毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「Amazon捏造レビュー」「漫画家に無断で作品掲載」などが話題になっていました。
電子書籍にも「定額サービス」の波、アマゾン「Kindle Unlimited」はいつ上陸するか |ビジネス+IT ※2015年10月13日
首を傾げた記事。2ページ目は会員限定なのですが、例えば「芥川賞、直木賞を受賞した作家の作品は胡桃沢耕史氏、志茂田景樹氏など数えられるほどしかない」と、日本の読み放題サービスにはコンテンツが少ないと貶した上で、Amazonの「Kindle Unlimited」が日本へくる日はいつか? みたいな構成になっています。
ところが「Kindle Unlimited」にはビッグファイブ(米大手出版5社)の作品が皆無なことには触れていないんですね。なんだそりゃ。音楽業界と比較して「この点は再販価格維持制度に守られている出版業界と異なり」なんて書いてるけど、電子書籍は著作物再販適用除外制度の対象外だということには触れていない。BOOK☆WALKERの読み放題が終わったことだけ書いて、角川文庫プレミアムクラブのサービスは続いている(毎月500円で、1500円分のチケットが貰える)ことには触れていない。うーん……。
漫画家に無断で作品を掲載 リブレ出版が謝罪 担当編集者を懲戒解雇に – ねとらぼ ※2015年10月13日
リブレ出版の対応は、これ以上ないほど丁寧かつ迅速で好感が持てます。ただ、懲戒解雇処分になった編集者は、前の会社でも似たようなことをやっていたという情報もあり(参照)。雇う前に気づくことはできなかったのか。
中途採用時に、前の職場に問い合わせるのって普通なのかなと思っていたのですが、やる会社、やらない会社があるみたいですね。エンジャパンに個人情報保護法により応募者の同意が必要という記事がありましたけど、データベースにしなきゃ大丈夫じゃないの?
「緊デジ」問題を読み解く11の疑問(前編)–“100万点電子化”という妄想 – CNET Japan ※2015年10月13日
朝日新聞林さんの、緊デジ問題追及は止まらないッ!
町の小さな「売る気のない本屋」が猫本で生き残りをかける : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 1/4 ※2015年10月日
店の一部を猫専門コーナーにしてうまくいった事例。面白いとは思うのですが、これ神保町なのですよね。「町」というか「街」じゃなきゃ無理だと思います。
村上春樹エッセイ“買い占め”の狙いと成否は? 紀伊國屋書店・高井昌史社長に聞く【週刊ダイヤモンド10月17日号特集『「読書」を極める!』インタビュー拡大版】|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン ※2015年10月日
『職業としての小説家』の買い占めの話はともかく、3ページ目でいまだに越境取引の消費税問題についてブツクサ言ってることに強い違和感。「(インタビューを実施した9月28日現在は)」と編注がありますが、10月1日から制度が切り替わることはもう決まっていたわけですから。
米国の電子書籍エージェンシー・モデル裁判、米司法省がApple社の監視を終了 ※2015年10月14日
監視は終わったけど、裁判はまだ終わらない。
どこでも、だれでも「書店をつくれる世界」にするしかない:本を読むプロがはじめるイノヴェイション「ことりつぎ」 « WIRED.jp ※2015年10月15日
鴎来堂・柳下さんの新たなチャレンジ。小さな取次で、ことりつぎ。例えば「自転車屋さんで本が売れる」といった、書店を偏在(Ubiquitous)させる取り組みと言っていいでしょう。素晴らしい方向性なのですが、既存書店の猛反発が予想されます。どうなるか。
Ingressがhontoとコラボ 全国の丸善・ジュンク堂書店・文教堂がポータルに – ねとらぼ ※2015年10月16日
Ingress公式小説が出るタイミングでのコラボ。アイテムがもらえるカードも配布されるとのことなので、かなり集客できると思われます。
キンドル抜いたドイツの電子書籍 書店大手が呉越同舟:朝日新聞デジタル ※2015年10月16日
