毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「違法ダウンロード適用拡大?」「図書館総合展開催」「電子出版権侵害で初逮捕」などが話題になっていました。
TPPで“違法ダウンロード”適用拡大も、文化庁の審議会で再び検討か -INTERNET Watch ※2015年11月11日
正確には「TPPで」ではなく、TPPと並行で行われていた日米間の交渉内容。戦時加算解消同様「法的拘束力はない」ものです。朝Pこと丹治吉順さんの解説を貼っておきます。
「ダウンロード違法化の施行後、(音楽と映像以外の)他の形態のコンテンツについても適用拡大を求める意見もあり…」。これ地雷ですよ。以前、DL違法化が初めて検討された際も当初は全コンテンツが対象だった、しかし(続く)> https://t.co/PT16riiNHR
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
(続き)けれど全コンテンツを対象にすると、例えば文章を無断転載したHP(2chまとめサイトなど典型。ブログにも多い)を、ユーザーが「印刷」しただけで違法ダウンロードになる。当初、文化庁はそれに気づかず審議を進めていたが、(続く) https://t.co/PT16riiNHR
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
(続き)ある日の審議後、当時の著作権課長に立ち話で「今の方向の審議だと、無断転載HPを印刷しても違法になりますよね?」と尋ねた。課長は最初全く意味がわからない様子で、重ねて説明すると、やっと通じて顔色が変わった(続く) https://t.co/PT16riiNHR
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
(続き)数週間後に著作権課長に再会した際、「違法ダウンロードの件はどうなりました?」と尋ねたら、「あ、音楽と映像に限定することにしました」と涼しい顔で言ってのけた。当初対象に入っていた、文章や絵、写真は、こうして除外された。(続く) https://t.co/PT16riiNHR
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
(続き)このように、文章や絵、写真を違法ダウンロードの対象にするのは、「印刷」というきわめてカジュアルな行為が著作権侵害になる怖さを秘めている。普通「違法DL」といえばPCへのファイル保存を想像するが、印刷も立派な複製だ。(続く) https://t.co/PT16riiNHR
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
(続き)ここで審議される違法ダウンロード範囲拡大で、印刷困難なのはコンピュータープログラムくらいで、文章や絵、写真は従来通り。違法DLを巡るコンテンツ間の不平等は、この「印刷の壁」を越えないと解消不能なはず。どうするんだろう(終) https://t.co/PT16ri1cQj
— 丹治吉順 aka 朝P (@tanji_y) 2015, 11月 11
ついでに私の懸念点も。
記事の最後で触れられてる「電子書籍」を違法ダウンロードの対象にするの、かなり無理筋だよなあ……PDFやHTMLだって「電子書籍」なんだから。技術的保護手段回避の不正競争防止法違反で充分ではなかろうか。
https://t.co/faYQv57boB
— 鷹野 凌@月刊群雛編集長 (@ryou_takano) 2015, 11月 12
活字離れの若者へ、縦スクロールのトークアプリ風読み物フォーマット「ストリエ」で大手出版社がラノベ配信 -INTERNET Watch ※2015年11月11日
リリースに書いてある “電子書籍市場でマンガがけん引していることからも、活字離れしている若者にも訴求できると考えています。” という言い回しには若干疑問を感じるのですが、リッチコンテンツ化路線は「従来の読者」じゃない層を引き込むには良い策だと思うのです。本読みは少数派ですから。
古くから電子書籍に関わってきた人たちは「それは俺たちがかつて通った道だ」と懐疑的なようですが、消費者側が変われば同じようなモノでも受け入れられ方が全く異なる場合があるので、なんとも言えないなーというのがボクの正直な感想。LINEに慣れてると、こういう吹き出し型&横書きで縦スクロールには違和感ないでしょうからね。
【新文化】 – 新潮社・佐藤隆信社長、新刊の貸出猶予は「節度、程度問題」 ※2015年11月11日
「著者からの声が強く、放置できないほどになっている」という記述があります。先に他の報道を見てこういう↓予想をしたのですが、当たりだったようですね。どの作家の声が大きいのか、いずれ明らかになるでしょう。
「一部の『声の大きい作家の』新刊のみ」ということなのかな? と思った。
Posted by 鷹野 凌 on 2015年11月10日
英Nielsen Books「紙書籍よりも2~3ドル以上安いと、50%の読者は電子書籍に流れる」 ※2015年11月12日
原文読んだら、英ニールセンですが “state-of-the-US-market” とあるので米国市場の分析です。2014年1Qから2015年1Qの市場シェアは、セルフパブリッシングが14%から18%、ビッグ5が28%から37%、残りの中小出版社が58%から45%とのこと。ビッグ5の電子書籍価格引き上げは、消費者を紙に引き戻すための施策だった、ということのようです。
萌え中心の無料コミックアプリ「みんコミ」、電子書籍ストア老舗のeBookJapanから -INTERNET Watch ※2015年11月12日
「同誌の編集部が発掘したフレッシュな作家を中心に25作品をラインナップ」なので、comicoのように100%インディーズから引っ張り上げる形ではなく、初期のマンガボックスに近い形態のようです。いずれ、インディーズもやるんじゃないかな?
