角川アスキー総合研究所のエンタメツイートリアルタイム解析技術がもたらす未来 ── CatchTheMomentレポート

CatchTheMoment

角川アスキー総合研究所は4月1日、リアルタイム・エンタテインメント・ツイートランキング「CatchTheMoment」の紹介イベントを行いました。現地から可能な限りリアルタイムレポートしていましたが、Twitter Japan 牧野友衛氏辺りから後で書き足しています。

リアルタイム・エンタテインメント・ツイートランキング

「CatchTheMoment」は、角川アスキー総合研究所のフィルタリング技術と、東京大学生産技術研究所 喜連川研究室の高速言語解析エンジンで、エンタテインメントに関する全量ツイートをリアルタイムに解析する技術です。

これに加えて、KADOKAWAグループのエンタテインメント辞書を使い「読む、見る、行く、買う、食べる、楽しむ」など、ソーシャルメディアでのコミュニケーションにおける生活行動を、Twitter上からリアルタイムに分析・可視化する、というものです。

店頭やECでの販売施策や、広告効果測定などリアルタイムなマーケティング活動することを目的としているそうです。

ビッグデータ解析でエンタテインメントコンテンツはどう変わるか? ── 角川歴彦氏挨拶

まず、KADOKAWA 取締役会長 角川アスキー総合研究所 代表取締役社長 角川歴彦氏が主催者挨拶をしました。

角川歴彦氏

2020年の東京オリンピックに向けて、コンテンツが爆発的に増加していく2015年ということで、まず角川氏は「Netflixの日本上陸」を挙げました。映像配信市場にパラダイムシフトが起きるだろう、という予測です。

NHKが放送番組のネット同時配信開始を発表したり、映連の配信事業「ボノボ(仮称)」、スマートTVの本格発売でマルチリモコン化など、刮目しておかねばならない技術の進歩が次々と登場しています。

コンテンツが爆発的に増えることで、「観たいものに辿りつけない」「今、何が一番人気なのかわかりにくい」という状況が発生します。そこで、総合コンテンツガイドとしての「マルチコンテンツガイド」が必要だ、と角川氏は言います。そして、リアルタイム性の重要性を説きます。

ビッグデータ解析

リアルタイムが重要なのは、「明日になったら、デジタル世代の若者の話題は、新しいものに移ってしまっている」という問題意識です。そこで、Twitterの膨大なつぶやき(ビッグデータ)をリアルタイムで高速解析する、というというのが「CatchTheMoment」です。

CatchTheMoment

KADOKAWAにはエンタメ用語辞書があります。これをもとに、コンテンツごとの「フィルタリング」「レーティング」「ランキング」付けを行っていく、というものです。

産学連携共同研究

産学連携共同研究ということで、このような協力体制を構築しています。

ユーザー目線でみたTwitterを中心としたリアルタイムソーシャルメディア ── 川上量生氏挨拶

川上量生氏

「これがKADOKAWA・DWANGO最初の成果です!と言いたいところですが、実は合併前から進めていた話です」と、KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長 川上量生氏。

1. TwitterのアーキテクチャはFacebookより優れている

Facebookは「ネットをツールで使う人」向けツールだけど、Twitterは「ネットを住処として使う人」に最適化されている。面倒くさい人間づきあいを100倍くらい濃縮するツールは「疲れる」から「飽きる」ため、コミュニケーション負荷が少ない方へ流れる、と川上氏は言います。

2. Twitterを一番活用しているのは日本人

Twitterでは匿名性を利用した「キャラチェンジ」ができる、だから匿名性が好まれる日本人にTwitterは向いている、と川上氏。『ラピュタ』で起こる「バルス」祭りなど、日本人のネット活用術は先進的だと考えているそうです。

3. Twitterは「今」のネット社会の実態に一番近い

川上氏は、今はGoogleで検索するよりTwitterで検索したほうが、ネットで「今」どんな反響が起きているかをリアルに把握できる、と感じているそうです。イベントをやるとき、効果測定の指標にできる、ユーザーの生の声だ、と。

DWANGOのイベントは生放送がセットになっているので、現地に数万人いたとしても、ネットには数十万人いるから、反響はネットで拡散されていくのだそうです。ただし、Twitterはアーカイブが弱く、古い情報を掘り出しているうちに、新しいツイートがどんどん出てきてしまう、という難点もあると。

そういう意味で、CatchTheMomentは定量的なマーケティングツールとして使える、と川上氏。ユーザーとして期待しているそうです。どういう形で活用できるか、まだ開発途上で正式サービスインできるような状態ではないが、この後デモを行うのでぜひどんな活用法があるか一緒に考えていただきたい、と挨拶を締めくくりました。