4月にTolinoの人が来日していて、取材もしたんですが、記事にできなかったという。GfK調査で「Kindleを抜いた」というグラフが下の写真です。
取材していて面白いなと思ったのが、Tolinoと書店との関わり方について。Tolinoは端末とシステムとブランディングを提供しているだけで、「書籍を売る」責任は各書店にある、というスタイルなのだそうです。
書店がユーザーへ端末を売ると、ユーザーは「この書店から電子書籍を買う」契約を結ぶことになるのだとか。運営方針も書店の方針に沿うし、顧客情報も書店が持つ形。だから書店が一生懸命端末を売るのだなという理解をしました。
あとは、マルチデバイスに対応しているけど、専用端末が圧倒的に支持されているというのも面白い。この辺りは、日本とは大きく状況が異なりますね。
アマゾン販売の電子書籍めぐり「ステマレビュー」 報酬付きで「★5つと入力」お願い : J-CASTニュース ※2015年10月16日
10月12日に見つけて騒いだら、
「金銭を受け取ってレビューを投稿すること」はAmazonカスタマーレビューの禁止行為。アウト。
|《スキル不要》電子書籍のカスタマーレビュー依頼《数分で対応可能》の依頼/外注 | レビュー・口コミ(クチコミ)の仕事 | ランサーズ http://t.co/kme8Uo3A0J
— 鷹野 凌@月刊群雛編集長 (@ryou_takano) 2015, 10月 12
14日に永江一石さんがブログに書いてくれて発火。
こういうの滅ぼすには、Amazonが本気を出すかどうかにかかってる。それにはユーザーの声が必要。「顧客第一主義」を標榜してる企業なわけですから。
|電子書籍の未来を破壊する、金の亡者のレビューステマの実例 http://t.co/aWz3dCQs0a
— 鷹野 凌@月刊群雛編集長 (@ryou_takano) 2015, 10月 14
J-CASTが取材して記事にするころには、終わっていた事案です。当該出版社の本は、レビューのないものを除いてきれいさっぱり消えています。やはり、おかしなことに気づいたら「おかしい!」と声を挙げることが重要なんですね。
Amazon、fiverr.comで捏造レビューを仕事にする個人を訴える | TechCrunch Japan ※2015年10月17日
捏造レビューの依頼側だけではなく、書いている側も訴えたという話。日本でもこれくらい本気出して欲しいです。いまのままだと「Amazonレビューは信用できない」という評価で固まっちゃいますよ。「断固たる措置をとる」という宣言と行動により、抑止効果が図れると思うのですが。
グーグルの書籍電子化、著作権法に違反せず=NY連邦高裁 | Reuters ※2015年10月17日
Google Books Library Projectが始まったのが2004年、訴訟が始まったのが2005年。和解案がクラスアクション(集合代表訴訟)で、日本の出版社も巻き込まれると大騒ぎになったのが2009年の春。ところが年末には日本は対象外となり、急速に関心が薄れていった感があります。
その後、まずフェアユースかどうかを議論しようという話になり、地裁で認められたのが2013年。今回が高裁判決。もう10年も裁判やってるんですよね。原告のAuthors Guildは諦めず、上訴するようです。まだ終わらない。
2年前の単行本がある日突然売れ始めた!電子書籍のバナー広告で紙の漫画が売れる!? | ほんのひきだし ※2015年10月17日
「急に売れ始めた原因を調べてみると、電子書籍サイトが作成したバナー広告で作品が紹介されたことが影響していると分かりました」という分析結果をどこまで信用していいのかという疑問は残りつつも、事実だとすれば、バナー広告のインプレッションにはまだまだ効果があるし、絵柄ももっといろいろ工夫すべきだ、という話になりますね。アドネットワーク、侮りがたし。
『キングダム』が1話まるごと広告に!本日18日の朝日新聞朝刊に掲載 | ほんのひきだし ※2015年10月18日
第1話がまるごと広告で、全4ページってインパクトも凄いけど、費用も相当かかりますよね。凄いけど、真似できない。新聞の購読者層的に、効果はどうなのかしらん?