毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「廣済堂BookGateサービス終了」「出版デジタル機構がPOD取次事業へ参入」などが話題になっていました。
電子書店アプリ「BookGateシリーズ」、および電子書籍アプリ、サービス終了のお知らせ|プレスリリース|廣済堂 ※2015年4月20日
4月20日にリリースが出ていたのですが、まったく気づいてませんでした。この週末になって急に話題になっていたのでピックアップ。8月31日に全サービス終了。引き継ぎも、ポイント還元などによる救済もなし。いちおうダウンロード済みファイルは読み続けられるけど、ファイルの移動やコピーはできないし、OSをアップデートしたら終了(恐らく動作保証できないという意味だと思われます)。
「ヤマダイーブック」の閉鎖時(炎上したリリース当初)と比較をすると、ヤマダは新サービスを始めるのに既存ユーザーを救済しないという点が論外でした。廣済堂はきれいさっぱりやめるようで、ほとんど話題にならなかったBIGLOBE「TOP BOOKS」の終了時とある意味似ているかも。
ただ、Twitterを検索すると、時刻表復刻版を買ってた人が結構いるようで、怨嗟の声があがっています。スクリーンショ(ry
【新文化】 – 大阪屋、帳合書店に楽天のポイントサービス導入 ※2015年5月15日
1週前のニュースですが見落としていたのでピックアップ。楽天が大阪屋の筆頭株主になったことで、こういうコラボが可能になりました。リアル書店とのコラボは、Amazonには真似できない領域ですね。
ASCII.jp:じつはKoboとKindleは拮抗していた!? 電子書籍ストアシェア (1/2)|高橋暁子の「意外と知らない!? 業界ランキング」 ※2015年5月18日
ツッコミを入れざるを得ない。昨年10月のICT総研レポートを元にした記事です。当時、利用率で楽天Koboが1位、Kindleストアが2位ということで、直感的に「それおかしいでしょ」という声が主に業界関係者から挙がっていたのを覚えています。私はすぐに問い合わせをして「1年以内に1回しか利用していないユーザーも含まれる」という回答を得ました。要するに、ユーザー数は拮抗してるかもしれないけど、売上シェアは利用頻度や回数によって異なるでしょ? という話です。
本の書かれ方・読まれ方・ 作られ方が変わり、 やがて社会が電子書籍に追いついてくる ~ボイジャー 社長 鎌田純子氏 – 電通報 ※2015年5月18日
ボイジャー鎌田社長インタビュー。”DRMは「Digital Rights Management」ですが、電子書籍側から見ると「Don’t Read Me」って感じ” という表現が秀逸で笑ってしまいました。
Overdrive、Apple Watch向けアプリを開発中 – ITmedia eBook USER ※2015年5月18日
腕時計で本を読むのはさすがに「ない」と思うので、文中にあるように予約中の順番が回ってきたら通知、程度の使い道くらいしか思いつきません。うーん、他に何があるだろう?
日本は電子書籍の「後進国」なのか?–米国との差を「刊行点数」から推定 – CNET Japan ※2015年5月19日
安心と信頼の林智彦さん、なのですが1点だけツッコミ。2ページ目最後の方にある “仮に、まったく仮の話ですが、そのうちの5万点が自己出版物と考えて、27万点が伝統的な意味の「本」だとしても、米国の54万点の約半分の規模になります。” という仮定ですが、伝統的な意味での「本」はもう少し少ないと思います。
日本のKindleストアは、キーワードなしで検索したとき左カラムに「出版社」が表示されます。「> 続きを見る」を開くと、出版社の一覧とそれぞれの配信数が表示されます。4月11日の調査時点で、356社、18万1112点でした。
ここにはKDP作品や「AllAbout編集部」「ゴマブックス」が含まれていません(つまりAmazonが「出版社」とみなしていない)。ただし、カドカワ・ミニッツブック(ブックウォーカー)やImpress QuickBooksは含まれています。つまり、若干ボーンデジタル作品も含まれています。
伝統的な意味での「本」の出版社が抜けている可能性もあるので、ほんとの正確なところは分かりません。ただ、18万点を伝統的な意味での「本」の上限だと考えると、他の電子書店と比べたときにあまり齟齬がない数字になるのです。
ただ、たまたま別件で出た出版デジタル機構のリリースによると、27万タイトルを取り扱っているらしいんですよね。林さんの仮定とぴったり同じ。うーん。
出版デジタル機構、PODデータ取次事業に参入 – ITmedia eBook USER ※2015年5月20日
配信対象はアマゾンと三省堂。出版デジタル機構に出資してる大日本印刷「ウェブの書斎」はなぜ入っていないんだろう? ちなみにインプレスR&Dが先日リリースしていた出版社向けプリントオンデマンドのサービスは、これとは無関係とのことです。
『美術手帖』の美術出版社、事業再生に向けCCCグループ企業をスポンサーに – ITmedia eBook USER ※2015年5月20日
民事再生法適用申請していた美術出版社が、CCCグループを支援者に。CCCは1年前に、阪急コミュニケーションズから出版部門を事業譲渡されています(現:CCCメディアハウス)。積極的。
国立国会図書館が連絡先不明の著作権者約5万人を「公開調査」 – ITmedia eBook USER ※2015年5月20日
「(文化庁長官の)裁定期間が終了」という記述に一瞬「あれ?」と思ったのですが、文化庁裁定制度は、期間を限定して申請することもできるんですね。利用回数や期間に応じて補償金を供託する必要があるので、著作権者が見つからない限りどんどんお金が積み立てられていくという。なお、この調査で著作権者が見つからなかったとしても、再度裁定を受ければ継続して公開できるはずです。
今年の教育ITソリューションEXPO、キーワードは「アクティブ・ラーニング」 – ITmedia eBook USER ※2015年5月21日
西尾編集長によるEDIXまとめ。キーワードというか、バズワード化していたような気が。後述の、マガジン航へ寄稿した記事にも書きましたが、「どこかで見たような既存の仕組みを、アクティブ・ラーニングという言葉で飾っている感」がありました。
アイティメディアの2015年3月期決算に見る、IT系オンラインメディアの状況 - Publickey ※2015年5月22日
アイティメディアは上場企業なので、さまざまな情報を公開しています。面白い分析。「ねとらぼ」が月間5000万PV突破してなお赤字というのは驚いた。
東京大学附属図書館と京セラコミュニケーションシステム、「次世代ハイブリッド図書館」の実証実験を開始 | カレントアウェアネス・ポータル ※2015年5月18日
本から本へ直接つながる「読書空間」への一歩 « マガジン航[kɔː] ※2015年5月23日
2本目は、自分の記事です。教育ITソリューションEXPOに出展されていたので、見てきました。記事にも書きましたが、本の中から別の本へ直接リンクが張られるのは、現時点の「電子書籍」では画期的なことなんですよね。ウェブなら当たり前の話なのに。