先週は「KADOKAWAが書店との直接取引をさらに増やしていく方針」「楽天マンガ売却」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年7月16日~22日分です。
40年間続いた「若者の活字離れ」。書店店長が今、思うこと〈PHPオンライン 衆知(2018年7月17日)〉
さわや書店フェザン統括店長 田口幹人氏による『もういちど、本屋へようこそ』(PHP研究所・8月4日発売予定)から一部抜粋・編集した事前紹介記事。「若者の活字離れ」と言われ始めたのは1977年ごろからで、そこから20年間は出版販売額が伸び続けていたという指摘や、古書店や図書館で読む人あるいは画面に表示される文字を読む人はむしろ増えているという指摘、「活字離れ」より「本屋離れ」と表現したほうがいいといった指摘を、書店側の立場から発信しています。
キンドルの読み放題サービスとヨメヨメ詐欺の攻防は続く〈hon.jp DayWatch(2018年7月17日)〉
読み放題サービス「Kindle Unlimited」の「読まれた」判定をハックする技が編み出されては対策され、というイタチごっこが続いています。実際、どうやって「読まれた」と判定するかを思考実験してみると、自動ページめくり機を使われた場合など、運営側にはどうやっても回避不能なハックが存在することに気づきます。中国で「App Store」や「Google Play」のランキング操作をするための「クリック農場」が稼働しているという話がありますが、似たようなことは当然アマゾンでも可能なわけです。レビューを不正操作する業者の噂もあります。オンラインでサービスを提供するというのは、こういった不正と戦い続けることでもあるのでしょう。
<東証>メディアドゥが急反発 中期経営計画を好感〈日本経済新聞(2018年7月18日)〉
週末に発表された第1四半期報告書で、今期の営業利益が横ばいなのを受けて株価が14%近く下落していたのが、週明け発表された中期経営計画を受けて急反発。マンガは海賊版の影響で伸びが抑制されていただけだからまだ伸びる余地がある、文字モノは端末でテキストを読むのに慣れた世代が増えることにより拡大する、といった見通しを示しています。実際、第1四半期決算説明資料を見ると、4月中旬の海賊版サイト閉鎖を受け、昨年11月ごろから昨対比110%程度になっていた伸び率が、4月・5月には120%、6月には140%まで回復しているようです。正規版電子書店へのホワイトマーク付与にも言及されています。また、コンテンツ入稿・配信システムの統合や、ブロックチェーン技術研究も行う計画のようです。IR資料はこちら。
イギリスでピークを過ぎた?Eブックに代わりハードカバーが再浮上か〈hon.jp DayWatch(2018年7月20日)〉
イギリスで、ハードカバーの売り上げが伸びているそうです。Eブックの市場占有率が一時40%までいっていたのが、29%まで減らしているというのも驚き。「Author Earnings」がずっと主張しているように、市場統計に出てこないセルフ・パブリッシングなどが伸びているのでしょうか?
SF出版レーベルTorがEブック新刊を図書館に出すのを4ヶ月延期へ〈hon.jp DayWatch(2018年7月21日)〉
刊行と同時に電子図書館へ配信することが、販売数に影響しているのではという疑念からの実験的措置。Rakuten OverDriveなど電子図書館サービス提供者側は、「Buy it Now」の実績を公開するなど、販売数増への貢献度を対外的にアピールしていく必要があるように思います。
KADOKAWA、書店と直接取引3倍に 「取次」介さず翌日配送も〈日本経済新聞(2018年7月22日)〉
KADOKAWAは2015年ごろからアマゾンや紀伊國屋書店などとの直接取引を開始していますが、すでに1000店を超えているというのが驚き。また、今後3300店に増やす計画とのこと。所沢の流通拠点が本格稼働するのに合わせて、ということでしょうか。「自社印刷」とあるので、PODのショートランを活用し倉庫の必要性を圧縮していく、という方向性なのだと思われます。金融機能はそのまま取次が担う、というのがポイント。取次は今後、物流機能を減らし、代金回収の手数料だけ取得する形になっていくのでしょう。
マンガ家育成支援事業「トキワ荘プロジェクト」のNPO法人NEWVERYが人材紹介事業と受託業務事業を新たに開始〈hon.jp DayWatch(2018年7月17日)〉
「トキワ荘プロジェクト」のNPO法人NEWVERYによる新たな試みです。「プロのマンガ家になる」以外の道の提示と、マンガを描く技術を活かした業務委託の仲介。まだクローズドβの段階ですが、大きな可能性を感じました。
楽天、MTI系のメディアーノに『楽天マンガ』と『コミック★まんが学園』を売却〈Social Game Info(2018年7月22日)〉
立ち上げ当時、なぜ「楽天Kobo」があるのにわざわざ別途コミック専用サービスを立ち上げる必要があるのか? と、多くの人が疑問に思ったのではないでしょうか。私も当時、理由を考察して「兵は拙速を尊ぶ」「少々まずい作戦であっても、勝てばいい」「勝てれば、ね」というコメントを残しています。結局、2年少々で他社へ手放すことに。もっとも、対価として4130万円を受け取ることになっているので、経営的には少なくとも「負けなかった」とは言えるのかも?
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