デモ

リアルタイムのタイムラインで話題になっている言葉のランキングが、自動解析されていました。4月1日なので、エイプリルフールネタが多いようです。

CatchTheMomentの画面

ワードの出現数や、リツイート率、レーティング、ポジネガ判定、共起語判定などもできます。

個別のワードの解析画面

イベントや告知などの施策を行ったとき、リアルタイムで反響解析ができる、という感じでしょうか。リアルタイム解析は30秒~60分(24時間までは可能とのこと)、開発中のヒストリー解析は、過去3カ月が遡れるそうです。

解析内容

感動語「楽しかった」「よかった」「嬉しい」「幸せ」「美味しかった」「素敵」「綺麗」などなど。エンタイコンテンツと一緒に書かれる頻度が高いワード群を抽出し、リアルタイムで解析ができます。

複数ワードの重ね合わせ

これは昨年の「ニコニコ超会議」の時のツイート解析。時系列出現数は、イベント開始から終了にぴったり合ってますね。

将来的に、過去を分析することによって「未来予測」ができるようになったらいいな、という構想もあるそうです。

Twitterで見つけるリアルタイムな話題

Twitter Japan 牧野友衛氏

続いて、Twitter Japan 牧野友衛氏が登壇。角川歴彦氏に「『艦これ』流行ってますね」という話をしたら、他のエンタメとくらべてどのくらいの位置付けなのか? というのを知りたいと言われたのが、今回の協業のきっかけとのことでした。

Twitterの特徴

Twitterの数字

  • Real Time(今がわかる)
  • Public(開かれている)
  • Conversational(会話が生まれる)
  • Distributed(拡散する)

Twitterでリツイートされた数の多い投稿データをランキング化しているけど、有名人のツイートだけではなく、ごく普通の一般人のツイートも非常に多くランク入りするとのことです。

誰もがカメラを持っていて、即座にネットに上げられる時代ですもんね。

ソーシャルデータ活用事例

NTTデータの横尾朋喜氏

続いてNTTデータの横尾朋喜氏が登壇し、ソーシャルデータの活用事例を紹介しました。協力体制の図でNTTデータは「全量ツイート日本総代理店」という位置づけになっていましたが、分析手法でも関わってるみたい?

インターネットの情報流通量すごい、の図。

インターネットの情報流通量すごい、の図。

ワールドカップ

2014 FIFAワールドカップの時のツイート解析。

属性解析

過去の発言からユーザー属性を分析(プロファイリング)した結果。長谷部選手のファンは40代男性が多いけど、内田選手のファンは20代女性が多い、みたいな感じ。

行動ターゲティング

こういうのを応用すると、過去の発言内容からピンポイントでリコメンド広告を表示したりできるそうです。

株式指標との関連性分析

株式指標との関連性を分析したり。

位置情報を元に地域特性を分析

位置情報を元に地域特性を分析したり。

まとめ

ビッグデータすごい! というプレゼンでした。

長年研究してきた成果

喜連川優氏

最後に登壇したのは、国立情報学研究所 所長で東京大学生産技術研究所教授の喜連川優氏。これは長年研究してきた成果なのです、とのこと。

ウェブサイトの解析

当初はウェブサイトの解析を行っていたけど、「年単位の情報なんて役に立たない」と言われ、ブログに、次にTwitterへと分析のフィールドを移してきたそうです。とんでもない量のデータをクロールで集めてくるので、回線を占有してしょっちゅう怒られてる、みたいな逸話がありました。

○○が不足

東日本大震災の時のツイート(上)とブログ(下)の解析。件数からして、Twitterの方が圧倒的に多いですね。「○○が不足」という中に物資ではなく「情報」が混ざっているのが印象的です。

○○が怖い

「○○が怖い」の中に「音」がありますが、これは緊急地震速報のことだとのこと。

可視化

ワード解析の結果を、こんな感じで可視化しているそうです。ワードのポジネガ、反響数、他のワードとの関連性などが、この毬藻みたいな図になっており、拡大や縮小もできるようになっています。ぽよんぽよんしていて面白い。

毬藻拡大

拡大。

さらに拡大

さらに拡大。先端には「RT」と書いてあります。

ポジネガ判定

ポジネガ判定。

今後、考えていきたいこと

最後に、「皆様と一緒に考えたいこと」として、角川アスキー総合研究所の方が下記のようなことを挙げていました。広告代理店や、マーケティング部門へのシステム提供、みたいな感じですね。

考えていきたいこと

ドリルの穴

確かに面白いんだけど、使い切れるのかな……? というのが正直な感想。

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