「海賊版組織はるか夢の址の実態」「保守速報に賠償命令」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #298(2017年11月13日~19日)

 先週は「海賊版組織はるか夢の址の実態」「保守速報に賠償命令」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年13日~19日分です。

週プレもジャンプも悪辣な被害を被っていた! 日本最大最悪の海賊版組織「はるか夢の址」の真実 週プレNEWS(2017年11月8日)

 1週前の記事ですが、海賊版サイト「はるか夢の址」の実態について詳細かつ丁寧にまとめた良い記事なのでピックアップ。「リーチサイト」を装いながら、実際には海賊版の供給源であったとのこと。リンク投稿者には報酬が支払われていたり、他のリーチサイトを潰すような工作まで行われていたそうです。いやー、ほんと「悪辣」という言葉がぴったり。

フェイクニュース:作られ方 ブログ管理人が内幕語る 毎日新聞(2017年11月13日)

 「オレ的ゲーム速報@刃」をまともに取り上げてしまったNHKクローズアップ現代+の「“ネットリンチ” なぜ会社に」に比べたら、運営者の後ろめたさについてきっちり掘り下げたり、Google への取材まで行っている、いい記事だと思います。ただ、「トレンドブログ」なんてカッコイイ呼び方はやめて欲しい……。

「iPhone X」で電子書籍。独自画面レイアウト/操作体系による電子書籍との相性は? PC Watch(2017年11月13日)

 山口真弘氏の「電子書籍タッチアンドトライ」。iPhone X は、想像以上に縦長なのですね。縦書きの文字ものを読む場合は、横持ちにしたほうがよさげです。「iPhone X 対応」をうたうアプリでも、iPhone X のセーフエリア(縦持ち時の上下に存在するコントロールボタンを配置すべきでない領域)にボタンを設置してしまっている事例があるというのが、なんのためのアプリ審査なのかという感じが。それにしても、斬新な持ち方。

仕掛け人に聞く『漫画 君たちはどう生きるか』大ヒットへの道のり 新刊JP(2017年11月15日)

 記事配信時点で53万部の大ヒット。仕掛け人はコルクの佐渡島庸平氏ではなく、マガジンハウスの編集者・鉄尾周一氏なのですね。1937年発行の名著が現代でも通用しそうだと漫画化の企画を立てたけど、マガジンハウスには漫画の制作ノウハウがない。そこで講談社・原田隆氏に相談、コルク・佐渡島氏に話が回ったとのこと。ただ、そこから出版まで2年がかりだったという苦労話や、原田氏がすでに亡くなられているという話も。佐渡島氏も「ヒットの理由が分析できない」とツイートしていますが、特別な「仕掛け」があったわけではないようです。あえて言うなら、歴史的名著を漫画という現代的なフォーマットで仕立て直した企画が勝因、ということになるのでしょうか。うーん、すごい。

「保守速報」の記事掲載、差別と認定 地裁が賠償命じる 朝日新聞デジタル(2017年11月16日)

 「保守速報」はあまりに酷いサイトなので、当然の判決だろうと思います。いい判例。ただ、まだこれは地裁判決で控訴方針とのことなので、確定したわけではありません。

熊本地裁:ネタバレサイト運営者 起訴内容認める 初公判 毎日新聞(2017年11月16日)

 こっちは「リーチサイト」ではなく「ネタバレサイト」逮捕後の続報。起訴内容、素直に認めているんですね。

「メディアビジネスは今すぐやめましょう」 KOMUGI(2017年11月16日)

 編集者の方が書いているブログ。前半では、メディアビジネスの収益源は購読料と広告の2つとした上で、それぞれの詳細と現状について整理。後半ではメディアビジネスに代わる「行動モデル(ユーザーに特定の行動をさせることでプロダクトの提供者から収益を得る仕組み)」の提案と実例についてまとめています。もう10年以上前に「これからは広告モデルではなく、送客・創客モデルだ」と盛んに言われていたのを思い出しました。だから正直、私にとってはあまり目新しい話ではないのですが、つい忘れそうになるのでピックアップ。スマホシフトでそういう状況が加速しているということなのかな、とも。

ネタバレサイト:ひっそり 人気漫画、販売前掲載 摘発影響?閉鎖相次ぐ 毎日新聞(2017年11月17日)

 こちらも「リーチサイト」ではなく「ネタバレサイト」の話。摘発を恐れて同種サイトの閉鎖が相次いでいるものの、まだ死滅したわけではないようです。いたちごっことはいえ、丹念な摘発が求められるところ。

「保守速報」賠償命令…判決で「まとめただけだから悪くない」がデマだと明らかに  弁護士ドットコム(2017年11月19日)

 法律論的にとても参考になる記事。「前提となる法律論は、あまり争いがないか、従前から解釈されてきたものがベース」とあり、もし控訴してもひっくり返すのは難しそうに思えます。まあ、プロバイダ責任制限法が適用される投稿サイトとは異なり、一定の意思に基づいた「編集」が行われているわけですから、「訴えられたら消せばいい」というわけでもないのは当然のこと。内容には違いがあれど、メディアという意味では「週刊文春」や「週刊新潮」などと同じ立ち位置なわけです。訴訟リスクと事業の持続可能性を考えたら、まずい表現はなるべく避けるという方向へ傾いていくのではないかと。


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