「通年で書籍が雑誌を逆転」「はちま起稿をDMMが」「NAVERまとめがみなし非表示対応」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #253(2016年12月26日~2017年1月8日)

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毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。1月2日はお休みしたので、新年一発目のまとめ。年末年始は「通年で書籍が雑誌を逆転」「はちま起稿をDMMが」「NAVERまとめがみなし非表示対応」などが話題になっていました。年末年始、気になる動きが多すぎ。

休刊・電子版移行相次ぎ、雑誌販売が書籍下回る 読売新聞(21016年12月26日)

 出版科学研究所から年末恒例の年間推定販売額速報値が発表。書籍が7300億円、雑誌が7200億円。とうとう通年でも逆転です。電子出版は1月25日発売号で発表かな。

日本法人代表が語る、Twitterの真実 プレジデントオンライン(2016年12月26日)

 ITジャーナリストの本田雅一氏による、日本法人代表の笹本裕氏へのインタビュー。日本でのMAUは、とうとう4000万を超えたそうです。日本では破竹の勢い!

 5ページ目で本田氏が「広告らしい広告を“見せられた”という記憶がほとんどありません」と言ってるのは「え?」と思ってしまいました。「これ、さすがに審査甘いんじゃないの?」と感じられるようなえげつない広告が、結構頻繁に流れてきますよ。

未来屋書店、32店舗で「デジ増し」開始 新文化(2016年12月26日)

 O2Oでひさびさに動きが。雑誌にクーポンの「mibonコード」が封入されており、電子版が無料ダウンロードできる仕組み。「空飛ぶ本棚」や「TSUTAYA Airbook」と同系統。来店増が期待できそうです。

“出版不況” 子どもが救う? NHK NEWS WEB(2016年12月26日)

 児童書はここ数年連続して拡大傾向にあり、その要因は学習漫画にあるとのこと。少子化でも、親や祖父祖母は子供のためのお金を惜しまないし、叔父叔母が子供のためにプレゼントするようなケースもあるようです。少し話は違うのですが、日本財団が始めた「これも学習マンガだ!」プロジェクトによって、図書館もマンガを積極的に購入するようになっているという話を聞きました。ジャンルによっては、ターゲットや売り方の工夫でまだ伸びる余地がある、ということなのでしょう。

電子書籍購読者の購入金額、読書の頻度と量が増加、メリットは「かさばらない」「手軽に購入」が過半数~ネオマーケティング調査 INTERNET Watch(2016年12月26日)

 単なる利用率ではなく、購入量や頻度も増加しているというのはいいニュース。ただ、なんで調査対象を20代~40代で切っちゃうんだろう……老眼で本が読みづらくなる世代に、文字が拡大できる電書は福音だと思うのですが。

英国出版事情(1/3) 本の未来を先取りするロンドン DOTPLACE(2016年12月26日)

英国出版事情(2/3)「本のショーウインドー」と化した書店の危機 DOTPLACE(2016年12月27日)

英国出版事情(3/3)大手広告代理店がバックアップ、「本屋で本を買おう」キャンペーン DOTPLACE(2016年12月28日)

 ロンドンとパリを拠点とするジャーナリスト、清水玲奈氏による英国出版事情の渾身レポート3回。盛んなセルフパブリッシング、ニッチな分野で成功している中小出版社、本のセレクトが良いことを理由に選ばれる独立系書店、「本屋で本を買おう」キャンペーン、未来の読者を育てるための子供に対するアプローチ、といった事例が紹介されています。

岩波文庫・新書、オーディオブックで配信開始 新文化(2016年12月27日)

 岩波文庫、岩波新書が初めてオーディオブック化されるそうです。配信はオトバンクの「FeBe」です。さすが。

あえて大晦日に書店で新刊発売、出版業界の若手が企画 ダイヤモンド・オンライン(2016年12月27日)

 これまでの常識を疑い、やってなかったことをやる、そういう前向きな活動は応援したい。売れたかな?

「わいせつ表現」規制と女性差別克服は関係ない? 憲法学者・志田陽子氏インタビュー messy(2016年12月27日)

 4ページ目にあるご意見 “いま必要なのは「フィクション」の規制ではなく、虐待や差別で苦しんでいる「現実」の児童を救うことでしょう ” に全力で首肯。

はちま起稿を買収したDMM、元管理人・清水氏ら主要メンバーを雇用しステマ関与か 取材に対し隠蔽工作も ねとらぼ(2016年12月28日)

 さらに延焼。昨年末にキュレーションサービスが問題になる前から、「はちま起稿」「ハムスター速報」「オレ的ゲーム速報JIN」「ニュー速VIPブログ」「痛いニュース」など、いわゆる「2chまとめサイト(過去形含む)」の素行の悪さは何度も問題になっていましたからね。ちなみにいま挙げたサイトはすべて、LINEが運営している「ライブドアブログ」が根城。つまり「NAVERまとめ」と根っこは同じなのです。なお、DMMが「はちま起稿」を持っていたのは2016年1月から10月までのことで、既に手放しています。素早い。

NAVERまとめとCGMが抱える問題 「プロバイダ責任制限法」は誰の味方か BuzzFeed Japan(2016年12月28日)

 「NAVERまとめ」を運営しているLINE株式会社に在籍していて、現在はBuzzDeedの鳴海淳義氏による、プロバイダ責任制限法の功罪について。そろそろ現行法の限界だという見解です。鳴海氏はLINE在籍中の2014年に自身のブログへ「業界目線のこむずかしい議論には、あまり興味がありません」という意見を書いていたのですが、その意見はいまでも変わっていないそうです(Twitterでのやり取りがもう消されてる……)。

