毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「週刊少年サンデーやっと電子化」「Kindle Unlimitedに集英社は参加せず」などが話題になっていました。
メディアドゥ、1Qは売上高33%増、営業益57%増と大幅な増収増益を達成…大型電子書店へのディストリビューション堅調で電子書籍事業の売上が拡大 | Social Game Info ※2016年7月8日
1週前の記事ですが見落としていたので改めてピックアップ。大幅増収増益です。「楽天マンガ」へのコンテンツ提供開始がどの程度寄与しているのでしょうか? なお、売上原価率が9割近いので、メディアドゥ電子書籍事業の「売上」は電子書店からの入金総額だと推測されます。恐らく10%程度手数料をとった上で、出版社にバック(ここが原価)。
電子雑誌元年がやってきた(後編)–「紙雑誌は死んだ」から「だから何?」の時代へ – CNET Japan ※2016年7月11日
林智彦さんによる電子雑誌などを取り巻く状況分析。“「これは『出版』じゃない」「あれは『出版』だ」といったたぐいの、古い業界のコップ(上図の黄色の部分)の中だけを見た神学論争はまったく無意味” とあり、リンク先を開いてみて盛大に吹きました。いいぞもっとやりあえ。
週刊少年サンデー:電子書籍対応で紙と同時発売 ついに大手マンガ3誌そろい踏み – MANTANWEB(まんたんウェブ) ※2016年7月13日
やっと、という感じ。講談社「週刊少年マガジン」と集英社「週刊少年ジャンプ」からずいぶん遅れましたが、これでようやく3誌そろい踏みです。体制の問題と、リアル書店への配慮という要素もあったのかな。もうそんなこと言ってる場合じゃない、ということなのだと思います。
【やじうまWatch】歴史的なあの事件がここに、週刊文春の歴代スクープ43本を一挙収録した電子書籍が登場 – INTERNET Watch ※2016年7月13日
「もともとはAmazon向けに紙の書籍として制作されたもの」を電子書籍として販売。なんのこっちゃと思ったら、ちょうど1年前にAmazon創業20周年記念として、Amazon PODで発行されていたのですね。
Amazon創業20周年記念 週刊文春オリジナルコレクション
posted with AZlink at 2016.7.18
週刊文春編集部
文藝春秋
売り上げランキング: 194669
で、頭の「Amazon創業20周年記念」がとれて、電子版として改めて販売、と。1年間独占の縛りでもあったのかな?
posted with AZlink at 2016.7.18
週刊文春編集部・編
文藝春秋
売り上げランキング: 8233
津田大介「黒船キンドル、新サービスの行方」 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版 ※2016年7月13日
津田大介氏による、読み放題サービス「Kindle Unlimited」の分析。先行している音楽の聴き放題サービスでは、利用料配分が少ないという苦情はあるものの「ライブ」へ誘引できるメリットがあるけど、出版には音楽のライブに相当するものがない、という指摘です。私は、「トークショー」がライブに相当すると思っているのですが、書くのとしゃべるのじゃ大違いってのはありますよね。
同人誌をストリーミング配信、「とらのあな電子書籍」7月20日に正式オープン、700サークルが参加 -INTERNET Watch ※2016年7月13日
同人誌の電子書籍配信。とらのあな自身過去何度もやっていた(そして何度も潰した)し、メロンブックスなど他社も既にやっていることなので目新しさはありません。また、現時点で公開されているラインアップに二次創作がやたらと多いのも、気にはなりますがひとまず判断保留。問題は、利用規約に「電子書籍毎に閲覧期限が設定されています」とか「ユーザーへの閲覧停止の予告をせずに、当該電子書籍の閲覧をただちに停止」と明記されている点。ストリーミング配信だからというのもありますけど、ほぼほぼレンタルと変わりないじゃないかという感じ。この条件で、ユーザーがついていくのかしら?
