毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「米国でKindle Unlimitedが独走体制?」「電子版別冊文藝春秋発売」などが話題になっていました。
「連載取り消し」から「単行本発売」へ――漫画家やまもとありささんに心境を聞く|弁護士ドットコムニュース ※2015年5月5日
「出版社の会議で通って、連載」というレールしか見えていなくて、そのレールから外れたときに、「あ、こっちの道もあったんだ」と気づいたんです。自由に描けるなら、単行本じゃなくてもいい。今はいろんなマンガの発表の仕方がある、と。
pixivやニコニコ静画でマンガを連載して商業出版へ至った『アニウッド大通り』の記伊孝さんや、商業誌を飛び出し個人で連載を続けている『あにめたまえ!天声の巫女』のRebisさんなど、いろんな事例がありますね。面白い時代になりました。
米国の月額サブスクリプション制電子書籍サービス、Amazon社「Kindle Unlimited」が独走体制に ※2015年5月6日
これはツッコミを入れざるを得ない。hon.jpの記事中には、Kindle UnlimitedとScribd・Oysterの知名度に大きな差がついた点だけが挙げられています。しかし、Ink, Bits, & Pixelsの元記事 “Amazon is Killing it in the Subscription eBook Market” を読むと、Kindle Unlimitedの会員が2014年11月から2015年4月の間に10%増加し、より小さな競合他社(Scribd・Oyster)の顧客は平均30%下落したとあり、どう考えてもそっちの方が致命的ではないか、と。
ただ、相変わらずKindle Unlimitedには、大手出版社が配信していない状態のまま。大原ケイさん曰く「おそらく大手からのコンテンツは見込めないアマゾンがインディー作家の作品の膨大なプールにどこまで資金を注ぎ続けることができるか」とのこと。Kindle Unlimitedがインディーズ作家を育成する場になっているなら、それはそれである意味健全なのかもしれません。
小説とラノベを分けるのはナンセンス!? 人気の「キャラ文芸」とは何か?【識者解説】 | ダ・ヴィンチニュース ※2015年5月7日
中高生向けライトノベルと20歳以上を対象としたライト文芸・キャラ文芸はターゲットの違いによって文章の書き方が違うという点や、読者が大人になるに従い作家側も作品のターゲットを変えざるを得ない、というような事情が明かされています。面白い。
電子雑誌に完全移行した『別冊文藝春秋』6月号は5月8日発売 – ITmedia eBook USER ※2015年5月7日
買ってからガッカリするのが嫌だったので事前に確認をしましたが、リフロー型です。ちゃんと文字サイズが変更できます。画像になってるのは中扉くらいかな(まだ全部読んでない)。
文字モノ買って固定レイアウトだと、ダメージ大きいんですよね……ホッとしました。ちゃんとアピールした方がいいと思いますよ。
短期連載:雑誌読み放題サービスを比較する――ラインアップ編 – ITmedia eBook USER ※2015年5月8日
これは良い比較。これ、似たようなことをよくやってたのでわかりますが、調査にはかなり手間がかかるはず。ちなみに無記名記事ですが、書いてるのはボクじゃありません。ラインアップの次はどういう軸で比較するのかな?
読み放題サービス、米国では前述のようにKindle Unlimitedが強いようですが、日本ではdマガジンが強い。キャリア依存があるからと参考扱いにされているブックパス(読み放題)もそこそこ強い、はず。それはこのラインアップ比較記事からも読み取れます。出版社は「儲かる」ところにコンテンツを配信しますから。
しかし、1番手のドコモがオープン戦略を採り(docomo IDは携帯回線の契約がなくても使える)、2番手のauはキャリア依存でユーザーを縛り付けているという構図が、ある意味おかしい。普通、逆でしょと。
ANA国際線の機内で電子書籍サービス――BookLiveがコンテンツ提供 – ITmedia eBook USER ※2015年5月8日
ANA国際線は2014年11月に情報工場とオトバンクとも提携してダイジェスト版の配信を行っています。また、記事中にもありますが、ライバルJAL国際線は2011年からeBookJapanと提携し、当初は小学館のマンガのみ、のちに集英社、講談社、白泉社などのマンガがラインアップに追加されています。
健全なキュレーションメディア運営のための対応策について(魚拓) ※2015年5月8日
先週のまとめでピックアップしたサイバーエージェント運営のバイラルメディア「Spotlight」問題に、サイバーエージェントが素早く「対応策」を出してきました。対応早いのはいいのですが、言ってることがなんかちょっと変。
※「Amebaみんなの編集局」について
「Ameba」が運営する「Amebaみんなの編集局」は、「Spotlight」「by.S」などのキュレーションメディアにて、記事執筆を行うユーザーをネットワーク化したユーザー参加型のサービスです。2015年5月8日時点で1060人のユーザーが登録しております。
ユーザー参加型サービス=CGM(Consumer Generated Media)だから記事公開前のチェックがない、という論法のようです。しかし、Amebaみんなの編集局の募集記事(魚拓)には「募集職種 公式ライター」って書いてあるんですが。これ、どういう契約になってるんだろ?
2020年、国会図書館が満杯に 納本は年50万点超:朝日新聞デジタル ※2015年5月9日
年間50万点!? えーっと、「出版年鑑」2012年のデータで、書籍が8万2200点。雑誌が3936点で、仮にすべて週刊だとしても×52回で20万4672点……あ、そうか、数が多いのは新聞かな。国会図書館には全国紙だけではなく、地方紙も一通り保管されてますから。なお、記事中には(DVDやCDも含む)とあります。
でも、民間出版物(図書)の納入率が98.9%だから、残念ながら「日本で出版された本が全部あるのが国会図書館」ではないんですよねぇ……無い場合もあるという。特に、取次流通ではない本は、網羅率が低いはず。ちなみに『月刊群雛』はちゃんと毎月納本しています。うふふ。
お知らせ
日本独立作家同盟主催で5月16日(土)14時から、日本SF大賞受賞作家である藤井太洋氏を講師に迎え「電子時代、独立作家の執筆・出版手法」というセミナーを開催します。
藤井氏が処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングする際に採った手法や、商業出版で得られた経験を余すところなく紹介いただきます。特に、宣伝手法はセルフパブリッシング作家に限らず、あらゆるジャンルで活かせることでしょう。入場料は一般2000円です。チケットはPeatixにてお求めください。