「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について LINE Corporation(2016年12月28日)

 各所で火を噴いているさまざまな噂に対する反論、はともかくとして、「みなし非表示対応」を既に導入しているというのは驚きました。アメリカと同様の “Notice and take down”(侵害通告があったら、まずは落とす)です。この運営変更は、かなり大きな変化だと思います。過去のことはともかく、対応が早いことは評価したい。

IDPFとW3Cの統合で、出版とウェブの融合が形になるのは当分先/AAP加盟社の電子書籍売上縮小 ほか~2016年の電子出版トレンドを識者が討論 INTERNET Watch(21016年12月28日)

 JEPA「電子出版アワード2016」授賞式と大賞選考会の終了後に行われたパネル討論会のまとめ。自分の書いた記事ですがピックアップ。IDPFとW3Cの統合によって起こる電書とウェブの融合は急激に起こる変化ではなく、じっくり時間をかけて進んでいくのだろうと思われます。

定額制で生き物図鑑が読み放題、「図鑑.jp」1月スタート、定番の図鑑や絶版・品切れの図鑑を電子書籍化 INTERNET Watch(2016年12月28日)

 ジャンルを絞った読み放題サービス。そして出版社直営。この傾向はまだまだ続くと思います。

キングコング西野が語る、本が売れない理由 ベストタイムズ(2016年12月29日)

キングコング西野が絵本業界に起こした革命 ベストタイムズ(2016年12月30日)

キングコング西野が、窃盗事件のあとに考えたこと ベストタイムズ(2016年12月31日)

 業界の常識を疑い、自分で考え行動している姿勢は見習いたい。でも、知名度を活かすとここまでの規模のマーケティング戦略が行えるのか、と、うらやましくなってしまう事例でもあります。本の売り方や作り方をニュースにするといいのは、わかっていてもなかなか真似ができません。ぐぬぬ。

出版状況クロニクル104(2016年12月1日~12月31日) 出版・読書メモランダム(2017年1月1日)

 毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。年末のNHK NEWS WEBと同様、学参マーケットが伸び続けていることに触れています。学研やベネッセは、電書でも好調ですね。

発表! 2016年 電子書籍重大ニュース! 株式会社KADOKAWAのプレスリリース(2017年1月2日)

 映画『君の名は。』のヒットにより、関連の電書が16万5000ダウンロード突破という数字が出ていたのでピックアップしておきます。又吉直樹氏の『火花』が2015年11月時点で13万ダウンロード(紙版の6%)という発表がありましたが、こちらは紙がどれだけ売れてるのか、比率が気になりますね。

「ニーズ」に死を:トランプ・マケドニア・DeNAと2017年のメディアについて WIRED.jp(2017年1月3日)

  日本版編集長の若林恵氏による、新年早々辛辣な論考。“どんなゴミでも「マーケットのニーズ」に即していれば社会の善となる。とんだ錬金術があったものだ。” など、叩きつけるような言葉が並びます。ただ、あらゆるニーズを無視してプロダクトアウトだけ、というわけにもいかないから難しいところ。

なにもない壁が「本棚」に変身―並んだ表紙を選ぶと電子書籍が読める インターネットコム(2017年1月5日)

 ソニーの超短焦点4Kプロジェクター活用法。アメリカの「CES2017」に合わせて発表されたそうです。「なにもない壁」が存在するのは、大きい家だけだよなあ……。

加Rakuten Kobo社、ドイツの電子書籍プラットフォーム最大手「Tolino」を今月末に買収予定 hon.jp DayWatch(2017年1月5日)

 ドイツ「Tolino」が、Rakuten Koboの傘下に。書店とうまく連携することで、後発ながらアマゾン超えのシェアを持つ電子書店です。この買収によって、そのノウハウがRakuten Koboにも活かせるといいのですが。

アマゾン読み放題、配信ストップの出版社の一部で配信再開 光文社「新たに契約交わした」、講談社はまだ再開されず 産経ニュース(2016年1月6日)

 私が1月2日にブログで書いたことの後追い……というわけでもないとは思いますが、一部出版社が復活しているのは事実です。光文社は、新たに契約を結び直したんですね。

電子書籍フォーマットEPUB 3.1が“Recommended Specification”として承認される カレントアウェアネス・ポータル(2017年1月6日)

 無事に推奨仕様として承認。IDPFが規定する最後のバージョン、ということになるのでしょう。アクセシビリティの仕様も含まれたのが重要な点とのことです。

「日本会議の研究」販売差し止め 地裁が扶桑社に命令 朝日新聞デジタル(2017年1月6日)

 販売差し止めの仮処分。著者の菅野完氏によると、修正を求められた6カ所のうち、裁判で否定されたのは1カ所だけだったそうです。それで販売差し止めって、ずいぶん厳しいなという印象。まだ地裁判決ですが、どうするのかしら?

[追記]速攻で黒塗り版出してきた!

創刊6年10カ月、スピード達成 日経電子版有料会員50万人 日本経済新聞(2017年1月6日)

 おめでとうございます。月額税込4200円(電子版+宅配だと5509円で電子版部分は1000円)で50万人というのは立派。モノが1つ売れて終わりではなく、毎月継続してお金が入ってくる仕組みなので、コツコツ積み重ねた者勝ちなのですよね。

スクエニ発のマンガアプリ配信開始!期間限定で「魔法陣グルグル」全話配信も コミックナタリー(2017年1月7日)

 コミック誌を買わなくなったユーザーへの訴求を目的とした基本無料で読めるアプリですが、これも出版社による「直販」施策の1つと言っていいでしょう。


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