「TPP関連法律案閣議決定」「Kindleストアの利用率45.0%」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #211(2016年3月7日~13日)

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毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「TPP関連法律案閣議決定」「Kindleストアの利用率45.0%」などが話題になっていました。

なぜスクープを連発できるのか 新谷学・週刊文春編集長を直撃 – Yahoo!ニュース ※2016年3月7日

週刊文春の現編集長は、この記事でこういうことを言っています。

ここは大事なので明確にしておきますが、うちの方針としてネタは金で買いません。これは大前提。そして、最初からお金目的で編集部にネタを持ち込む人に関しては、基本的に断ります。駆け引きで釣り上げようとする人も同じです。

では、週刊文春の元編集長である花田紀凱氏が少し前にYahoo!ニュース個人に書いた文章を引用します。

ぼくの経験で言うと、スクープネタの場合でも最高に払ったのが100万円だ。オウム真理教坂本弁護士一家殺害事件に関するスクープ写真数点が知人を通じて持ち込まれ、200万円というのを100万円に値切って買ったが、警視庁で確認するとニセモノとわかった。

どっちかがウソをついているのか、「大前提」が昔とは変わったのか。さてはて。

Facebookら、「Instant Articles」向けのWordPressプラグインを開発 – CNET Japan ※2016年3月8日

あーなるほどそうきたか、と思った事案。2月29日のまとめで、“リリースを参照したら「媒体社の方々は規模、国や地域を問わずインスタント記事をFacebook上で配信いただけるようになります」とあり、個人でも利用可能なのかどうかが興味津々” と書いたのですが、WordPressプラグインを提供するということは恐らく「インスタント記事」は個人でも利用可能なのでしょう。いろんな意味でおもしろくなりそうです。

米最高裁、アップルの上訴退ける–電子書籍の価格操作めぐる訴訟 – CNET Japan ※2016年3月8日

長かった裁判もついに決着。たまに誤解している人がいますが、「エージェンシー・モデルが違法」ではなく、共謀して値段をつり上げたカルテル行為が独占禁止法違反とされた、という話です。

どうも、最高裁判事で一番保守的な方がつい最近亡くなって、後任は上院の承認が必要なので、共和党が新大統領就任後まで引っ張ろうとしているそうです。という事情もあって、こういう微妙な裁判は審理せず棄却しちゃう傾向にあるのだそうです。ひょええ。

デジタル時代の「孤児作品」問題を解消するには–権利者団体が議論 – CNET Japan ※2016年3月9日

熱出して倒れてて残念ながら行けなかったシンポジウム。著作権管理団体の提案ですから、著作権管理団体の役割を強くする方向になるのはある意味当然のこと。JASRACが「フェアユース」を完全否定しているのも、まあいままで通り。

内閣官房TPP政府対策本部、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」に関する資料等をウェブサイトに掲載 | カレントアウェアネス・ポータル ※2016年3月9日

TPPでよみがえる“マジコンプレイ違法化”の亡霊、「みなし侵害」で成仏するか? 著作権法改正案が明らかに -INTERNET Watch ※2016年3月10日

うわーこの膨大な法律案の中から掘り出さないといけないのかと思っていたら、INTERNET Watchが綺麗にまとめてくれました。ぐっじょぶ。これまで話題に挙がることの多かった「非親告罪化」「保護期間延長」「法定賠償金制度」の3点セット以外に、アクセスコントロール回避行為が不正競争防止法だけではなく著作権侵害にもなる、という点をピックアップしています。

しかしこのTPP関連法案、日本政府が異常に前のめりなのはさておき、施行日はTPP発効時になっています。域内GDP85%以上の国で承認されないと発効しないので、完全にアメリカの大統領選と議会次第ということに。というか、有力候補の民主党ヒラリーはじめ有力大統領候補は軒並みTPPに反対しているわけですが。

もしかしたら霞ヶ関の方々は「発効しない」可能性が高いことを前提にした上で動いてるんじゃないかという気がしてきたのですが考えすぎ? 元々アメリカから強く要求されていた事項ですから、「せっかく日本が対応したのに、肝心のアメリカがダメにしてしまったではないか!」みたいな抗弁に使えますよねコレ。

広告モンスターと化した「インスタグラム」の憂鬱:激増する出稿をいかに制御するのか? | DIGIDAY[日本版] ※2016年3月10日

Instagramが広告だらけになってきた、という話。つい先日話題になった「Googleは使わない、SEO対策しているから——Instagram有名人のGENKINGが語った10代の「リアル」」と合わせて読むと、いろいろ味わい深いです。人が増えると、楽園が楽園じゃなくなるのですよね。

【経済インサイド】ついに楽天が壁にぶち当たった 通販サイトの成長鈍化、アジアサイトも閉鎖、電子書籍低迷 その原因を探ると…(1/6ページ) – 産経ニュース ※2016年3月10日

「電子書籍低迷」というのは、Koboを買収した際ののれん代78億円を減損処理したことだけが根拠のようです。「計画の遅れ」というのがどの程度の話なのかわからないので、とりあえず直近の決算資料(2月12日)をチェックしてみたのですが、電子書籍については図書館サービスのOverDriveだけしか触れていない状態。情報が足らないので判断できないです。2月24日のhon.jpによると、世界でのユーザー数はまだ伸びてるみたいなんですけどね。

電子書籍ストア・アプリの利用率は男女ともにKindleが1位、MMD調査 – ケータイ Watch ※2016年3月11日

複数回答可で、Kindleストアが45.0%、楽天Koboが27.6%、iBooksが17.9%、Reader Storeが13.3%の順。なにげに5番手でLINEマンガが入っているというのが凄い。昨年4月の調査では、Kindleストアが46.6%、楽天Koboが27.8%、iBooksが20.3%、eBookJapanが14.6%の順なので、1位2位はあまり変わってないけど、3位以下に結構変動がある感じです。

なお、同じMMD研究所の調査(2月25日発表)で、全体の利用率は無料22.9%、有料16.5%という結果なので、まだまだ普及率が低い中での%だということは念頭に置くべきでしょう。

しかし、電子書籍専用端末の利用率9.3%って「電子書籍を利用しているユーザー」での数字ですから、相当低い。調査対象が「20歳~59歳」で年配の方が除外されているからかも? インプレスの『電子書籍ビジネス調査報告書2014』における電子書籍専用端末の保有率は「全体の中で」4.3%でした。


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