少し前に、購入者側の視点でレビューをした「パブー」を利用して、電子書籍を自分で制作・販売してみました。実際やってみて判ったことがいろいろあるので、制作者側の視点でレビューします。
なお、月額525円(税込)の「プロ版」というのもありますが、ボクは無料プランのまま利用しました。よって、このレビューも無料プランの内容に基づきます。また、詳しいことはマニュアルを御覧ください。
実際の制作工程は、ほとんどブログを書くのと同じです。全体を[執筆中]というステータスにしておいて、書き終わったページを[試し読み]設定でどんどん公開していくようなやり方も可能なので、ブログ替わりに使ってもいいかもしれません。最終生成物を「パブー」のWeb上だけで無料公開するなら、ブログそのものと言っていいでしょう。
最終的に、全体を1つのパッケージとしてPDFとePUBに変換できるのと、それを販売できるというのが、ただのブログとの違いです。章やページの並び順も、上図のような[ページの管理]画面で自由に変更できるので、全体の構成を考えずに書き進めてしまっても、わりとなんとかなってしまうかもしれません。
ボクはいちおう事前にしっかり構成を組み立てていたのですが、書き進めているうちに説明不足に気づいて何度もページ差し込みを行いました。その際面倒だったのは、ページタイトルに自分で書き入れていた番号を修正しなければならなかったという点です。番号くらい自動で入れてくれればいいのに、と何度思ったことか。
最後まで苦しめられたのは、PDFプレビューが全くあてにならない点です。特に図版が入ると、改ページ位置が大きずれます。プレビューはあくまで「目安」なので、[PDF・ePUB更新]で生成物を都度確認しないといけないのが、結構大変でした。
ちなみにePUBは、読者側がリーダーで文字の大きさを変えられるので、どうしても「制作者側が意図した改ページ位置」で読ませたいなら、画像にしてアップロードするしかありません。その場合、レイアウトは完全に自分の思った通りになりますが、読者が文書内を単語検索できなくなります。
また、これは佐々木俊尚さんの「『当事者』の時代」を読んで気がついたことなのですが、普通にページをめくっていくと、章のタイトルはどこにも表示されません。下図はiBooksでePUBの目次を開いた状態です。章のタイトルは、ここでしか見られないのです。PDFの場合は、どこにも記載されません。
だからボクは「『当事者』の時代」を読んでいて、何度もどこで一息ついていいかわからない、今どんなテーマの内容を読んでいるのかわからない、いう状態に陥りました。正直、内容が頭に入りづらく、読むのが苦痛でした。
そこでボクの本には、章の頭にトビラを付けました。[ページのタイトル]に、章のタイトルを付記してもよかったかもしれません。普通の本なら、ヘッダーかフッターに章のタイトルが記載されていますが、現状の「パブー」はそういう仕組みになっていないので、制作者側で配慮してあげる必要があります。
あと制作中に気になったのは、サーバーが結構重いという点です。画像を貼り付けようとすると待たされる、[変更を保存]すると待たされる、[ページの管理]へ戻ると待たされる、[PDF・ePUBの更新]をすると待たされる……何度も頭をかきむしりました。
最後に、完成後について。Google+のガイドブックということもあって、Google+でお知らせした時の反響はかなり大きかったです。おかげで何冊か売れて、「パブー」のピックアップに掲載されました。それによって1週間ほど「パブー」のトップページに露出していたわけですが、[試し読み]を設定している第2章までのページビューは、現時点で4,864PVです。トップページに1週間載ってもこのくらいです。ちなみにピックアップに載っている1週間では、1冊も売れていません。
もちろんPVも売れ行きも本の内容次第ですが、このブログで全く同じ内容を同じ期間公開していて、第2章までの合計で2,000PVくらいあるので、トップページに載っていてもボクのブログの2.5倍程度ということです。つまり、現状では「パブー」の媒体力にはあまり期待しないほうがいいと思います。
「パブー」の販売手数料は売価の30%です。媒体力に期待できるなら30%でも構わないと思います。しかし、ボクの場合恐らく、自分で告知をしたGoogle+・Twitter・Facebook・ブログ経由での販売が大半だと思います。
佐々木俊尚さんのように知名度があって、ずっとトップページにバナーまで貼ってある本でも、現時点で3,350ダウンロード(PDFとePUBの合算なので、販売数ではない)というのが現実です。仮に販売数が2,500部だと仮定すると、佐々木俊尚さんの収入は490円×70%×2,500部で、857,500円です。佐々木俊尚さんクラスでも、これだけで食っていくのは至難の業でしょう。
アマゾンのようなアフィリエイトが無いのも残念な点です。Google+で仲良くさせてもらっている何人かにレビューをお願いしたのですが、紹介者にメリットをお返しすることができないので、時間と手間をかけさせるのがとても心苦しかったです。
最初から「最終的には全文無料で公開します」という宣言をしていたのが、どの程度販売の足を引っ張ったのかは判りません。あくまで想像ですが、「待っていればいずれ全文無料で読めるなら買わない」という判断で購入をやめる人というのは恐らく少数派なので、たぶん公開しなかったとしてもそれほど売れ行きは変わらなかったのではないかと思います。
ただ、儲け度外視で考えれば、とても面白い経験でした。次回はまったく違うテーマ、違った手法で試してみたいと思います。