障害者差別解消法施行に向け、電子図書館の本格的な普及が始まるか? -INTERNET Watch ※2015年11月12日
自分のフォトレポートですが、図書館総合展関連のメディア記事って意外と少ないのでピックアップ。プレスルームが用意されてないし、同時開催のフォーラムが多すぎて参加しきれないのですよね。
TSUTAYA図書館は何を目指すのか? CCCの責任者が語る現状と「未来」 ※2015年11月12日
CCCの責任者が、このタイミングでよく登壇OKしてくれたな、というのが素直に驚き。火に油を注ぐようなものですからね。東洋大学南教授の「武雄市図書館への情報公開請求は意図的なものを感じる」という発言には、強い疑問を覚えます。“リニューアルオープンから1年半後になってようやく「契約内容はCCCの営業ノウハウに当たり、開示することでCCCに不利益を被るため開示しない」” と決定した方が、よっぽど意図的だと思うのですが。結局、更なる異議申し立てで開示され、実際に問題が見つかっている状況を踏まえると、おかしなこと言ってるのはどっちだよ、という話に。
縦書きのウェブデザインを競うコンテスト「縦書きWebデザインアワード」開催 -INTERNET Watch ※2015年11月12日
主要なブラウザ最新版でようやく普通に縦書き表示できるようになったことを受けてのコンテスト。「縦書きWeb普及委員会」のページに技術仕様解説が載っており、意外と簡単そうだったので試してみました。この文のように、divで指定した部分だけ縦書きというのも可能になってます。ただ、ChromeやSafari(つまりBlinkとWebkit)であれば意図したような表示(この文章は十一文字で改行し、左端までいったら段が変わるはずです)ができるのですが、IEやFirefoxだと左右カラムを突き抜けてしまったり、前後が切れたりと、表示がおかしくなってしまうようです。たぶんボクのやり方がまずいのだと思うのですが、IEやFirefoxでもちゃんと表示する方法あるのかな?
ChromeやSafariでもここ↑に大きくスペースが空いてしまうのが謎。
米Google、Android版の電子書籍ビューワアプリ「Google Play Books」で電子コミックの縦スクロールに対応 ※2015年11月13日
面白い動き。いまのところ英語圏のコミック作品のみ対応しているようですが。Appleの「iBooks」には当初から搭載されているスクロールモードですが、他のビューワに波及していくかも? Amazonは対応しないかな……。
OverDriveが図書館に提案する、電子図書館成功への5つのポイント -INTERNET Watch ※2015年11月13日
自分のレポートですが、図書館総合展関連の(略)。ずっと関連情報を追いかけている立場からするとさほど目新しい情報はなかった(ALA会長サリー・フェルドマン氏のビデオレターは興味深かった)のですが、ニュースが出ないと忘れられちゃいますからね。
「ワンピース」発売前に不正公開…3中国人逮捕 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) ※2015年11月13日
2015年1月から施行された改正著作権法の「電子出版権」侵害での逮捕は初とのこと。この事例は “配送会社社員が、印刷工場から書店への発送過程で雑誌を抜き取って仲間の中国人に渡していた” ようですが、もっと早い段階でデータを抜かれている可能性を指摘する声もあるので、数あるルートの1つなのかもしれません。
(cache) JPO日本出版インフラセンター【HOME】 ※2015年11月16日 09:25の魚拓
JPOは緊デジに関する会計検査院の改善処置要求を受け、10月5日の記者会見で「出版社に配信状況を問い合わせ、今月中に調査結果を公表する」と言っていたはずなのですが、とりあえず半月たった今でもウェブサイト上には何も公表されていないことを魚拓として残しおきました。