マンガ家・赤松健さんと株式会社GYAOが2015年6月に設立した、株式会社 Jコミックテラス会社の設立および事業に関する説明会に行ってきました。
会社設立の経緯と思い
まず、マンガ家の赤松健さんより、株式会社 Jコミのこれまでについて説明。2011年に設立。全巻無料配信で、広告収益を100%作家に還元しています。絶版になってしまった本を、どうやって手に入れるか? 一般的には古本です。でも、ZIPでアップロードされちゃってるマンガのファイル(海賊版)が世の中にはいっぱい存在しています。10年くらい前から「Winnyで落としました!」というファンレターが届くようになったそうです。その海賊版撲滅を目指したのがJコミです。
株式会社 Jコミックテラス取締役会長 赤松健氏
掲載依頼は殺到、どんどん大きくなってきました。ただ、赤松健さんは週刊少年マガジンで連載中のマンガ家であり、なかなか手が回らなくなってきました。そこで大手資本を入れて、この事業を手助けしてくれないだろうか? ということで、今回GYAOと手を組むことにしたそうです。
「マンガ図書館Z」と赤松健さんの「夢」について。
- 出版社が管理する以外すべての書籍を画像データで(出版社とはケンカしません)
- 既存作家の生活を助けて、新人の未来を伸ばす
- 国内&海外へのメディアミックス展開
- 国会図書館に当管理システムが採用され、あらゆる作家がうるおい、ネットの海賊版が全滅すること
続いて、株式会社 Jコミックテラス 取締役 宮本直人氏(株式会社 GYAO代表取締役社長)より挨拶。
株式会社 Jコミックテラス 取締役 宮本直人氏(株式会社 GYAO代表取締役社長)
GYAOの企業理念には「創作者を尊敬し、利益を還元する仕組みを常に構築する」という文言があるそうです。
株式会社 Jコミックテラスのビジョン
続いて、株式会社 Jコミックテラス 代表取締役社長 寺岡宏彰氏(株式会社 GYAO取締役)より、Jコミックテラスのビジョンについて。
株式会社 Jコミックテラス 代表取締役社長 寺岡宏彰氏(株式会社 GYAO取締役)
「マンガ図書館Z」へ至る経緯について。「絶版マンガ図書館」が「マンガ図書館Z」に、株式会社Jコミが株式会社Jコミックテラスに。
Zは絶版のZと、「一番ハッピーになれる仕組み」という意味とのこと。
赤松健さんの志はきちんと引き継ぐそうです。
「読めない、をなくす」
「海賊版を撃破する」
読者、作家、出版社(と当社)の三方良し
事業の持続性について。現在は、現役マンガ家である赤松健さんに多大な負荷がかかっている。サービス運営と事業経営を新会社が行うことで、赤松健さんの負荷を軽減するそうです。
サービスの紹介
続いて会長の赤松健さんと株式会社 Jコミックテラス 取締役 佐藤美佳から、サービス紹介が行われました。
サイトリニューアル
本日リニューアル。メニューは変わってません。
アップロードシステムの刷新
マンガ家が自分でアップロードできる。hon.jpと提携して、現時点で出版社が扱っている作品がアップロードされた場合は弾くような仕組みを導入。
ビューワを刷新
広告が下にも入ります。「YouTubeの真似です」とのこと。
51ヶ国語へ自動翻訳対応
閉じた空間の文字っぽいものをOCRで文字認識し、51ヶ国語へ自動翻訳します。赤松健さん大興奮。
自動翻訳なので精度はイマイチですが、自動でやれちゃうのは凄い。
プレミアム会員の特典
広告非表示、好きな作品が毎月1冊PDF無料、R18作品、本棚5000冊登録可能です。R18は以前は無料で見られていたのが、リニューアルによってプレミアム会員限定になったみたいですね。
電子透かし入りPDF
新機能。本を所有することの満足度。もちろんファイルは移動コピー可能ですが、購入者の電子透かしが入っています。いわゆるソーシャルDRMです。
「電子書籍ストアが潰れて、買った本が読めなくなる事件が多すぎる!」と赤松健さん。このPDFならいつまでも読める。1部300円。作者印税40%。一般電子書店に比べたら圧倒的に高い印税率。「これぞ電子書籍の真の姿!」と赤松健さん。
Kindleストア向け販売
オフシャル作家に限る。料率は言えないそうです。
Amazon PODへ商品提供
プリント・オン・デマンド参入。見本で配られました。
こちらも作者印税はナイショ。この辺り3つが直接的な収入源でしょうか。
広告でない場合の作者還元は?
プレミアム会員の会費から、閲覧ポイントに基づき分配される。
トークセッション
ゲストは成瀬瑛美さん(でんぱ組 .inc)。芸名は「ラブひな」の成瀬川からとったとか。
質疑応答
(フリーランス 西田)GYAO側はビジネスとしてどう考えているのか?
GYAO!はYahoo!ブックストアを運営している。いままで出版社から提供されてるコンテンツを配信。それだけではユーザーのニーズに答えられていない。「マンガ図書館Z」から、Yahoo!ブックストアだけにコンテンツ配信? まだ未定。
サービスポテンシャルはグローバル。海外、まだどうなるかやってみないと分からない。果敢にチャレンジ。
(フリーランス 西田)赤松先生は今後このビジネスにどう関与するのか?
作家から掲載依頼、受付、メールのやり取り、スケジューリングは赤松先生がやる。対マンガ家窓口。
(鷹野)「プロ・アマチュアを問わず」とは?
出版社が新人を育てない。佐渡島さん(編集者)もそう言ってた。だから、新人の作品も扱うことにしました。誰でも投稿できるようになります。「comico」のチャレンジ作品と同様です。新人の作品にも広告付けます。収益は100%、投稿者に還元されます。
もちろんプロも、雑誌に載らなかったような作品を掲載することが可能。
「出版社に見捨てられたような作品は全てウチが拾い上げます!」
キタ━(゚∀゚)━!
[追記]記者発表後に赤松健さんを囲んで質問してみたのですが、投稿者が希望すれば、プロのマンガ家がチェックするような仕掛けも用意しているそうです。ただしこれはさすがに無料ではないのですが、1作品あたり5000円〜1万円程度とのこと。要するに、作家を育てないインディーズ系アプリに対し「ウチはちゃんと育てる体勢も整えますよ!」というわけです。
(eBook USER 西尾)「オフィシャル作家」とは?
無料でアップロードされた作品は、hon.jpでフィルタリングされた作品以外全部載る。ある意味毒。ニコ動やYouTubeと同じ。これで海賊版が撲滅できると思っている。
(eBook USER 西尾)ハートコミックスとの提携はどうなる?
ポイントでゲーミフィケーションっぽい読み方ができるアプリ。今日お見せしたスライドは全てPCだが、来月中にモバイル対応する。アプリをどうする? はまだ決まってない。ハートコミックスとそのままやるか、独自に開発するか。答えが出てない。
(つくばTV村北)作品が多くなると埋もれないか?
例えば「学園」タグで別の作品を見られるとか、「あなたが編集長!」といった企画など、いろんなものが今後出てくるとは思うけど、いまは作者自身の宣伝に頼っているのが現状。改善の余地あり。