漫画家・佐藤秀峰さんに、私が書いた「Kindle Unlimited」の記事について「かなりの嘘と憶測が含まれています」となぜ言われたのか、その意味が一部理解できたので謝罪および修正と再反論をします(※末尾に重要な追記あり)。
私の最初の反論はこちら。
それに対する佐藤さんの反論はこちら。
ご指摘通り、KDPコミック以外でもカテゴリー絞り込みから辿りつけないケースがあるようです。そもそも私の最初の記事でも「KDPだけに発生している問題」だと断定したわけではありません。しかし、他の多くの問題と一緒に並べているので、「ミスリードを誘っている」と言われても仕方がないかもしれません。
なぜ佐藤さんが「嘘」だと思ったのか?
そんなことより、なぜ佐藤さんが「嘘」だと思ったのかについて、上記の佐藤さんの反論を読んでやっと想像ができました。私に過失があったのです。
それは、半年前に佐藤さんから、Kindleストアでカテゴリーエラー問題が起きていることをFacebookで教えていただいてたにも関わらずすっかり忘れていたこと。また、佐藤さんが最初に「かなりの嘘と憶測が含まれています」と指摘したFacebookの投稿に、後からコメント欄で半年前のことを追記していたのに気づかず反論記事を書いたことです。
私が忘れていたことや気づいていなかったことなど、佐藤さんが知る術はありません。だから最初の私の記事を読んだときに「嘘」だと思うのは無理がないと思いますし、明らかに私の過失なので謝罪いたします。申し訳ありません。元記事にも追記を入れておきました。いま思えば、「少年コミック」に2社しかない時点で、KDPコミックだけでなく出版社作品もおかしな状態になっていると、気づかないといけなかった、と反省しています。
ただ、KDPもカテゴリーは任意に選べない
ただ、佐藤さんもKDPを経験していないためか、一部誤解があるようなので指摘させていただきます。KDPもカテゴリーは任意で選べないため、「出版社よりむしろ優遇されている」ということはありません。
KDPのカテゴリー選択画面は、下図のような状態です。
これは、カテゴリー選択の「青少年向けフィクション」→「漫画、劇画」を開いた状態です。「少年コミック」「青年コミック」「少女コミック」「女性コミック」といった、読者におなじみのカテゴリーは存在しません。
Amazonはもともとアメリカの会社なので、カテゴリー分類に「BISAC」というデータを利用しています。 Amazon.co.jp のユーザー向け画面はこの「BISAC」と異なるカテゴリー分類になっており、KDPで指定したカテゴリーが Amazon.co.jp でどういうカテゴリーになるか、出版後じゃないとわからないというステキな仕様になっているのです。
このカテゴリー決めに、佐藤さんが想像するような「人」の介入があるかどうかは、私にはわかりません。私はむしろ、KDPで指定したカテゴリーを Amazon.co.jp 向けのカテゴリーに自動変換するテーブルかなにかに、深刻なバグがあるのではないかと思っています。
そもそも私が、最初からこのカテゴリーの件は「優遇措置ではなく単なるバグという可能性が高いかも」と態度を留保しているのは、それが理由です。半年前に佐藤さんが教えてくれたことを覚えていれば、もう少し違った書き方をしていたかもしれません。
また、佐藤さんが疑っている「ごく一部の大手出版社作品だけが厚遇されている」については、もっと詳しく調べてみないとハッキリしたことは言えませんが、一般的な企業で大手顧客を優先して修正対応するのは普通の業務フローとしてあり得ると思います。
KDPと出版社の格差問題として大きいのはカテゴリーやランキングではない
さて、再反論です。最初の記事に話を戻します。私は「出版社優遇」として思いつくままに問題点を順に並べてしまったのですが、なかでも大きな格差だと考えているのは以下の3点です。
- 出版社系の作品は10%で「読まれた」と判定される
(追記:これはすべての出版社が同じ条件を提示されたわけではなかったようです。お詫びして訂正いたします)
(KDPは純粋に読まれたページ数に比例)
- KDPが読み放題に登録するには独占配信が必須
(出版社系にそんな制限はない)
- KDP独占配信で構わないけど読み放題は嫌だ、という選択肢がない
(KDPセレクトを外すしかないので、ロイヤリティオプションは70%から35%と半減する)
佐藤さんは「鷹野さんの記事には、他にも多くの間違いがあり、すべて指摘して差し上げたいところですが、契約内容に触れてしまう可能性があるので、ここで書くことはしません」とおっしゃっています。私には他にどんな間違いがあるかわからないのですが、この3点についてはどうでしょうか?
1番目については、最初の記事で「出版社向けにのみ説明」と断定しているとおり、私はエビデンスを持っています。公開できないのが残念ですが、私以外にも同じことを言っている方がいます。
説明不足があるのできちんと説明。扱いはKDPとそれ以外の書籍では異なります。一般書籍は全ページ読まなくても1割読めば「読まれた」とカウントされて、収益が発生。KDPの本は読まれたページ数からカウントするので、読まれるほど収益が上がる https://t.co/nSyMHiHz8L
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2016年8月3日
2番目については、KDP系を除く「Kindle Unlimited」の対象になっている作品の多くが、他ストアでも販売されていることから、事実と断定できます。
3番目についは、公式ヘルプに記載されていることですから、これも事実と断定できます。
いかがでしょうか? 私からは以上です。
8月10日追記
佐藤秀峰さんから再反論をいただきました。
- 10%条件のエビデンスを出しても、本物かどうかを証明するためには入手元を明かす必要があり、それは信義則に基づきできません
- KDP独占配信が使えなくても、電書バトを使えばいい、というのはひとつの意見として受け止めさせていただきます
- そもそも独占配信70%が出版社より優遇されているというご意見に反論はありません(35%ロイヤリティが養分であることに変わりはないため)
また、すべての出版社が同じ条件とは限らない、という指摘は確かにその通りなので、過去記事の記述を一部修正させていただきました。