジタル関連の売上は伸びています(前期比129.7%)。小学館は営業利益非公表なので分かりませんが、恐らく同じような傾向にあるのではないかと。

セルフパブリッシャーのためのTumblrテーマ 「でんでんランディングページ」をリリースしました – 電書ちゃんねる ※2014年9月27日

「でんでんコンバーター」は「どうやって作るか?」を解決する手段ですが、こちらは「どうやって宣伝するか?」を解決する手段。本を出す前に、本を紹介するランディングページを用意しましょう、という提案です。

さっそくボクも作ってみました(既刊ですが)。

これもうきっとGoogle+ガイドブック | Landing page

HTMLを直接編集するのではなく、テーマの編集画面から入力していけばOKです(最初それに気づかず、なぜ反映されないんだああああと頭を抱えていたのはナイショ)。

反響呼び相乗効果 「リアル書店で電子書籍」3カ月 | 日本海新聞 Net Nihonkai ※2014年9月28日

「BooCa」の続報。鳥取の今井書店の事例です。続きを読むのに会員登録が必要で、メールアドレス・パスワードだけではなく、氏名・年齢・性別・住所・電話番号まで必須というのが非常に不愉快でしたが、気になるから登録して読んでみました。

  • 同店の電子書籍の購入層は50~80代の中高年が多い
  • 地元出版7タイトルも独自に電子化している
  • 「もう少しコンテンツが増えれば」という声も

おおむね好評のようです。ただ、「BooCa」は「実証実験」ではなく「実証事業」(by JPO 永井祥一専務理事)なら、そろそろコンソーシアムが11月21日以後どうなるかについて情報発信して欲しいところ。

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