読書メーター×ダ・ヴィンチ レビュアー大賞開催|株式会社KADOKAWAのプレスリリース ※2016年7月13日
記事が見当たらない……というわけでプレスリリースをピックアップ。ドワンゴが読書メーターを買収し、ダ・ヴィンチとのコラボを推進していくことも発表されていましたが、その一環です。この規模でのコラボは初とのこと。
孤軍奮闘の作家をサポートするオーサーライト « マガジン航[kɔː] ※2016年7月14日
小林恭子さんによる、英国「オーサーライト」の取材報告。編集から宣伝までの一括したサービスを著者に提供しているそうです。「印刷と配送の実費を差し引いた純収益の25%をオーサーライトが取り、残りの75%が著者の収入になる」とあり、すごいなそれでやっていけるのか! と思ったら、少しあとに「オーサーライトの主な収入源は、編集、表紙デザイン、出版、マーケティング、宣伝活動などの作業それぞれについて著者が支払う金額だ」と。なるほど、著者が大きくリスクを取るモデルなのですね。うーむ。
「honto」の電子書籍アプリ、Mac版も提供開始、「秀英体」フォント搭載 -INTERNET Watch ※2016年7月14日
やっと大きなディスアドバンテージが埋まった感。しかし、サイトリニューアル、店舗受取と、ここしばらく大きな動きが相次いでますね。あと3年早ければ……と思わざるをえない。
電子書籍業界で現在一番ホットな人物Data Guy氏、米出版団体AAPの統計データの精度について注意喚起 – hon.jp DayWatch ※2016年7月14日
「Author Earnings」のデータ分析担当者が、AAPの統計データは「売上シェア的にもカバー率が40%に満たない」と言っているそうです。その真偽はともかくとして、日本の統計データも注意が必要なのは間違いありません。出版科学研究所『出版月報』の統計は取次ルート(弘済会・即売卸売業者を含む)を経由した出版物だけが対象で、直販ルートは含まないと明言されているのです。「書籍の7割、雑誌の9割を占めている」と注記がありますが、その根拠は1995年のアンケート。Amazon上陸前の話なのです。
アマゾンの定額読み放題、講談社・小学館が参加 月額980円 :日本経済新聞 ※2016年7月15日
読み放題サービス「Kindle Unlimited」に、講談社と小学館は参加確定。KADOKAWAも検討中。参加しない組として名前が挙がっているのは集英社のみ。競合サービスはどうなんだろう? と思って調べてみたら、現時点で最も読み放題ラインアップが多い「ブックパス(4万点!)」にも、集英社作品はありませんでした。なるほど。ちなみにブックパスの読み放題は、コミックが「少年」988件、「少女」1848件、「青年」2239件、「女性」1137件。小説は「文芸」が914件、「SF」が184件、「ミステリー」が543件、「ライトノベル/ティーンズノベル」が413件という感じ(この数字はシリーズ数のはず)。
セミナー「小説投稿サイトの現在」:“出版不況の中でも売れる本”を生み出す「ウェブ小説」の仕組みとは? (1/3) – ITmedia ビジネスオンライン ※2016年7月15日
私も取材に行ってたセミナー。まずい、早く原稿書かねば(汗)。
発売から一定期間後の80雑誌を割引販売 日販、講談社などと :日本経済新聞 ※2016年7月15日
キャンペーン名称は「雑誌夏トクキャンペーン」。8月1日から9月30日までの期間限定で、時限再販指定された80誌・136点が対象。本格導入前のテストを兼ねているんでしょうか。しかし、“NTTドコモの「dマガジン」など電子雑誌の定額制サービスの台頭も、書店の雑誌販売減の一因となっている”と断定されているというのが何とも言えない感じ。日販関係者からそういう話が出た、ということなんでしょうかね? そういえば少し前に「この1年でコンビニで雑誌が売れなくなった」なんて話もありました。
書店「存亡の危機」、また本屋が消えていく | 週刊東洋経済(ビジネス) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 ※2016年7月16日
「全国の書店は2015年で約1万3400店。2000年に比べ約8000店も減った(アルメディア調べ)」とありますが、店数減と同時に床面積の増加傾向が起きていた(つまり中小書店が潰れ大型化が進んでいった)ことにも触れて欲しいところです。また、リブロ池袋本店の跡地には、三省堂書店池袋本店が入っているなど、大型書店が閉鎖しても別の書店が入るケースも多いので、単に事例を挙げるだけだと本当の動きが分からなくなってしまうように思います。2ページ目に “「今は出版不況と言う人がいるが、雑誌不況と言ったほうが的を射ている」と、ある書店幹部は打ち明ける” と、書店の声が挙げられているのはいいですね。現実を直視する意味で。
「Weekly 見て歩く者 by 鷹野凌」というGoogleグループを作りました。登録すると、毎週この「出版業界関連の気になるニュースまとめ」がメールで届くようになります。ときどき号外を配信するかも? ブログの更新チェックが面倒な方はぜひ登録してください。無料です。